2-1. 「Rime of the Ancient Mariner」:コールリッジの詩の壮大な音楽化
1984年の『Powerslave』収録の「Rime of the Ancient Mariner」は、イギリスの詩人サミュエル・テイラー・コールリッジの叙事詩『古代の航海者の歌』(1798年)を忠実に音楽で表現した楽曲です。約14分にも及ぶ長編曲で、詩の語りのドラマチックな展開をギターやベースの重厚な響きで描き、物語の不気味さや超自然の要素を強調しています。 この曲は、1984年の12インチアナログ盤においてもフルバージョンが収録されており、当時のプログレッシブ/メタル系作品の中でも独特の完成度を誇っています。アナログならではの厚みのある音が、この長編作品の緊張感を引き立てています。
2-2. 「Flight of Icarus」:ギリシャ神話のイカルスの物語
1983年のアルバム『Piece of Mind』に収録されている「Flight of Icarus」は、ギリシャ神話のイカルスの伝説を題材にしています。イカルスが父ダイダロスの作ったろうの翼で空を飛び、高く舞い上がりすぎて太陽に近づき翼が溶けて墜落する悲劇を歌っています。 シングルレコードとして7インチ盤でリリースされ、B面にはライブバージョンが含まれることもあり、当時のライブパフォーマンスの迫力を伝える貴重な資料です。イカルスの物語は挑戦とそれに伴うリスクを象徴しており、歌詞は警鐘とも取れる深いメッセージを持っています。
3. その他の代表的な歴史・文学的楽曲
「Alexander the Great」(1986年『Somewhere in Time』)
紀元前4世紀のマケドニア王アレキサンダー大王に捧げられた曲で、彼の征服と生涯を史実に沿って描写している。
「Sun and Steel」(1983年『Piece of Mind』)
日本の武士道を題材にし、歴史的な武士の精神性が歌詞に反映されている。
「Revelations」(1983年『Piece of Mind』)
宗教的啓示や神秘主義をテーマに、聖者や預言者の伝説に着想を得ている。
アイアンメイデンのアルバムジャケットは、グラフィックアーティストのダグ・サインフィールドによるもので、歴史的・神話的な題材を視覚的に表現しています。例えば『Powerslave』のジャケットは古代エジプトをモチーフとし、『Somewhere in Time』では未来的な世界観が融合されています。これらはすべてLPレコードの大きなキャンバスに描かれており、CDやデジタル配信では味わえない没入感を提供します。