レコードのシュリンク包装を解説:歴史から技術、保存方法まで

要約

レコードのシュリンク包装とは、製品をポリ塩化ビニル(PVC)などの収縮性フィルムで包み、ヒートガンやシュリンクトンネルを用いて加熱し製品形状にぴったりと密着させる技術です。
この技術は1950年代後半の米国でラックジョバーと呼ばれる業者がドラッグストアやグローサリーストアのラック販売用にLPを保護する目的で導入されたことに始まり、1960年代には世界中のレコード業界で一般的に使用されるようになりました。
シュリンクはジャケットの保護やプロモーションシールの封入といったマーケティング機能を果たす一方で、長期間高温下ではフィルムがさらに収縮してジャケットやレコード自体を歪ませるリスクも指摘されています。
コレクター市場では未開封のシュリンク付きオリジナルプレス盤が高値で取引されることがあり、シュリンクの状態や貼付シールの種類が価値判断の重要な要素となります。
近年ではPVC製フィルムの環境負荷が問題視され、生分解性PLAフィルムやリサイクル素材を用いたサステナブルな代替技術の研究開発が進んでいます。

シュリンク包装の定義と仕組み

シュリンク包装は熱収縮性フィルムを製品に巻き付け、加熱することでフィルムが収縮し、ジャケットに密着させる包装技術です。
一般的に使用されるフィルム素材にはPVC(ポリ塩化ビニル)のほか、POF(ポリオレフィン)やPLA(ポリ乳酸)があり、それぞれ耐久性や透明度、環境特性が異なります。
シュリンクフィルムは平面状のセンターフォールドや袋状のシュリンクバッグとして供給され、製品をセット後にヒートガンやシュリンクトンネルで均一に熱を加えます。

シュリンク包装の歴史

米国での誕生

レコードのシュリンク包装は1950年代後半の米国でラックジョバーと呼ばれる業者がドラッグストアやグローサリーストアのラック販売用にLPを保護する目的で導入したのが始まりです。この時期のシュリンクはCryovac社のY-filmなどが使用され、製品の改ざん防止や保護機能を重視した包装方法として採用されました。

欧州・日本での普及

欧州では1970年代後半から1980年代初頭にかけてシュリンク包装が一般的となり、フランスやドイツのレコードにも多く見られるようになりました。日本では1980年代以降に輸入盤を中心にシュリンク包装が普及し、ジャケットと盤を湿気や汚れから守るために未開封での販売が一般化しました。

シュリンク包装のメリットとデメリット

保護機能

シュリンク包装はジャケットに保護層を形成し、ホコリや水分、キズから製品を守ります。特にアメリカ盤のシュリンクは極めて薄いフィルムが用いられ、完全密封されることで湿度変化からジャケットと盤面を保護する効果が高いと言われています。

マーケティング機能

シュリンク包装はプロモーションシールやハイプシールを貼付するベースとして利用され、限定盤や特典の訴求力を高めます。ファン向けのダウンロードコードやインサート封入にも未開封の信頼性を担保する手段として活用されます。

リスクとデメリット

PVC製シュリンクは熱や紫外線などの影響で経年劣化するとフィルムが硬化・収縮し、ジャケットやレコード自体に歪みやリングウェアを生じるケースがあります。また、封を切る際に不注意でジャケットやシールを傷つけてしまうリスクも伴います。

コレクターズ価値

未開封のシュリンク付きオリジナルプレス盤はコレクター市場で希少価値が高く、プレミア価格で取引されることが多いです。シュリンク上の値札やシールの有無、フィルムのツヤや状態は価値評価の重要な判断材料となります。

シュリンク包装に用いる機器と手法

ヒートガンとシュリンクトンネル

ヒートガンを用いた小規模包装では、局所的に熱を加えて手軽にシュリンクが可能です。一方、シュリンクトンネルはコンベヤーベルトで製品を搬送しつつ一定温度で均一加熱するため、大量包装に適しています。

開封テクニック

シュリンクの開封には、レコードをジーンズの脚に押し当てて摩擦で裂く方法や、カッターナイフで切り込みを入れる方法があります。YouTubeには古いシュリンクをきれいに剥がす手順を紹介する動画も多く、担当する盤の年代や状態に応じた手法を選ぶことが推奨されています。

シュリンクフィルムの選び方

フィルムの厚さ(ゲージ)は一般に60〜100ゲージ(0.60〜1.00ミル)が標準的で、製品の重量や形状に応じて耐久性と作業効率のバランスを考えて選びます。ポリオレフィンフィルムはFDA承認の食品包装にも用いられるほど柔軟性と耐久性に優れ、ヒートガンやトンネルなど複数の機器で安定して収縮する特性があります。

環境課題とサステナブルな代替技術

従来のPVCフィルムは生分解性が低く、廃棄時に環境負荷を伴います。100%生分解性PLAシュリンクフィルムは透明タイプやマットタイプが存在し、持続可能な包装ソリューションとして注目されています。さらに、リサイクルポリオレフィンやバイオマス由来フィルムの開発も進んでおり、今後の普及が期待されています。

実践的な保管と長期保存のポイント

高温多湿環境はシュリンクの劣化や収縮を促進するため、温度22°C前後、湿度50%程度の管理が推奨されます。長期保存時に歪みや圧痕を防ぐには、必要に応じてシュリンクに切り込みを入れ、ジャケットを取り出したうえで盤を取り扱う方法が有効です。コレクションの売買を見据える場合は、シュリンク状態の記録写真を残し、後の価値証明に役立てるのがおすすめです。

まとめ

レコードのシュリンク包装は、ジャケットと盤の保護、プロモーション機能、コレクターズ価値の保持に大きく貢献する一方、長期的な保存や環境負荷といった課題も抱えています。今後は生分解性フィルムやリサイクル素材の導入、そして適切な保管管理を通じて、レコード文化を持続可能に楽しむための技術と知識を高めていくことが求められます。

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