階層型データベースとは?特徴・仕組み・リレーショナルDBとの違いを解説
はじめに
データベースと聞くと、多くの人が「リレーショナルデータベース(RDB)」を思い浮かべるかもしれません。
しかし、RDBが登場する以前から使われてきたのが「階層型データベース」です。
この記事では、階層型データベースの基本構造や特徴、メリット・デメリット、
そしてリレーショナルデータベースとの違いをわかりやすく解説します。
1. 階層型データベースとは?
**階層型データベース(Hierarchical Database)**とは、
データを「階層構造(ツリー構造)」で管理するデータベースのことです。
データが「親(Parent)」と「子(Child)」の関係で結ばれ、木の枝のように上から下へと広がる形で構成されます。
このように、データ同士が1対多(1つの親に複数の子が存在)という明確な階層関係を持つのが特徴です。
2. 階層型データベースの構造イメージ
階層型データベースのデータ構造は、ツリー(木)のように表されます。
会社(親ノード)
├─ 部署(子ノード)
│ ├─ 社員(孫ノード)
│ └─ 社員(孫ノード)
└─ 部署(子ノード)
├─ 社員(孫ノード)
└─ 社員(孫ノード)
このように、上位のデータ(会社)から下位のデータ(部署→社員)へと階層的にデータが格納されます。
各子要素は1つの親にしか属さないため、構造はシンプルで分かりやすい反面、柔軟性には欠けます。
3. 階層型データベースの代表的なシステム
階層型データベースは、1950年代〜1960年代に誕生した初期のデータベースモデルであり、
商用データベースの基礎を築いた重要な存在です。
代表的なシステムには以下のようなものがあります。
- IBM IMS(Information Management System):世界初の商用階層型データベース
- Windows Registry(レジストリ):OSの設定情報を階層構造で管理
- XMLファイルやJSON構造(部分的に階層構造を持つデータとして利用)
現在でも、銀行・航空・保険などのメインフレームシステムで利用されているケースがあります。
4. 階層型データベースの特徴
● メリット
- アクセス速度が速い
階層構造が明確なため、データの検索経路が固定されており、アクセスが高速。 - データの整合性が高い
親子関係が明確に定義されているため、データの一貫性が保たれやすい。 - 大量データに強い
古くから大規模な業務システム(銀行・証券など)で使用されており、安定した処理性能を持つ。
● デメリット
- 柔軟性が低い
各データが1つの親にしか属せないため、「多対多」の関係を表現するのが難しい。 - 構造変更が困難
新しい階層を追加・変更する場合、全体の構造を修正しなければならないことが多い。 - SQLのような標準言語がない
操作はシステム固有の命令に依存するため、習得や移行が難しい。
5. リレーショナルデータベースとの違い
| 比較項目 | 階層型データベース | リレーショナルデータベース |
|---|---|---|
| データ構造 | ツリー構造(親子関係) | 表(テーブル)構造 |
| 関係性 | 1対多(固定的) | 多対多(柔軟) |
| データ操作 | 専用APIやプログラム | SQLによる操作 |
| 柔軟性 | 低い(構造変更が難しい) | 高い(スキーマ変更が容易) |
| 代表例 | IBM IMS | MySQL、Oracle、PostgreSQLなど |
階層型データベースは「処理の速さ」に優れる一方、
リレーショナルデータベースは「構造の柔軟性」や「開発のしやすさ」に優れています。
そのため、現代のシステム開発ではRDBが主流となっていますが、
階層型は固定構造の大量処理に適したモデルとして、今も特定の分野で活躍しています。
6. 階層型データベースの現代的な位置づけ
クラウドやビッグデータの時代においても、階層型データ構造の考え方は重要です。
たとえば、XMLやJSON、**NoSQL(ドキュメント型)**などのデータ形式にも、階層的な要素が引き継がれています。
つまり、階層型データベースは「古い技術」ではなく、
現代のデータ設計の基礎となる思想として今も息づいているのです。
まとめ
| 項目 | 内容 |
| 定義 | 親子関係でデータを管理するツリー構造のデータベース |
| 特徴 | 高速処理・高整合性だが柔軟性が低い |
| 代表例 | IBM IMS、Windows Registry |
| 現代的応用 | XML、JSON、NoSQLの構造設計に影響 |
階層型データベースは、リレーショナルデータベースの基礎を築いた歴史的モデルです。
現在のシステム開発では直接利用されることは少ないものの、
階層構造の概念を理解することは、データ設計を考えるうえで欠かせない重要な知識です。


