Pink Floydの不朽の名曲5選:深淵なサウンドと詩性を紐解く

本稿では、Pink Floydを代表する名曲5曲――「Comfortably Numb」「Another Brick in the Wall (Part 2)」「Wish You Were Here」「Money」「Time」――について、それぞれの制作背景、音楽的特徴、そしてリスナーや批評家からの評価を詳述します。これらの楽曲は、同バンドの革新的なサウンドデザインと哲学的歌詞を結実させたものであり、リリースから数十年を経ても色褪せない普遍的な魅力を放っています。

1. Comfortably Numb

背景と制作

1979年発表のコンセプト・アルバム『The Wall』に収録された「Comfortably Numb」は、ドラマ仕立ての物語を彩るバラード曲です。音楽はギタリストのデヴィッド・ギルモアが、歌詞はベーシストのロジャー・ウォーターズが担当しました。制作過程ではオーケストラアレンジを巡る意見対立がありましたが、最終的にウォーターズの壮大なストリングスとギルモアのギターが融合し、バンド最後の共同制作曲となりました。

構成と演奏

楽曲はBマイナーの静かなイントロから始まり、サビではDメジャー/Dミクソリディアンに転調します。最大の聴きどころは2つのギターソロで、ギルモアがエコーやビッグマフを駆使して構築した壮麗なフレーズはロックギター史上屈指と評されています。加えて、Michael Kamenによるストリングス・アレンジがドラマティックな広がりをもたらしています。

反響と評価

リリース後、「Comfortably Numb」はロック史上最高のギターソロとして高く評価され、Rolling Stone誌の「500 Greatest Songs of All Time」で179位にランクインしました。また、2005年のLive 8ではメンバー全員が共演し、バンド史上最後のオリジナルラインナップ演奏として伝説的な一夜となりました。


2. Another Brick in the Wall (Part 2)

背景と制作

「Another Brick in the Wall (Part 2)」は『The Wall』の核を成す三部作の一部で、1979年にシングルカットされました。教育体制への痛烈な批判を込めた歌詞は、プロデューサーBob Ezrinの提案でディスコ風のリズムを取り入れられました。

子ども合唱団の起用

パート2最大の特徴は児童合唱団のコーラスで、北ロンドンのIslington Green Schoolの生徒たちが参加しました。当初は謝礼が支払われず後に訴訟となりましたが、最終的に学校への寄付と合唱団へのアルバム贈呈が行われました。

チャートと社会的影響

シングルは英国・米国をはじめ14か国でチャート1位を獲得し、全世界で400万枚以上を売り上げました。南アフリカのアパルトヘイト時代には学生運動のアンセムとなり、1980年5月1日に同政府はこの曲を禁止しました。


3. Wish You Were Here

背景と制作

1975年リリースのアルバム『Wish You Were Here』のタイトル・トラックで、ギルモアとウォーターズの共作です。切ないアコースティックイントロには、偶然録音されたグラッペリのヴァイオリンがかすかに混じる逸話があり、バンドのスタジオ実験性が表れています。

歌詞とテーマ

歌詞は音楽業界への疎外感とバンド初期メンバー、シド・バレットへの想いを交錯させており、「不在」と「郷愁」という普遍的テーマを強く打ち出しています。

セールスと評価

アルバムは英国・米国で発売直後にチャート1位を獲得し、初年度に1300万枚を売り上げる空前のヒットとなりました。後世の評価でもRolling Stone誌の「500 Greatest Albums」で264位に選ばれるなど、名盤の地位を確立しています。


4. Money

背景と制作

『The Dark Side of the Moon』のオープニングナンバーとして1973年に発表された「Money」は、ロジャー・ウォーターズが資本主義への皮肉を込めて作詞・作曲しました。イントロのキャッシュレジスターや硬貨のループ音は、ウォーターズ自身が録音・編集したもので、7/4拍子の上に計算されて配置されました。

構成と演奏

楽曲はBマイナーの12小節ブルース形式を基本に、ディキシーランド調のサックスソロ(Dick Parry)を20小節にわたり挿入。その後4/4拍子のギターソロへと転じ、再び7/4に戻る複雑な構造を持ちます。

チャートと反響

シングルは米Billboard Hot 100で13位、Cash Box誌で10位に達し、Pink Floyd初の全米ヒットとなりました。その後もライブの定番曲となり、デヴィッド・ギルモア自身による1981年再録版や、ウォーターズの2023年再録版でも演奏され続けています。


5. Time

背景と制作

『The Dark Side of the Moon』収録の4曲目「Time」は、ロジャー・ウォーターズが28~29歳時に抱いた“人生は準備ではなく、今を生きること”という実感をもとに歌詞化したものです。イントロの時計のチャイムやアラーム音は、エンジニアAlan Parsonsがロンドンの骨董店で録音した素材を使用しています。

構成と演奏

キーはF♯マイナーで、各時計音の後にニック・メイソンのロトトム主体の2分間ドラムソロが続きます。ヴァースはギルモアが、ブリッジではリチャード・ライトがリードヴォーカルを担当し、両者のコントラストが楽曲に深みを与えています。

反響と使用例

近年ではBillboard誌が50大ピンク・フロイド曲中9位、Louder Sound誌が5位に選出しています。また、映画『エターナルズ』やドラマ『The Crowded Room』など、多彩な映像作品にも挿入されています。

以上5曲は、Pink Floydの持つ革新性と人間的な深みを象徴する名曲ばかりです。それぞれがテーマやアプローチを異にしながら、バンドのサウンドと詩性を極限まで高めた芸術作品として、今なお世界中のリスナーを魅了し続けています。

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