PEFとは？PentaxのRAW（PEF）を徹底解説 — 特徴・扱い方・互換性・ワークフロー

2025年12月22日 最終更新日時 : 2025年12月22日 エバープレイ編集部

はじめに：PEFって何か

PEF（Pentax Electronic File）は、リコーイメージング（旧ペンタックス）が採用するRAW画像ファイル形式の拡張子（.pef）です。JPEGとは異なり、カメラのイメージセンサーが記録した生のデータ（ベイヤー配列の生データやそれに付随するメタ情報）を保持するため、現像（RAW現像）を行うことで露出補正やホワイトバランス、ノイズ処理などを非破壊で調整できます。

PEFの基本構造と役割

PEFファイルは一般に次のような要素を含みます。

  • センサーデータ（12ビット／14ビットなど、カメラ機種に依存）
  • EXIFメタデータ（撮影情報、レンズ情報など）
  • Pentax独自のMakerNote（メーカー固有の追加情報）
  • 埋め込みJPEGプレビュー（カメラが生成するサムネイルやプレビュー用）

重要な点は、PEFは“画像が完成した状態”ではなく“現像前の原データ”を保存する容器だということです。ホワイトバランスやシャープネス等のカメラ内設定は通常JPEGに反映されますが、RAW（PEF）には撮影時の設定値として記録され、現像時に参照されます。

技術的特徴：ビット深度・圧縮・メタデータ

PEFに保存されるビット深度はカメラのセンサーや処理エンジンに依存します。多くの現行Pentax機は14ビットを採用しており、より広い階調を保持しますが、機種によっては12ビットのものもあります。また、カメラはRAWをそのまま保存する「非圧縮」か、ファイルサイズを抑えるために「圧縮（可逆／機種依存）」で保存する設定を持つことがあります。これらは機種やファームウェアにより異なるため、カメラのマニュアルを確認してください。

さらに、PEFにはEXIF情報とPentax固有のMakerNoteが含まれるため、Pentax特有の撮影補正情報やレンズ情報を保持します。ただしMakerNoteは公開仕様が限定的であり、サードパーティ製ソフトウェアがすべての情報を正確に解釈できない場合があります。

PEFとDNG／他のRAW形式との比較

  • 互換性：DNG（Adobeのデジタルネガ）はオープンなアーカイブ向けRAW形式で多くのソフトが標準対応します。PEFはプロプライエタリなので、将来的な互換性や解析はDNGに劣る可能性があります。ただし主要RAW現像ソフトはPEF対応が一般的です。
  • 情報の保存性：PEFはメーカー固有情報（MakerNote）を保持するため、カメラ固有の色情報や補正パラメータを保存できますが、サードパーティで完全に活かせない場合があります。
  • ワークフロー：アーカイブ目的でDNGに変換するユーザーもいますが、PEFをそのまま保存しておき、必要に応じてDNGへ変換する方法も一般的です。

対応ソフトウェアと互換性

PEFは主要なRAW現像ソフトで広くサポートされています。代表的なものは次の通りです。

  • Adobe Lightroom / Camera Raw（機種によってサポート状況に差が出ることがある）
  • RawTherapee、darktable（オープンソースのRAW現像ソフト）
  • dcrawやLibRawベースの多くのアプリケーション
  • Ricoh Imaging（Pentax）純正ソフト「Digital Camera Utility」——メーカー固有機能やPixel Shiftなど専用機能の取り扱いで有利
  • ExifTool（メタデータ確認・編集に強力）

注意点として、新機種のPEFはサードパーティの対応が遅れる場合があります。特にPixel Shiftのような複数枚合成や独自のRAW処理を伴う機能は、純正ソフトにしか完全対応していないことがあります。

Pentax固有機能との関係（Pixel Shift等）

Pentaxは「Pixel Shift Resolution」などの独自機能を搭載したカメラを発売しています。この機能は高精度な色再現や解像感向上を目指して複数枚のRAWを合成するものですが、運用には注意が必要です。

  • Pixel Shift撮影では複数のRAWファイルを合成する必要があり、リコー純正のDigital Camera Utilityや専用ツールが最適な結果を出すことが多い。
  • サードパーティソフトが対応していても、完全な合成アルゴリズムや補正が異なる場合があるため、仕上がりに差が出ることがある。

実務的なワークフロー：PEFの扱い方

PEFを用いる際の典型的なワークフローを示します。

  • 撮影：PEF（RAW）で記録。必要に応じてJPEG同時保存。
  • バックアップ：カードから取り込んだらまずオリジナルPEFを複製してバックアップ（少なくとも二重保存）。
  • 現像：LightroomやRawTherapee等で現像。ホワイトバランス、露出、色補正は非破壊で調整可能。
  • アーカイブ：長期保存目的ならDNGに変換しておく手もある（互換性の観点から有利）。ただし元のPEFも保持しておけばメーカー固有情報を失わない。
  • 出力：最終的にJPEGやTIFF（場合によっては16ビット）に書き出して配信・印刷。

ポイントはオリジナルPEFを常に保持することです。変換や再現像を繰り返しても、元のRAWがあればいつでもやり直せます。

よくあるトラブル・注意点

  • 互換性のズレ：新機種のPEFはソフト側の対応が遅れる可能性があるため、購入前に主要ソフトの対応状況を確認する。
  • MakerNoteの解釈不足：サードパーティがMakerNoteを完全に読み取れない場合、レンズ補正や特殊情報が反映されないことがある。
  • ファイルサイズ：PEFはJPEGより大きいため、記録枚数とストレージ容量に注意。
  • バックアップの怠慢：RAWは唯一無二の元データなので、バックアップは必須。

PEFを選ぶ理由・選ばない理由

選ぶ理由：

  • メーカー固有の情報を保持でき、Pentaxの色再現や機能を最大限活かせる。
  • より広い階調を保存でき、編集耐性が高い。

選ばない理由：

  • プロプライエタリで将来の互換性に対する不安がある（DNGよりリスクが高いと感じる人もいる）。
  • 一部の特殊機能（Pixel Shift等）で純正ソフトが必要になるケースがある。

まとめ

PEFはPentaxユーザーにとって最適なRAWフォーマットであり、カメラ固有の情報を保ちながら高品質な現像を可能にします。一方でプロプライエタリゆえの互換性や、特殊機能の取り扱いには注意が必要です。運用としては、オリジナルPEFを必ず保管し、必要に応じてDNGなどにアーカイブするハイブリッドな手法が現実的で安全と言えます。

参考文献

カテゴリー
カメラ
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