【ジャズ・トロンボーンの先駆者J・J・ジョンソンの代表レコードと軌跡|名盤レビューとコレクター必携アイテム】

ジャズ・トロンボーン界の巨匠:J・J・ジョンソンの軌跡とレコード紹介

ジャズの歴史において、トロンボーンという楽器がモダンジャズの主役として脚光を浴びることは決して多くありませんでした。しかしその流れを大きく変え、ジャズ・トロンボーンの地位を確立した偉大な人物こそJ・J・ジョンソン(J.J. Johnson)です。1940年代後半から1970年代にかけて、その卓越したテクニックと洗練された音色で新主流派ジャズ(ビバップ・スタイル)を牽引し、多くのジャズプレイヤーに影響を与えました。

J・J・ジョンソンとは?

ジョン・ラビル・ジョンソン(John Birks "J.J." Johnson)は1924年1月22日にペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれました。彼は若い頃からトロンボーンに魅せられたものの、その当時のトロンボーン奏者はスイング系が多く、ビバップのような高速で複雑なフレーズをトロンボーンで演奏するのは困難とされていました。

しかしJ・J・ジョンソンは、その難題に挑み、トロンボーンでバド・パウエルやチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーらと肩を並べるビバップのテクニックを駆使。奏法を改革し、新たなトロンボーン表現を切り開きました。彼のプレイスタイルは滑らかで精密かつ鋭いアタックを特徴とし、従来のイメージを一新しました。

J・J・ジョンソンのレコード作品について

J・J・ジョンソンのレコード作品の多くは、アナログLPの黄金期である1950年代から1960年代にかけてリリースされました。ここでは彼の代表的なレコードを中心に紹介し、その音楽性や特徴を掘り下げていきます。

1953年『J.J. Johnson’s Jazz Quintets』

このLPはJ・Jの初期のリーダー作の一つで、彼がビバップのトロンボーン奏者として頭角を現した時期の録音です。CD化もされていますが、オリジナルのプレスは1950年代のBlue NoteやPrestigeレーベルからリリースされ、ジャケットデザインにも時代の空気を感じることができます。

レコードには「Lament」や「Turnpike」などの自作曲が収められており、テッド・ダレス(テナーサックス)、ケニー・クラーク(ドラム)らと共に緊密で洗練されたアンサンブルを展開しています。ビバップの技巧的なフレーズを、トロンボーン特有の温かみと伸びやかさで表現する名盤です。

1955年『Jay Jay Johnson with Clifford Brown』

この名盤はビバップトロンボーンの革新的プレイヤーJ・J・ジョンソンと、新進気鋭のトランペット奏者クリフォード・ブラウンとの共演が最大の魅力です。クリフォード・ブラウンの早逝はジャズ界の損失として知られますが、このレコードは両者の若き才能が交錯した貴重な記録となっています。

アナログ盤のオリジナルは1955年にPrestigeから発売され、特に「Kelo」や「Kubrick」といったトラックは、その後多くのジャズミュージシャンにもカバーされました。モノラル盤ならではの温もりあるサウンドで、スタジオ録音の臨場感を味わえます。

1957年『J.J. Inc.』

ジャズトロンボーンでモダンジャズの標準形を示したJ・J・ジョンソンの代表作とされる一枚です。バド・パウエルのピアノに影響を受けた彼のリズム感がさらに洗練され、オーケストラルなアンサンブルも導入されました。マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンらと同時代を生きた彼の音楽哲学をレコードを通じて体感できます。

オリジナル盤はColumbiaやBlue Noteなどからもリリースされ、特にジャケットのデザインはモダンジャズのアイコン的存在としても親しまれています。45rpmや10インチ盤も存在し、コレクターの間では高値で取引されることもあります。

1960年代以降の作品とレコード事情

1960年代にはビッグバンド指向の録音や映画音楽への寄与など、レコードの多様性が広がります。J・J・ジョンソンの作品はVerveやRCA Victorなどの主要レーベルからLPがリリースされており、そのどれもがアナログレコードとしての音質の良さに定評があります。

  • 『The Great Kai & J.J.』(1961):ゲイリー・バートン(ヴィブラフォン)との共演盤。名門Impulse!レーベルからのリリース。これはビバップに加え、チャンピオン的な打楽器使いが光る作品。
  • 『J.J.'s Broadway』(1963):ブロードウェイミュージカルの曲をモダンジャズ風にアレンジ。音楽の多様性を表現し、レコードの収集価値も高い。
  • 『Betwixt & Between』(1969):ジャズとストリングスの融合によるセッション。アナログ盤の温かみある録音が優れており、レコードで聴くべき作品。

レコードコレクターにとってのJ・J・ジョンソン

J・J・ジョンソンのレコードは、特に1950年代のオリジナルプレスが高く評価されています。プレス枚数が多くないものもあり、状態の良いものはヴィンテージ市場で高値で取引されることも珍しくありません。

レコードで聴く際の魅力として、アナログならではの温かみと音の厚みがあります。トロンボーンの金属的でありながらも柔らかい響きが生々しく伝わり、J・J特有の繊細なニュアンスまで深く楽しめます。

コレクターは:

  • プレスの時期(初期のモノラル盤は特に価値が高い)
  • ジャケットの保存状態(破れや変色の有無)
  • 盤質(キズの少なさや歪みの有無)

を中心にチェックするとよいでしょう。

まとめ:ビバップ・トロンボーンの伝説を手元で味わう

J・J・ジョンソンはトロンボーンという楽器に新たな可能性を示し、1950年代から60年代にかけてのジャズシーンを変革しました。彼のレコードは当時の熱気を伝える名盤揃いであり、LPレコードで聴くことでまた違った深い感動を得られます。

特にアナログ盤の質感や独特の音場感は、デジタル再生とは一線を画すものです。彼の息づかいやライブ感のある演奏を存分に味わえるため、ジャズの地元フィラデルフィアやニューヨークのジャズクラブの空気を感じながら音楽を楽しみたい方には、レコードでの鑑賞を強くおすすめします。

これからJ・J・ジョンソンの世界に踏み込みたいという方は、まずは「J.J. Johnson with Clifford Brown」(Prestige初期プレス)や、「J.J. Inc.」といった名盤をアナログで手に入れ、その緻密なプレイと音の温度感を堪能してみてはいかがでしょうか。