キヤノン EOS R6 Mark II徹底レビュー:写真・動画・実運用でわかる強みと注意点

はじめに

キヤノン EOS R6 Mark II(以下 R6 II)は、プロ向けの上位機種とエントリーモデルの中間を狙ったフルサイズミラーレス機として位置づけられ、静止画・動画の両面で高いバランスを実現しています。本コラムでは、スペックの要点だけでなく、実撮影に基づく運用面の深掘り、他機種との比較、具体的な設定やおすすめ運用法まで詳しく解説します。メーカー発表の主要仕様を踏まえたうえで、現場で気をつけるべきポイントも併記します。

主な特徴の概観

R6 IIの注目点を端的にまとめると次の通りです。

  • 約24.2メガピクセルのフルサイズセンサーとDIGIC Xプロセッサ。
  • 高性能なオートフォーカス(Dual Pixel CMOS AF II)で人物・動物・車両・鳥などを検出。
  • 連写性能はメカニカルでの高速撮影と、電子シャッターで最大級の高速連写(メーカー値での高フレーム数)に対応。
  • ボディ内手ブレ補正(IBIS)を搭載し、手持ちでの低速撮影が有利。
  • 映像面では内部6K RAW記録に対応し、4Kは高フレームレートと高画質の両立を図れる。
  • デュアルカードスロット(高速なCFexpress対応スロットを含む)や使いやすいバリアングル液晶を採用。

イメージセンサーと画質

R6 IIは約24.2MPのフルサイズ CMOSセンサーとDIGIC Xを組み合わせ、前世代に比べて解像感の向上とノイズ制御の改善を図っています。この画素数は、印刷・トリミング耐性・高感度画質のバランスが取れており、ポートレート、風景、報道/スポーツ撮影など幅広い用途に適します。

高感度性能はセンサー設計と処理性能の向上により実用域が広がっており、暗所でのISO感度を上げてもノイズが抑えられ、肌の階調や暗部の粘りが期待できます。フルサイズの浅い被写界深度と中解像度の組み合わせは、人物撮影でのボケと肌の描写に好影響を与えます。

オートフォーカス性能(AF)

R6 IIはキヤノンのDual Pixel CMOS AF II を搭載し、被写体検出能力が向上しています。人物の顔・瞳検出は高精度で、追従性も高く被写体の瞬間的な動きに強いのが特徴です。また、動物(犬・猫・鳥など)や車両の検出も可能で、野鳥撮影やスポーツ撮影での実用性が高まりました。

AF設定は柔軟で、被写体優先のモードやゾーンAF、1点AFの感度調整など細かい調整が可能です。動体撮影では予測追従とAFエリアの切り替えをうまく組み合わせると高い歩留まりが得られます。

連写・高速撮影

R6 IIはメカニカルシャッターでの高速連写と、電子シャッターを併用した超高速連写の両方を備えています。電子シャッター時には非常に高いフレームレートが可能で、動体の瞬間を切り取るのに有利です。ただし電子シャッターにはローリングシャッター歪みや光周波数(蛍光灯など)によるバンディング、連写時のファイル書き込み速度などの注意点があるため、撮影状況に応じてメカニカルと電子を使い分けることを推奨します。

手ブレ補正(IBIS)

ボディ内手ブレ補正は有効な補正量を持ち、特にレンズ単体での補正が弱い場合でも手持ちでの低速シャッター撮影を可能にします。風景やスナップでの手持ち撮影において、シャープな結果を出しやすいことが利点です。IBISは光学手ブレ補正(レンズ側)との協調も可能で、AF時や動画撮影時の安定性に寄与します。

動画機能の実力

動画面でのR6 IIは大きな進化を遂げています。内部での高解像・高フレームレート記録に対応し、プロ仕様のワークフローにも対応できる柔軟性を備えます。4K撮影は高い品質で、6K RAW記録に対応することにより、ポストプロダクションでの画質やフレーミング変更(トリミング)に余裕が生まれます。

動画撮影時のポイントとしては、熱対策・録画時間・カード速度の管理が重要です。高ビットレートのRAWや高フレームレート撮影は大容量のカードと発熱対策が必要なので、長時間のシネマ撮影では外付け電源や冷却・分割収録などを検討してください。

操作性・ボディ設計

R6 IIは堅牢なボディにバリアングル液晶を採用し、ローアングルやハイアングル、Vlog用途での扱いやすさが向上しています。ファインダーは高精細で視認性が高く、操作系は従来のEOS系と親和性があり、既存ユーザーの移行がスムーズです。

グリップの形状やボタン配置は長時間の撮影でも疲れにくい設計で、カスタマイズ可能なボタンを多用することで、自分のワークフローに合わせた最適化が可能です。

バッテリーと記録メディア

電源はキヤノンの汎用バッテリーを使用し、予備バッテリーを用意することで長時間撮影に対応できます。カードスロットはデュアル構成を採用し、信頼性やワークフロー(同時記録/振り分け)に柔軟性を持たせています。高ビットレート記録を行う場合は高速なカード(CFexpressやUHS-II等)を用意してください。

実撮影での評価(静止画/動体/暗所/ポートレート)

静止画:解像感と階調のバランスが良く、トリミング耐性も十分。色再現はキヤノンらしい肌の描写に優れています。

動体:AF追従と連写性能の組み合わせにより、スポーツや野鳥の撮影で高い歩留まりを実感できます。ただし極端に速い動きや、複雑な被写体背景ではAFの設定調整(追従感度や領域)でさらに安定させる必要があります。

暗所:IBISと高感度処理のおかげで、手持ちや低照度ポートレートでの実用性が高いです。ただしノイズ量は感度次第なので、暗所での長秒露光や低ノイズを追求する場合は三脚や長時間露光の撮影方法を検討してください。

レンズとエコシステム

RFマウントの豊富なラインナップはR6 IIの魅力の一つです。高速大口径レンズから超望遠まで選択肢が広く、アダプターを介してEFレンズも活用可能です。用途に合わせて最適なレンズを選ぶことで、R6 IIのポテンシャルを最大限に引き出せます。

設定と運用のポイント(おすすめ設定)

  • 動体撮影:AFモードはゾーンまたは拡張1点+AF感度を高めに設定。連写は状況に応じて電子/機械を使い分ける。
  • ポートレート:瞳AF優先、肌のトーンを活かすカメラ内ピクチャースタイルやホワイトバランスの微調整を活用。
  • 動画:プロジェクトに応じてRAW/10bitを選択。長時間撮影ではカード速度と発熱に注意。
  • 手持ち夜景:IBISを活用しつつ、ノイズが気になる場合は低速手持ち用の安定化技術(呼吸を合わせる、肘を固定する)を併用。

他機種との比較(簡易)

同クラスの機種と比較すると、R6 IIは画質・AF・動画機能をバランスよく備えています。上位機(R5など)はより高解像や一部プロ向けの速度・入出力を持ちますが、価格対性能比や運用のしやすさではR6 IIが優れた選択肢となります。旧R6からの買い換えは、画素数・動画機能・処理性能の向上が欲しいユーザーにとっては魅力的です。

長所・短所(まとめ)

  • 長所:高いAF性能と連写、内蔵IBIS、6K RAWなどの動画性能、RFレンズ群との相性の良さ。
  • 短所:高ビットレート動画撮影ではカード・発熱・バッテリーに注意が必要。電子シャッターの現場運用での制限(ローリング現象や点滅光下のバンディング)に留意。

購入を検討する人へ—こういう人に向く

  • 写真・動画を両立して一台で済ませたいハイブリッドクリエイター。
  • スポーツや野鳥など被写体の動きが速い撮影で高い歩留まりを求める人。
  • RFレンズの画質や最新のAF機能を活かしたい既存のキヤノンユーザー。

総評

EOS R6 Mark IIは、使い勝手の良さと先進的な撮影機能を両立させたカメラです。静止画・動画のどちらにも十分なスペックを持ち、特にAF性能やIBIS、内部RAW記録など現場で役立つ機能が充実しています。一方で高ビットレート動画を多用するプロユースでは、記録メディアや運用面(熱対策や電源管理)を考慮する必要があります。全体として、汎用性の高い“オールラウンダー”として強くおすすめできるモデルです。

参考文献