全音符を徹底解説:表記・歴史・演奏実務から制作・MIDIへの応用まで

全音符とは何か

全音符(ぜんおんぷ)は、西洋の現代譜で使われる最も基本的な長さの音符のひとつで、四分音符を基準とした場合に4拍分の長さを持つ音価です。日本では「全音符」と呼ばれ、英語では "whole note"、英国式の伝統的な呼称では "semibreve"(セミブレーヴ)と呼ばれます。見た目は中身が空(白抜き)の楕円形の音符頭のみで、茎(ステム)や旗(フラッグ)は付かないのが特徴です。

基本的な表記と休符

全音符の表記は非常に単純です。音符頭が白抜き(filledではない)で、茎がないだけです。これに対応する休符(無音)の記号は「全休符(whole rest)」と呼ばれ、五線の第四線(下から数えて4番目)の下にぶら下がる短い四角形で表されます。これは小節全体の休符を示すため、必ずしも"1小節分"に限定されず、拍子記号によっては複数小節に相当することもあります。

  • 音価:四分音符×4(4拍分)に相当(四分音符が拍の単位の場合)
  • 表記:白抜きの楕円。茎なし。
  • 対応休符:全休符(四線の下にぶら下がる小さな四角形)

拍子と文脈による長さの違い

重要なのは、全音符の「拍数」は拍子によって解釈が変わる点です。例えば、4/4拍子(コモンタイム)では四分音符が1拍なので全音符は1小節=4拍分になります。一方で、2/2(カットタイム)では二分音符が1拍となるため、全音符は2小節分(2×2拍)と同じ長さになります。つまり全音符が示す"時間"は拍の単位に依存します。

  • 4/4拍子:全音符=1小節(4拍)
  • 3/4拍子:全音符は1小節に収まらない(3拍)ため通常は小節をまたぐ記譜や結合(タイ)で表す
  • 2/2拍子:全音符=2小節(各小節2拍)に相当

点符(ドット)や複符の扱い

全音符にドットを付けると、元の長さの半分が追加されます。したがってドット付き全音符は4拍+2拍=6拍になります。二重ドット(ダブルドット)はさらにその半分を加えるため、4+2+1=7拍です。これらは特に不規則な小節長や複合拍子、または声部ごとに異なる拍感を作る際に使われます。

結合(タイ)と小節の跨ぎ

全音符が小節の長さと一致しない場合、タイ(結合線)を使って2つ以上の音符をつなぎ、連続した音の持続を示します。例えば3/4拍子で一拍外に1拍分を伸ばしたいときは、全音符を直接書く代わりに、3/4の小節に対して全音符を小節線を跨いで2つの音価に分け、タイで結ぶことで表記します。現場では視覚的に読みやすくするためにこうした分割表記が好まれます。

音楽史における起源と用語の変遷

全音符(semibreve)の概念は中世のメンスラル(計量)譜に起源があります。昔の音価体系では、ラテン語を基にした名前(maxima, longa, breve, semibreve など)が用いられ、時代とともにその相対的な長さや比率が変化しました。現代の "whole note"(全音符)と "breve"(倍全音符、double whole note)は、当時の「ブレーヴ/セミブレーヴ」などの名称に由来しますが、現代の等比体系(四分音符を基準にする)に整理されました。

演奏時の実務的ポイント

  • 保持(サステイン):弦楽器や声楽・管楽器では全音符は長時間の保持が必要。息継ぎや弓の交換、ビブラートの制御など演奏技術が求められる。
  • テンポ感:同じ全音符でもテンポが速ければ時間は短くなる。楽譜上は見た目は同じでも、演奏時間はBPMによって大きく変わる。
  • 視覚的配慮:可読性のために、長音符は小節を分割して記すことが多い。編曲やスコアの意図に応じて使い分ける。

制作(DAW/MIDI)での扱い

デジタル音楽制作において全音符は絶対時間(秒)に変換されます。一般的な計算式は次の通りです:

全音符の長さ(秒)=(60 ÷ BPM)× (全音符が示す四分音符の個数)

例:テンポ120 BPMで四分音符が1拍の場合、全音符は(60÷120)×4=2秒です。MIDIのタイック数(PPQ, PPQN)を用いる場合は、四分音符あたりのティック数を基に全音符のティック数を算出します。

特殊記号と長音符:ブレーヴ、ロンガ

全音符の上位概念としてブレーヴ(倍全音符、double whole note)やロンガ(長音)といった記号が存在します。ブレーヴは現代の五線譜ではまれに使用され、4/4を基準にすると8拍分の長さです。古典的あるいは現代音楽の特殊表記で見られることがありますが、一般のポピュラーミュージックや合唱譜ではほとんど使われません。

ジャンル別の使用法

  • クラシック:和音の保続(ペダルやホルンの長音)、合唱の長いフレーズ、遅いテンポの楽章で頻出。
  • ジャズ・ポピュラー:伴奏のホールドやテンポ変更時に用いるが、アンサンブルではリズムの明確化のために分割して表記されることが多い。
  • ミニマル/現代音楽:極端に長い持続を示すために全音符が基本単位として使われることがある。複雑なタイミングやプロセッシングと組み合わせられる。

よくある誤解と注意点

  • 「全音符=4拍」は常に真ではない:拍子や拍の単位によって変わる点に注意。
  • 休符の形状の混同:全休符は"上に乗る"ではなく"下にぶら下がる"形で表記される。半休符(ハーフレスト)は逆に上に乗る。
  • 可読性のために分割する:譜面は演奏者が読みやすいように分割して書くのが通例。

教育的アプローチ:教えるときのコツ

全音符を教える際は、まず拍の概念(四分音符が1拍である等)を体感させることが重要です。手拍子で四分音符を刻み、その間を長く伸ばす練習や、メトロノームに合わせて全音符を保持する訓練が有効です。視覚的には黒板や楽譜アプリでドット付きやタイで繋いだ例を並べ、異なる拍子での表現の違いを示すと理解が深まります。

実例と楽曲での出現

古典から現代まで多くの作品で全音符は登場します。例えばオーケストラのサステイン・コードや合唱のホールド、映画音楽の長い弦のクレッシェンドなどで頻繁に用いられます。楽譜の読み手は楽曲の文脈(テンポ、拍子、音色)から全音符の“目的”を判断することが求められます。

まとめ:全音符の位置付け

全音符は見た目は単純ながら、拍子・テンポ・演奏技術・表記法の観点で多くの含意を持つ音符です。作曲や編曲、演奏、制作などあらゆる場面で基礎となる概念であり、正確に理解していることが実務上の差につながります。

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参考文献