WebP徹底解説:仕組み・互換性・導入手順と最適化の実践ガイド
はじめに — WebPとは何か
WebPはGoogleが開発した画像フォーマットで、ロッシー(有損)圧縮、ロスレス(無損)圧縮、透過(アルファ)チャネル、アニメーションをサポートします。目的は同画質でのファイルサイズ削減や、複数用途(静止画・透過・アニメーション)の一本化による運用効率向上です。現在は主要ブラウザや多くのCDN、画像処理ライブラリが対応しており、ウェブ上での「次世代画像フォーマット」として広く使われています。
技術的な概要と仕組み
WebPはRIFF(Resource Interchange File Format)コンテナを使い、中身としてロッシーはVP8のフレーム圧縮技術を派生させた手法を、ロスレスは差分予測や辞書的手法を組み合わせた専用のエンコーダを用います。透過情報はアルファチャネルとして付加でき、アニメーションは複数フレームのメタ情報(タイミングやディスポーズ)を格納するチャンクで実現します。
要点:
- コンテナ:RIFFベース(.webp)
- ロッシー圧縮:VP8系の技術を応用
- ロスレス圧縮:予測+辞書圧縮などの専用アルゴリズム
- 透過・アニメーション:単一フォーマットでサポート
画質とファイルサイズの傾向
実務的には、WebPはJPEGに比べて同等の視覚品質でファイルサイズを小さくできるケースが多く、画像の特性によっては20〜40%程度の削減が期待できます。同様に、PNGに対してはロスレスWebPで一般的にサイズを削減できることが多く、アルファ付き画像でも有利です。ただし、圧縮率は元画像の内容(ディテール量、色数、ノイズ)やエンコード設定(品質パラメータ、サブサンプリング、圧縮モード)に大きく依存します。
実務上の推奨:
- 写真系(多色・連続調):ロッシーWebPで高い削減効果が期待される
- 図版・ロゴ(フラットカラーや透過を含む):ロスレスWebPが有効
- アニメーション:GIFよりもサイズ・色深度で有利
ブラウザ対応状況と互換性
近年は主要ブラウザのほとんどがWebPをサポートしています。Chrome、Firefox、Edgeは長く対応しており、SafariはSafari 14以降(macOS, iOS 14)でWebPに対応しました。ただし、古いブラウザや一部の環境では対応していない場合があるため、フォールバックの用意が重要です。対応状況は常に更新されるため、導入時は最新の互換性情報(例:Can I Use)を確認してください。
WordPressとWebP
WordPressにおけるWebPの扱いは進化しています。近年のコアアップデート(WordPress 5.x系以降)でWebPファイルのアップロード自体は可能になりましたが、動的なサムネイル生成や各種プラグイン、テーマ側の対応可否はサーバー環境に依存します。具体的には、GDやImagickといった画像処理ライブラリがlibwebp(WebP対応ライブラリ)をリンクしている必要があり、そうでない場合はWebPアップロードのみ可能でもサムネイル作成に問題が出ることがあります。
運用上のポイント:
- WordPress本体は新しいバージョンを利用する(5.8以降でWebPアップロード対応)
- サーバーの libwebp 対応を確認する(GD/Imagick がWebPをサポートしているか)
- プラグインでの自動変換(例:WebP変換プラグイン)やCDN連携を検討する
導入手順(実践)
基本的な導入手順の流れは以下の通りです。
- 1) 生成:cwebp(libwebp)やImageMagick、GraphicsMagick、Pillowなどで画像をWebPにエンコードする。
- 2) 配信:Webサーバ(Nginx/Apache)やCDNでWebPを配信する。ネイティブ拡張子で配信するか、Acceptヘッダーに応じてネゴシエーションするかを選ぶ。
- 3) フォールバック:対応しないブラウザ向けにpictureタグや srcset を用いてJPEG/PNGをフォールバックとして用意する。
- 4) 最適化:品質パラメータ(例:cwebp -q 75 等)や圧縮モードを調整し、LighthouseやPageSpeedで効果を計測する。
HTMLの簡単なフォールバック例:
<picture>
<source type="image/webp" srcset="image-800.webp">
<img src="image-800.jpg" alt="説明文">
</picture>
最適化のベストプラクティス
1) 画質パラメータの調整:自動的に品質を決めるのではなく、代表的な画像で品質値を試し、視覚品質とファイルサイズのトレードオフを決めます。多くのサイトでは品質70〜80付近がバランス良いとされていますが、用途によって最適値は変わります。
2) レスポンシブ画像:srcsetやsizes、picture要素を使ってデバイス解像度に合わせたサイズを配信し、不要な大きさの画像送信を避ける。
3) サーバー/CDNの活用:CDNの最適化機能(自動WebP変換や画像最適化)を使うことで、変換負荷をオフロードできる。CDN利用時はキャッシュヘッダやVary: Acceptの設定に注意する。
4) フォールバックと互換性:ソーシャルカードや一部の外部サービスはWebP未対応の場合があるため、OGPに使う画像はJPEG/PNGを指定するなどの配慮が必要。
運用上の注意点と落とし穴
・デコード負荷:WebPのデコードはJPEGと比べて処理がやや重くなるケースがあり、特に古いモバイル端末ではCPU負荷やメモリ使用量に注意が必要です。極端に多量の大画像をクライアントでデコードさせるような設計は避けるべきです。
・サムネイル生成:WordPressやCMSでサムネイルを自動生成する場合、サーバー側の画像ライブラリがWebP対応であることを確認してください。対応していないと、アップロードはできてもサムネイルが生成されない問題が発生します。
・外部サービス互換性:メールクライアントや古いSNS、各種ツールがWebPに対応していない場合があるため、公開先に応じた別途対応が必要です。
ツールとライブラリ(代表例)
- libwebp / cwebp / dwebp(公式エンコーダ/デコーダ)
- ImageMagick、GraphicsMagick(多くの環境でWebP入出力をサポート)
- Pillow(Python)、Sharp(Node.js)などの画像処理ライブラリ
- CDN(Cloudflare、Fastly、Akamai等)や画像最適化サービス(Cloudinary、Imgix等)
アニメーションWebPと比較対象
アニメーション用途では従来のGIFよりも大幅に効率的で、フルカラーを扱えるため表現力が高いです。APNGとの比較では、APNGは主にPNG互換のアニメーションを実現しますが、WebPは圧縮効率とファイルサイズで優位になることが多く、用途により選択されます。
SEO・アクセシビリティ視点
画像フォーマット自体は直接的なSEOランキング要因ではありませんが、ページ読み込み速度(Core Web Vitals)に影響するため、結果的にSEOに貢献します。alt属性の適切な記述や、構造化データでの画像指定など基本的な施策は従来通り重要です。OGPやSNSカード用には互換性の観点からJPEG/PNGを併用することを推奨します。
まとめ
WebPは現在のウェブにおける有力な次世代画像フォーマットで、適切に導入すればページ表示速度の改善や帯域節約に大きく貢献します。導入時はブラウザ互換性の確認、サーバー側のライブラリ対応、フォールバック設計、性能測定(Lighthouseやフィールドデータ)を怠らないことが重要です。運用の中で品質パラメータや変換タイミングをチューニングすることで、ユーザー体験とコストの最適化が図れます。
参考文献
- Google Developers — WebP
- MDN Web Docs — WebP
- Can I Use — WebP
- libwebp(GitHub)
- ImageMagick — WebPサポート
- WordPress.org — Media File Types(WebPに関する記載)
- IANA — image/webp


