.tif 拡張子完全ガイド：特徴・歴史・使い方・互換性・最適化

2025年12月28日 最終更新日時 : 2025年12月28日 エバープレイ編集部

概要：.tif（TIFF）とは何か

.tif（または .tiff）は、画像データの保存に広く使われているファイル拡張子で、TIFF（Tag Image File Format）仕様に準拠したファイルを指します。TIFF は高品質な画像保存、メタデータの埋め込み、多ページ構造のサポートなどを特徴とし、スキャン、印刷、医療画像、地理空間データなどの分野で長年にわたり使われてきました。拡張子が .tif と .tiff の2種類あるのは歴史的な互換性（DOS の 3 文字拡張子制限など）が理由で、技術的には同じフォーマットです。

歴史と仕様の概略

TIFF は 1980 年代に Aldus（後の Adobe）やハードウェア／ソフトウェアベンダーの協力で策定され、1992 年の TIFF 6.0 が事実上の基準となりました。以降、サードパーティやコミュニティにより拡張が追加され、BigTIFF のように 4GB を超えるファイルを扱うための拡張も登場しています。TIFF はバイナリ仕様で、内部にタグ（Tag）ベースのメタ情報を持つ点が特徴です。

TIFF ファイルの構造（ヘッダー、IFD、タグ）

TIFF ファイルは大まかに次の要素で構成されます。

  • ヘッダー：ファイル先頭にエンディアン表記（"II"=Little-endian または "MM"=Big-endian）とマジックナンバー（42）があり、最初の IFD（Image File Directory）へのオフセットが続きます。
  • IFD（Image File Directory）：各 IFD が 1 ページ（1 画像）を表し、タグの一覧を持ちます。複数の IFD を連ねることでマルチページ TIFF が実現します。
  • タグ：画像幅・高さ・圧縮方式・ビット深度・色空間などを表す小さな情報単位。TIFF の柔軟な設計によりカスタムタグや後発の拡張タグも存在します。

よく使われる圧縮方式

TIFF が対応する圧縮方式は多彩で、用途に応じて選ばれます。代表的なものは以下の通りです。

  • 無圧縮（Raw）：品質劣化が無く処理が単純。ただしファイルサイズが大きくなる。
  • LZW：可逆圧縮。歴史的に特許問題がありましたが、現在は問題なく使えます。保存品質が劣化しません。
  • Deflate（ZIP）：可逆の ZIP 圧縮。LZW と同様に可逆で効率的。
  • PackBits：単純なランレングス圧縮。主にモノクロや簡単な画像に使われることがあります。
  • JPEG（TIFF 内 JPEG）：不可逆圧縮。ファイルを小さくできますが画質が劣化します。写真用途で使われることがあります。
  • CCITT Group 3/Group 4：主に二値（白黒）画像、ファクスやスキャン文書に適した圧縮方式。

色空間・ビット深度・チャンネル

TIFF は多様な色表現をサポートします。代表的なものとして RGB、グレースケール、パレット（インデックスカラー）、CMYK、YCbCr、Lab カラーなどがあります。ビット深度は 1 ビット（モノクロ）や 8 ビット、16 ビット、あるいはそれ以上の高精度画像にも対応しており、科学用途や医療用途では 16 ビットや 32 ビット浮動小数点のチャネルを持つこともあります。アルファ（透明度）チャンネルを持たせることも可能です。

マルチページ TIFF と用途

TIFF は一つのファイル内に複数ページ（複数 IFD）を含められます。これにより文書スキャンやファクスの保存に適しています。多ページ TIFF は紙文書の一括管理やアーカイブでよく使われます。

BigTIFF：大容量ファイルのための拡張

標準的な TIFF（32 ビットのオフセット）は理論上 4GB 前後の制限があり、大きな画像や長いマルチページファイルでは不足することがあります。これに対応するために BigTIFF が開発され、64 ビットのオフセットを使って 4GB を超えるサイズのファイルを扱えるようにしました。BigTIFF はすべてのソフトでサポートされているわけではないため、大容量を扱う場合は使用前に利用ライブラリやアプリケーションの互換性を確認してください。

メタデータの埋め込み：Exif / IPTC / XMP / GeoTIFF

TIFF は多様なメタデータを内包できるため、撮影情報（Exif）、報道用途の IPTC、拡張メタデータの XMP を埋め込むことができます。さらに GeoTIFF の拡張を使えば座標系や地理参照情報を TIFF に保存でき、GIS 分野で重要な役割を果たします。メタデータはアーカイブやワークフロー自動化で非常に有用です。

主な利用分野

  • 印刷・商業印刷：高解像度・CMYK対応・色管理の必要がある場面で多用されます。
  • スキャニング・文書管理：高品質の長期保存や OCR 前処理用に使われます（マルチページ TIFF）。
  • 医療画像：DICOM が主流ですが、研究用途や画像変換の中間フォーマットとして TIFF が使われることがあります。
  • 地理空間データ（GIS）：GeoTIFF により地理参照付きラスタ画像を保存。
  • アーカイブ・デジタル保存：可逆圧縮で品質を保ったまま長期保管する用途。

ソフトウェア互換性と Web 上での扱い

多くの画像処理ソフト（Adobe Photoshop、GIMP、ImageMagick など）やライブラリ（libtiff、GDAL、OpenCV）が TIFF をサポートします。しかし、ウェブブラウザは TIFF 表示に制限があることが多く、Web 表示目的なら JPEG、PNG、WebP などのフォーマットに変換するのが一般的です。WordPress に関しても、サーバ設定や WordPress 本体の制限、セキュリティポリシーによって TIFF のアップロードが禁止されているケースがあります。必要であればプラグインやサーバの設定を変更して対応しますが、公開用途では変換して使うのが無難です。

代表的なツールとコマンド例

現場でよく使うコマンドやツールをいくつか紹介します。

  • ImageMagick（変換・圧縮・サムネイル作成）: convert input.jpg -compress lzw output.tif
  • ImageMagick（マルチページ作成）: convert page1.png page2.png multipage.tif
  • ExifTool（メタデータ確認・編集）: exiftool image.tif
  • tiffinfo / tiffcp（libtiff に付属するツール）: tiffinfo image.tif / tiffcp -c lzw in.tif out.tif

品質管理と最適化のポイント

TIFF を正しく運用するための実務上のポイント：

  • 用途に合わせた圧縮を選ぶ：アーカイブ用途は可逆圧縮（LZW / Deflate）や無圧縮を、Web/公開用途は JPEG（ただし不可逆）や PNG/WebP へ変換を検討。
  • 解像度（DPI）とビット深度を適切に設定：印刷用途なら 300dpi 以上、写真の保存や科学計測では 16bit やそれ以上を検討。
  • メタデータを活用：撮影・スキャン時に XMP や IPTC、必要なら GeoTIFF を埋め込み、検索・管理に備える。
  • ファイル名とバージョン管理：大きなファイルになりやすいため、命名規則やチェックサム、外部リポジトリでの管理を推奨。
  • 互換性確認：BigTIFF を使う場合は受け手側の対応を事前に確認。

セキュリティと互換性に関する注意点

TIFF は複雑なバイナリ構造を持つため、パーサ（読み取りライブラリ）の脆弱性が発見されることがあります。第三者から受け取った TIFF を自動処理するワークフローを構築する際は、ライブラリを最新に保ち、信頼できるツールで検証／サニタイズすることが重要です。また、古いアプリケーションは特定の圧縮方式やタグに対応していないことがあるため、長期的なアーカイブでは互換性に関するドキュメントを残しておくと安心です。

よくあるトラブルと対処法

問題と簡易対処法の例：

  • ウェブで表示されない：ブラウザは TIFF 表示に対応していないことが多い。公開用には JPEG/PNG/WebP に変換する。
  • 特定ソフトで開けない：圧縮方式（例：特殊な JPEG-in-TIFF や独自タグ）が非対応の可能性。ImageMagick や最新の libtiff ベースツールで変換してみる。
  • ファイルサイズが非常に大きい：不要な履歴やメタデータを削除、適切な可逆圧縮を検討。BigTIFF を使う場面か確認。

実務でのおすすめワークフロー

一般的なワークフローの例：

  1. スキャン時は原本に見合う解像度とカラーモードを選択（文書=300dpi 二値またはグレースケール、写真=300–600dpi、16bit など）。
  2. 保存時は可逆圧縮（LZW/Deflate）または無圧縮で原本マスターを保持。
  3. 公開・配布用は Web 向けフォーマット（JPEG/PNG/WebP）に変換し、メタデータを必要に応じて保持/削除。
  4. アーカイブにはメタデータ（作成日、スキャン担当者、保存ポリシー）を付与し、チェックサムや複数場所での保管を行う。

まとめ

TIFF（.tif/.tiff）は柔軟性と高品質を兼ね備えた画像フォーマットで、印刷、スキャン、アーカイブ、GIS など幅広い用途で活躍します。用途に応じて圧縮方式やビット深度、メタデータの扱いを最適化し、互換性やセキュリティに注意することが重要です。ウェブ公開が目的であれば別フォーマットへの変換を検討し、長期保存には可逆圧縮とメタデータの管理を推奨します。

参考文献

カテゴリー
IT
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