TRS入力とは何か?仕組み・用途・配線・注意点をわかりやすく解説
TRS入力とは — 基本の定義
TRS(Tip-Ring-Sleeve)はオーディオで広く使われるプラグ/ジャックの規格で、一般には1/4インチ(6.35mm)や3.5mmのプラグがこの形式で流通しています。名前の通り、プラグの先端(Tip)、中間のリング(Ring)、根元のスリーブ(Sleeve)の3つの導体を持ち、用途によって「モノラルのバランス信号」「ステレオのアンバランス信号」「エフェクトのインサート端子」などに使われます。
TRSの物理構造と信号の役割
TRSプラグは以下の3つの導体に分かれます。
- Tip(先端): チャンネルの“ホット”信号、またはステレオでは左チャンネル
- Ring(リング): チャンネルの“コールド”信号(バランス時)または右チャンネル(ステレオ時)
- Sleeve(スリーブ): 共通のグラウンド(シールド)
バランス伝送ではTipが正相(Hot)、Ringが逆相(Cold)を担い、受け側の差動入力がこれらの差を増幅することで外来ノイズを打ち消します。ステレオ(ヘッドホン)として使う場合はTipが左、Ringが右、Sleeveが共通グラウンドになります。
TRS入力の主な用途
- バランスライン入力/出力:プロ機器間のラインレベル(通常は+4 dBu)の伝送でノイズ低減のために使用。
- ヘッドホン端子(ステレオ):ノートPCやスマホのミニプラグ(3.5mm TRS)やオーディオ機器の1/4インチヘッドホンジャック。
- ミキサーのインサート端子:1本のTRSで送信(Send)と戻り(Return)を同時に扱うことがあり、エフェクトループとして使用。
- DIやエフェクト機器:機器によってTRSでバランス入力を持つものがある。
TRSとTS、XLRとの違い
よく比較されるのはTS(Tip-Sleeve、2極)とXLR(3ピンコネクタ)です。TSはモノラル・アンバランス信号に使われ、Tipが信号、Sleeveがグラウンドです。一方、XLRはプロマイクなどで多用されるコネクタで、ピン1=グラウンド、ピン2=ホット、ピン3=コールドという配線規格(AES/EIA標準)があります。
TRSは物理的にXLRのようなロック機構を持たない代わりに小型で汎用性が高く、正しく配線すればXLRと同等のバランス伝送が可能です。一般に、長距離かつ堅牢性を重視する場合はXLRが好まれますが、機材の入出力でバランス対応があるならTRSでも十分にノイズ除去の恩恵を受けられます。
配線と規約 — 正しい結線の理解
TRSをバランス接続として使う際の標準的な配線は以下のとおりです(XLRとのマッピングも併記)。
- Tip → Pin2(XLRのホット/正相)
- Ring → Pin3(XLRのコールド/逆相)
- Sleeve → Pin1(XLRのシールド/グラウンド)
この配線であれば、TRSとXLR間の変換ケーブルでバランス信号を保ったまま接続できます。ただし、機器によってはインサート端子等でTipをSend、RingをReturnに割り当てるなど独自の配線をしていることがあるため、必ずマニュアルで確認してください。
インサート端子での使い方(Send/Return)
多くのアナログミキサーでは、インサート端子に1本のTRSを使い、Tipがアウト(Send)、Ringが戻り(Return)に割り当てられています。これにより外部コンプレッサーやEQなどをチャンネルごとに挟む(インサートする)ことが可能です。注意点として、接続を誤ると出力が短絡したり、片側しか音が戻らないといった問題が生じるため、メーカーの配線仕様を確認することが重要です。
長距離伝送とノイズ対策
バランス伝送(TRSやXLR)は、ノイズを共通モードとして扱い差動入力で打ち消す仕組みのため、長距離のラインに強みがあります。ギターなどの楽器のアンバランス出力を長いケーブルで引くとノイズを拾いやすいのに対し、DIボックスやバランス入力を経由するとノイズが減ります。一般的な目安として、楽器レベルのアンバランスケーブルは長距離に向かず、ライン信号でバランスを使うのがセオリーです。
レベルの違い — マイク、ライン、インストゥルメント
TRSはラインレベル(プロは+4 dBuが基準)で使われることが多いですが、注意すべきはレベルの違いです。マイクレベルは非常に低いので通常はマイクプリアンプ(多くはXLR)を使います。ギターやベースなどのインストゥルメントはハイインピーダンスのアンバランス出力が多く、直接ライン入力に接続するとレベルやインピーダンスの不整合で音質が劣化することがあります。DI(ダイレクトボックス)やインストゥルメント入力の使用を検討してください。
よくある接続トラブルと対処法
- 誤ったアダプタの使用で片側が消える:ステレオTRSをバランス入力にそのまま接続すると、リングとスリーブが短絡され意図した信号が消える場合があります。用途に適したケーブル/アダプタを選ぶこと。
- フェーズキャンセル:バランス→アンバランスの変換を誤ると、プラスとマイナスが逆向きに扱われ音が薄くなることがあります。極性(ピン2がホットか)を確認する。
- ファントム電源の扱い:XLRで供給される+48Vのファントム電源は、TRSの機器や不適切なアダプタ経由だと短絡や機器破損の原因になることがあります。ファントムの有無と配線を確認し、専用のDIやコンバータを使う。
- インサート配線の誤解:インサートは一般的にTip=Send、Ring=Returnですが、機器によって逆の場合もあります。機器マニュアルで確認。
TRSを使う際の実務的なポイント
- ケーブルの品質:シールド、導体の太さ、プラグの接触品質が音質と信頼性に影響します。長距離伝送ならばバランスケーブルを選択。
- コネクタの寸法:スタジオ機材の半田付けや交換をする際は、1/4インチと3.5mmの違いに注意。
- 適材適所の選択:堅牢性やロックが必要な場面(ライブ等)ではXLR、デスク周りやヘッドホンではTRSやミニジャック、と使い分ける。
- アダプタ利用時の確認:TRS↔XLR変換アダプタやケーブルは、配線図(バランス保護/インサート用途等)を確認して購入する。
TRSとTRRSの違い(補足)
スマホなどで使われるTRRSはTip-Ring-Ring-Sleeveの4極で、ヘッドセットのマイクやリモコン信号を追加するために使われます。TRSとはピン数が異なるため、TRSプラグをTRRS端子に挿すと物理的には入るもののマイクが動作しない、あるいはリモコン誤動作となることがある点に注意が必要です。スマホ等のTRRSはCTIA/OMTPという規格の違いもあります。
まとめ — TRS入力を正しく扱うためのチェックリスト
- 接続機器がバランスかステレオ(アンバランス)かを確認する。
- ケーブル/アダプタの配線(Tip=Hot, Ring=Cold, Sleeve=Ground)を確認する。
- インサート端子の役割(Send/Return)をマニュアルで確認する。
- ファントム電源の有無とその影響を把握する。
- 長距離はバランス伝送、楽器はDIやインストゥルメント入力を検討する。
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参考文献
- Shure: Balanced vs. Unbalanced Audio Signals
- Sound on Sound: Balanced vs Unbalanced — What’s the difference?
- Wikipedia: Phone connector (TRS/TS terminology and history)
- Sweetwater: TRS vs TS — what do they mean?
- Neutrik: Connector information and technical resources


