失敗しない企業概要の作り方:信頼を高める項目・書き方・テンプレートガイド

はじめに:企業概要(会社概要)の重要性

企業概要は、取引先・投資家・求職者・報道など多様なステークホルダーに向けて「会社とは何か」を明確に伝えるための最も基本的かつ重要な情報発信ツールです。WebサイトやIR資料、営業資料、採用ページなどで一貫した企業概要を用いることで、信頼性やブランドイメージを高め、意思決定のスピードを速める効果があります。

企業概要の目的と想定読者

企業概要を作成する目的は主に次の3点です。

  • 企業の基本事実を正確に伝える(誰が、どこで、何をしているか)
  • 企業の強みや事業の特徴を端的に示し、関心を喚起する
  • 信頼性(法令遵守、財務健全性、ガバナンス)を担保する情報を提供する

想定読者は、初めて会社を知る人(潜在顧客や求職者)、関係を深めようとする人(取引先、投資家、媒体)、内部で別部署や新入社員に伝える場合など多様です。各読者に合わせて、要約と詳細の両方を用意すると有効です。

企業概要に含めるべき基本項目

まずは必須レベルの基本情報です。対外公開する情報として分かりやすく、かつ最新の内容に保つ必要があります。

  • 会社名(正式社名、商号)
  • 所在地(本社住所、主要拠点)
  • 設立年月日
  • 代表者氏名(代表取締役など)
  • 資本金または出資金
  • 事業内容(事業分類と具体的なサービス/製品例)
  • 従業員数(連結/単体の区別)
  • 主要取引先(顧客・パートナーの例)
  • 売上高または業績指標(公開可能な範囲で)
  • 連結子会社・関連会社の概要(必要に応じて)

これらは閲覧者が真っ先に確認したい情報であり、採用や営業、信用調査の一次情報として利用されます。

信頼性を高める追加情報(深掘り項目)

基本項目に加えて、企業の特色やガバナンス、社会的責任を示す項目を載せると信頼度が上がります。

  • 沿革(主要なマイルストーン年表)
  • 経営陣プロフィール(CEO、CFO、主要幹部の略歴)
  • コーポレートミッション/ビジョン/バリュー
  • 主要製品やサービスの詳細(技術概要、導入事例)
  • 特許・商標などの知的財産
  • 受賞歴や業界認証(ISO等)
  • CSR・ESGの取り組み(環境・社会・ガバナンスに関する方針と実績)
  • 財務ハイライト(損益・貸借の概況、主要な財務指標)
  • 開示資料へのリンク(有価証券報告書、決算説明資料など)

上記を整備しておくと、投資家や金融機関、メディアからの信頼を得やすくなります。

法的・開示上の注意点(日本におけるポイント)

企業概要で提供する情報には法的な留意点があります。事実と異なる表示や誤解を生む表現は、景表法(景品表示法)や不正競争防止法などの問題だけでなく、上場企業の場合は金融商品取引法に基づく開示義務や虚偽記載のリスクにも繋がります。会社の登記事項は法務局に記録されるため、会社名・代表者名・本店所在地・目的などは登記情報と整合させる必要があります(法務省の商業・法人登記情報参照)。また、上場企業はEDINET等を通じた開示が義務付けられるため、公開情報との矛盾がないよう注意してください。

企業概要の作成手順(実務的なステップ)

以下は、実際に社内で企業概要を作成・更新する際の手順です。

  • 目的と想定読者を明確にする(採用向け、IR向け、営業向けで何を強調するかを決定)
  • 既存の公開情報(登記簿、決算書、過去のパンフレット、Webサイト)を収集する
  • 必須項目と追加項目をリスト化し、社内の責任者(法務、経理、広報)で事実確認を行う
  • 読みやすい構成(短い要約+詳細セクション)で文章化する。専門用語には補足を付ける
  • 最終チェック(法務チェック、代表者確認)を経て公開。変更が生じたら即時更新する体制を整える

見せ方の具体例とテンプレート(Web向け)

Webで読みやすい企業概要の構成例(短縮版/詳細版)を示します。

  • 要約(1〜2段落): 企業の一言紹介、ミッション、提供価値
  • 基本情報ブロック: 会社名・所在地・設立・代表・資本金・従業員数・事業分野(箇条書き)
  • 事業紹介: 事業セグメントごとの説明+代表的な製品・サービス
  • 沿革: 年表形式で主要な出来事を列挙
  • 経営陣: 写真付きで主要メンバーの略歴(要約)
  • 財務・開示: 最新の売上高や決算資料へのリンク
  • CSR/ESG: 取り組みと主要な成果指標
  • 問い合わせ: IRや採用、営業の連絡窓口(メールアドレスやフォームへのリンク)

視覚的に情報を整理するために、箇条書き、表、年表、アイコンを適切に使うことが推奨されます。モバイル表示も考慮して、長文は「続きを読む」で展開する設計も有効です。

SEOとUXを意識した書き方のポイント

企業概要ページを検索エンジンやユーザーに見つけてもらい、かつ信頼してもらうためのポイントは次の通りです。

  • ページタイトルとメタディスクリプションに会社名+主要キーワード(例:業界名、主要事業)を含める
  • 見出し(h1/h2)を適切に使い、要点を先に示す(ファーストビューで何をしている会社か分かる構成)
  • 構造化データ(schema.orgのOrganization等)を導入して検索結果に企業情報を反映させる
  • 最新の決算資料や代表挨拶、沿革などを定期的に更新して鮮度を保つ
  • 外部からの引用(ニュース掲載、受賞、導入実績)へリンクを設けて信頼性を高める

よくあるミスとその回避法

作成時に見かける代表的な誤りと対策です。

  • 古い情報の放置:設立年や代表者、連絡先が異なっていると信用を大きく損ねます。更新フローを決めること。
  • 専門用語の多用:業界外の読者に伝わらない表現は避け、注釈を付ける。
  • 過度な誇張表現:客観的に確認できる実績や数値で裏付けを示す。誇大表現は法的リスクにもなる。
  • プライバシーや機密の漏洩:個人情報や契約上開示不可の情報は公開しない。

実務で使えるチェックリスト(公開前)

公開前に必ず確認する項目リストです。

  • 登記簿上の会社名・所在地・代表者と一致しているか
  • 最新の決算数値・従業員数・資本金が反映されているか
  • 責任者(広報・法務・経理)が内容を確認済みか
  • 外部リンク(IR資料、受賞一覧、取引先)は正しく開くか
  • 個人情報や機密情報が含まれていないか

まとめ:企業概要は「正確さ」と「分かりやすさ」が命

企業概要は単なる事実の羅列ではなく、ステークホルダーと信頼関係を築くための重要なコミュニケーション手段です。正確な情報の提示、読み手目線での構成、法令や開示要件との整合性を保つことで、企業の信用力と認知度を高めることができます。作成後も定期的に見直し、変化に応じて更新する体制を持つことが重要です。

参考文献