ディミニッシュド・トライアドとは?構造・機能・実践的使い方を徹底解説

ディミニッシュド・トライアドの定義と基本構造

ディミニッシュド・トライアド(diminished triad)は、根音(ルート)から短3度(minor third)と完全5度の半音下(すなわち減5度、diminished fifth)で構成される三和音です。記譜では一般に「dim」や小さい丸記号を使って表すことがありますが、小さい丸は四和音の完全に減少した形(fully diminished seventh)を示す場合もあるため、文脈で使い分けられます。具体例を挙げると、Cディミニッシュド・トライアドは C–E♭–G♭ で表されます。

音程関係と不協和性の原因

このトライアドの特徴は、根音と第5音の間に生じる減5度、すなわち三全音(トライトーン)が含まれる点です。トライトーンは約600セントに相当し、古典的な和声感では不安定で不協和な響きとされます。短3度は一般に6:5に近い純正比で聞こえることが多い一方、トライトーンは等温律以外の純正比で単純に表しづらく、調律系により響きが大きく変わるため、心理的に強い不安定感を与えます。

表記と転回

  • 基本形(根音が最低音): ルート・短3度・減5度(例: C–E♭–G♭)
  • 第1転回(6の構成): 短3度を最低音にする(例: E♭–G♭–C)。通例は vii°6 と表記されることが多い
  • 第2転回(6/5の構成): 減5度を最低音にする(例: G♭–C–E♭)

バロック期のフィゲュアード・バスでは、vii°6 のように「6」を付して第1転回を示すことが一般的です。根音を最低音に置く基本形は非常に不安定と見なされるため、実用上は第1転回で使われることが多いです。

和声機能と役割

ディミニッシュド・トライアドのもっとも典型的な和声機能は「導音の和音(leading-tone chord)」です。長調のスケール上では第七音に基づく三和音がディミニッシュド・トライアドになり、記号では vii°(例: Cメジャーにおける B–D–F が vii°)として表されます。この和音は強い解決志向を持ち、主和音(I)へ向かう傾向があります。具体的な解決例としては、vii°(B–D–F)が I(C–E–G)へ進行するとき、各声部は自然に半音進行や小刻みな移動を行い、安定した三和音へと移行します。

連結と進行の実例

代表的な進行・解決例:

  • vii° → I:導音(vii°の根音)が上行してトニックの根音に解決する。両側の音も自然に半音や全音で解決する。
  • vii°6 → I6:第1転回で用いるとベースラインが滑らかになるため、バロックや古典派の通奏低音的手法でよく使われる。
  • 補助的用法として経過和音や代理和音:ディミニッシュド・トライアドはテンションやクロマティックな動きの中で短い接続役を務めることが多い。

声部指導と倍音の取り扱い

ディミニッシュド・トライアドは不安定な和音であるため、倍音(どの音を二度用いるか)の扱いに注意が必要です。根音を倍にすると和音の不安定さが強調され、進行先の決定が難しくなる場合があります。そのため、実務上は第1転回(短3度を低音に置く)の形で使用することが多く、これにより声部間の滑らかな連結が得られます。ベースや低声部に減5度が来る配置は避けられることが多いです。

歴史的背景とジャンル別の用法

ルネサンスからバロックにかけて、トライトーン自体は慎重に扱われる傾向がありましたが、17世紀以降の通奏低音と和声理論の発展により導音和音としての地位を確立しました。古典派以降では、vii° は主に導音機能を持つ和音として楽曲の終結や転調の導入に使われます。ロマン派以降は色彩的な手法として拡張的に利用され、増20や減音程を含む複雑な和声の一部となります。

ジャズでは、ディミニッシュドの概念はより四和音的に発展し、ディミニッシュド・セブンス(fully diminished seventh)が転回可能で鍵的な役割を持っています。純粋なディミニッシュド・トライアドはジャズの中ではあまり単独で用いられませんが、半音進行や代理和音、テンションの一部として利用されます。ポピュラー音楽や映画音楽では、恐怖感や緊張感を演出する色彩的な和音として活躍します。

チューニングと音響的考察

等温律におけるトライトーンは正確に600セントですが、純正律など他の調律系ではトライトーンを単純な比で表すことが難しく、和声の響きが変わります。結果として、ディミニッシュド・トライアドの不協和性や緊張感は調律系に大きく依存します。現代のピアノやほとんどの鍵盤楽器は等温律であるため、典型的な“金属的”で浮遊感のあるトライトーンが聞こえます。

楽曲例と分析(代表例)

古典派のレパートリーでは、モーツァルトやハイドン、ベートーヴェンの楽曲で導音和音が多用されています。バッハの通奏低音にもvii°6的な配置が現れ、フレーズの緊張と解決を作り出します。ロマン派以降の作曲家はこの和音を主題展開や転調の契機として巧みに用いています。現代音楽や映画音楽では、短調の陰影や恐怖の描写に頻繁に使われます。

実践的なトレーニング課題

  • 鍵盤でディミニッシュド・トライアドを全部の根音で弾く(Cdim, C#dim, Ddim …)。各転回も確認する。
  • vii° → I の進行を左手で低声部、右手で和声を取る形で練習し、声部ごとの解決を聴き取る。
  • 耳トレ:短3度と減5度(トライトーン)を個別に聞き分け、ディミニッシュド・トライアドの三音を与えられたときに瞬時に判別する。
  • 楽曲分析:バロックや古典派の小曲を選び、どのようにvii°が使われているかをスコアで追う。

まとめと実践上のポイント

ディミニッシュド・トライアドは「短3度+減5度」で構成される和音で、強い不安定性と解決志向を持ちます。和声上は導音和音として最も典型的で、特に第1転回で使うと実用上扱いやすいことが多いです。ジャンルによっては色彩的・感情的な効果を狙って使用され、ジャズでは四和音形態に発展して重要な役割を果たします。演奏や作曲の現場では、声部の倍音の取り扱いや転回形の選択によってその効果を調整できます。

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参考文献