音楽機器で知っておきたい「IP67」:防塵・防水規格を楽器・音響でどう使うか解説
IP67とは何か:基本の理解
IP67は「IPコード」(Ingress Protection、侵入保護)という国際規格の一つで、機器が固形物(水や埃以外の固形物)や水の侵入に対してどれだけ保護されているかを示します。規格はIEC 60529に基づき定められており、2桁の数字で表記されます。IP67の「6」は固形物に対する最高等級で「完全防塵(dust tight)」を意味し、「7」は水に対する等級で「一定条件での一時的な浸水に耐える」ことを示します。
IPコードの読み方(簡潔に)
- 1桁目(固形物):0〜6まで。6は最も高い保護で、粉塵の侵入が完全に防がれる。
- 2桁目(液体):0〜9まで。7は「規定の条件(通常は静水1m、30分)での浸漬に耐える」ことを意味する。
- 例:IP67 = 完全防塵 + 1mの静水に30分耐える防水性能。
IP67の試験条件(重要なポイント)
標準的な試験では、対象機器は清潔な淡水中に静かに沈められ、深さ1メートルまで、通常は最大30分間保持されます(条件は規格/メーカー表記で若干の差があり得ます)。試験は常温・淡水で行われ、温水や高圧の噴流水、海水中での耐久性は含まれません。そのため、IP67が示す「防水」は必ずしもあらゆる水環境での完全な保証を意味しません。
音楽機器におけるIP67の意味
音楽分野では、ポータブルスピーカー、ワイヤレスイヤホン、フィールドレコーダー、屋外用の一部のアンプやモニター、配線部分の保護などでIP等級が重要になります。IP67の機器は屋外の小雨、演奏者の汗、短時間の浸水(例:フロアに落として一時的に水没)に対して比較的強い耐性を持ちます。
- ライブ・屋外フェス:屋外での突然の雨や泥、水たまり対策として有効。
- ジムやランニングでの使用:汗や軽い雨での機器保護に適する場合が多い。
- フィールド録音:急な水没リスク(川岸での誤落下など)に対して一定の安全性を提供。
よくある誤解と注意点
IP67は万能ではありません。以下の点は誤解しやすいので注意してください。
- 「防水=何をしても大丈夫」ではない:高圧の水流(ノズルの噴射)、長時間の浸水、温水や熱湯、化学物質(水に溶けた塩分や洗剤など)に対しては別条件となります。
- 海水は別問題:IP67試験は淡水で行うため、海水中の腐食や塩分の付着による故障は想定外です。海辺やボート上で使う場合はメーカーの明示や追加の耐食処理を確認する必要があります。
- 端子やカバーの劣化:充電端子やゴムパッキンは経年で劣化し、最初のIP性能を維持できなくなることがある。メーカー保証や定期的な点検が重要です。
- 音質や動作への影響:スピーカーやマイクは筐体を密閉することで防水性を高める場合があり、開口部の変更や特殊なダイヤフラム(薄膜)を用いることで音の特性に差が出ることがあります。防水処理が音質に与える影響は設計次第です。
IP67とIPX7、IP68の違い
製品表記でIPの後にXが入ることがあります。例えばIPX7は1桁目の固形物に関する試験が行われていない、または評価されていないことを示します。つまりIPX7は「防塵等級不明だが、一定の浸水試験には合格した」という意味です。IP68はIP67よりも液侵保護が高く、浸水深度や時間をメーカーが別途定めていることが多く、より深い深度や長時間の浸水に耐える場合があります。
実際の使用シーンと推奨される扱い
音楽現場での安全な運用のために、以下の点を推奨します。
- 屋外での演奏:予報に関係なく、機材は濡れる可能性を想定して保護カバーを用意する。機材搬入・搬出時には特に注意。
- 落下や浸水リスクのある場所:マイクや小型機器はストラップや固定具で落下を防止する。万が一水没した場合は、すぐに電源を切り、メーカーの指示に従って乾燥・点検する。
- 海辺での使用:海水は腐食性が高いため、海で使用した際は淡水での十分なすすぎと完全な乾燥を行う。可能なら海水用の追加保護がある製品を選ぶ。
- 保守点検:充電端子やゴムパッキンの亀裂、緩みがないか定期的に点検し、必要があれば交換する。
設計者・メーカー視点:なぜIP67を採用するか
製品開発でIP67を採用する理由は、消費者にとっての安心感と製品寿命の延長、屋外利用や過酷環境での市場拡大です。ただし、防水・防塵を強化するためには筐体のシーリング、コネクタのキャップ、特殊なメンブレンや防水ダイアフラムなどのコストがかかります。音響特性とのトレードオフも存在するため、設計上は目的と用途に応じたバランスを取る必要があります。
選び方のチェックリスト(音楽用途)
- メーカーの明記を確認:IP67と書かれていても範囲(深度・時間)が記載されているか確認する。
- 試験条件の明示:淡水での試験であること、海水や噴流試験は別条件であることをチェック。
- 物理的な保護:端子カバーやシーリング材、取り外し可能な部品の有無を確認する。
- アフターケア:劣化部品の交換や防水点検のサービスがあるか。
- レビューと実使用レポート:現場のユーザーによる水濡れ後のトラブル報告や長期耐久性の情報を参照する。
まとめ:音楽現場でIP67はどう役立つか
IP67は音楽機器を水や粉塵から守る有力な指標で、屋外イベントやアクティブな使用シーンでの安心材料になります。ただし、試験条件(淡水、一定深度・時間)や実際の利用環境(海水、高圧噴射、長時間浸水など)とのギャップを理解しておくことが重要です。機材選定時にはメーカーの仕様を読み、現場のリスクに応じた保護策を講じることをおすすめします。
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参考文献
- IPコード(Wikipedia日本語)
- IP Code (Ingress Protection) - Wikipedia (English)
- Apple サポート:iPhoneの耐水性能について(参考として防水の注意点)
- UL: Understanding IP Ratings
- How-To Geek: What Does IP67 and IP68 Mean on Smartphones?
- IEC 60529 - Degrees of protection provided by enclosures (IP Code)(規格情報、IEC)
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