モヘアの魅力と選び方、ケア、サステナビリティまで徹底解説
はじめに:モヘアとは何か
モヘアは、アンゴラ山羊(Angora goat)からとれる天然の繊維です。アンゴラ種はトルコのアンカラ地方(旧名:アンゴラ)が原産とされ、長く光沢のある毛が特徴です。英語の"mohair"はこの繊維を指し、毛足の長さと光沢、発色の良さから衣料・インテリアともに幅広く使われてきました。
モヘアの主な特徴
- 光沢と発色性:モヘアは独特の光沢があり、染色性に優れているため鮮やかな色が出やすいです。白毛が多いことも染色に向く理由の一つです。
- 軽さと保温性:見た目より軽く、空気を含むことで高い保温性を発揮します。冬のニットやストールに適しています。
- 耐久性:繊維自体の強度が高く、摩耗に強い性質があります。長く使える素材です。
- ハリとドレープ:繊維がしっかりしているため、コートやスーツなどで綺麗なシルエットを作ります。
- 種類(グレード):子山羊から初めて刈られる"kid mohair"は特に柔らかく肌触りが良いとされ、成長に伴い繊維はやや太くなります。
モヘアと他の天然繊維の違い
- モヘア vs アンゴラ(うさぎ):アンゴラウールはウサギから採れる毛で非常に柔らかく、ふわっとしたハロー(毛羽)が強いのが特徴。モヘアはより光沢と強度がある。
- モヘア vs カシミヤ:カシミヤは極細で非常に柔らかく保温性が高い。モヘアは光沢と耐久性に優れ、見た目の華やかさが違う。
生産地と市場動向
世界の主要生産国には南アフリカ、トルコ、アメリカ(特にテキサス)、アルゼンチン、レソトなどがあります。歴史的に南アフリカは大きなシェアを占めており、素材供給の中心となってきました。近年はトレーサビリティや動物福祉への関心が高まり、業界団体や認証の整備が進められています。
モヘアの用途
- ニットウェア(セーター、カーディガン、ストール)
- スーツやジャケットのブレンド素材(光沢とドレープを与えるため)
- インテリア(モヘアベルベット、ソファ張り、ラグ)
- 高級アクセサリーやコスチューム、舞台衣装
ファッションでの取り入れ方・コーディネートのコツ
モヘアは光沢があり主張が強めの素材なので、使い方次第で上品にもモードにもなります。以下のポイントを参考にしてください。
- レイヤード:薄手のモヘアニットは軽さを活かしてインナーや重ね着に向きます。ハイゲージのカーディガンを肩掛けするだけで品のある印象に。
- 素材の組み合わせ:モヘアの光沢を活かすにはマットな素材(コットン、デニム、ウールのツイード)と合わせるとバランスが良いです。
- カラーリング:モヘアは発色が良いので、アクセントカラーとして取り入れるのも効果的。逆にモノトーンでまとめると洗練された印象になります。
- アウター:モヘア混のコートやジャケットは光沢と保温性の両方を得られるため、特別なシルエットを作りたい時におすすめです。
購入時のチェックポイント
- ラベルの確認:100%モヘアか、ウールやナイロンとの混紡かを確認。混紡は扱いやすさや耐久性が向上する場合があります。
- グレード:“kid(キッド)”表記は柔らかさの目安。高級感を重視するならキッド混やキッド100%を検討。
- 生産背景:生産国やトレーサビリティ、動物福祉の基準に関する情報があるブランドを選ぶと安心です。
- 手触りと毛羽:チクチク感が少ないか、毛羽が落ちやすくないかを確認。使用シーンによっては毛羽が気になることがあるので注意。
お手入れと長持ちさせる方法
- 洗濯:多くのモヘア製品は手洗い(冷水・中性洗剤)を推奨します。製品によっては家庭用洗濯機のウールコースやネット使用が可能な場合もあるため、洗濯表示を必ず確認してください。
- 乾燥:直射日光や乾燥機は避け、平らな場所で形を整えて自然乾燥させます。絞ると変形するので注意。
- 保管:通気性のあるケースで保管し、防虫剤を適宜使用。重ね置きは避け、型崩れに気をつけましょう。
- 毛羽のケア:小さな毛玉は手で優しく払うか、専用の毛玉取りを弱い力で使用。粗雑な扱いは繊維を傷めます。
サステナビリティと動物福祉の課題
モヘアは天然繊維として再生可能な資源ですが、放牧管理や過放牧による土壌劣化、輸送過程での動物福祉の問題など課題もあります。近年は業界団体やNGOによる監査や認証の整備が進み、ブランド側もトレーサビリティを強化する動きが出ています。
代表的な取り組みとして、業界標準としての責任ある生産基準を示す規格が存在し、原毛の出所や飼育環境、動物の扱いに関する要件が設けられています。購入の際にはこうした認証やブランドの開示情報を確認すると良いでしょう。
モヘア製品を選ぶ際の最後のアドバイス
モヘアは見た目の華やかさと機能性を兼ね備えた素材です。用途や着用シーン、ケアのしやすさ、そして生産背景に目を向けて購入することで、長く愛用できる一着になります。また、時には合成繊維やリサイクル素材も選択肢に入れ、トータルで持続可能なワードローブを考えてみてください。
参考文献
- Britannica: Mohair
- Textile Exchange: Responsible Mohair Standard
- Mohair South Africa
- Mohair Council of America
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