ジャズクラリネット革新者バディ・デフランコの生涯と名盤LPで辿る音楽史
バディ・デフランコとは誰か?
バディ・デフランコ(Buddy DeFranco、1923年2月17日 - 2014年12月24日)は、アメリカ合衆国のジャズクラリネット奏者として、スウィングからモダンジャズへの橋渡し役を果たし、その革新的な演奏スタイルで知られています。クラリネットがジャズの世界から一時期姿を消していた時代に、彼はモダンジャズにクラリネットを再び定着させた先駆者の一人です。
生涯とキャリアの概要
バディ・デフランコはイリノイ州シカゴでイタリア系アメリカ人の家庭に生まれ、幼少期から音楽に親しみました。14歳でプロとして演奏を開始し、1950年代から1960年代にかけて数多くのバンドリーダーと共演。また、自身のバンドを率いて活動し、クラリネット奏者としての地位を確立しました。
彼は特にバップ(ビバップ)やモダンジャズの分野での演奏に注力し、従来のスウィング・クラリネット奏者とは一線を画す革新的な演奏スタイルを追求しました。チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーといった巨匠たちと同時代を生き、その影響を受けつつも独自の世界観をクラリネットで表現しました。
レコード(LP)に見るバディ・デフランコの音楽史
バディ・デフランコのキャリアはLPレコードの黄金期と重なり、その録音はジャズ史の重要な資料として現在も高い評価を得ています。ここでは、彼の代表的なレコード作品を年代順に紹介しながら、その音楽的進化や特徴を探ります。
1. 『The Progressive Swing』(Clef Records, 1947)
バディ・デフランコがソロリーダーとして初期に残した記念碑的なLPの一つ。Clef Recordsからリリースされたこの作品は、スウィングの流れを受け継ぎつつ、彼が目指したモダンジャズの要素が盛り込まれています。デフランコのクラリネットが持つ温かみのある音色と、複雑で俊敏なバップ音楽の融合を聴くことができ、当時のジャズクラリネットの革新を示しました。
2. 『Buddy De Franco Plays Benny Goodman』(Mercury Records, 1957)
「ジャズクラリネットの帝王」と称されたベニー・グッドマンの楽曲をバディ・デフランコが再解釈。Mercury Recordsからのリリースで、彼の演奏スタイルの幅広さと尊敬の念が感じられる作品です。ここではデフランコがクラリネットで単なるコピーを超え、自己のフィルターを通してグッドマンのレパートリーをモダンジャズ的に再構築しています。
3. 『The Swinging Buddy DeFranco』(Verve Records, 1956)
VerveからリリースされたこのLPは、彼の豊かなスウィング感覚を存分に味わえる作品の一つです。モダンジャズの洗練性と、スウィング時代のリズム感が見事に調和しており、幅広い層のジャズファンから支持されました。タイトル通り、彼の「スウィンギング」な側面が強調された録音と言えるでしょう。
4. 『Buddy and Sweets』(Verve Records, 1955)
こちらはスウィングの名手トランペッター、スウィート・リンドジーとの共演盤で、クラリネットとトランペットが織りなすハーモニーや即興演奏に注目が集まります。Verve時代の充実期に出された作品で、彼の記録の中でも協調性と即興力の高さが際立つレコードです。
5. 『Crossfire』(Circle Records, 1977)
1970年代の作品で、バディ・デフランコがさらにモダンジャズの領域を深めた重要作です。Circle Recordsからのリリースで、LPの最後期にあたりますが、彼の革新性や実験的アプローチが色濃く反映された作品です。より自由度の高い演奏形態や複雑なアレンジメントをクラリネットで表現しています。
バディ・デフランコのレコード作品の特徴と価値
彼のレコード作品を通じて感じられるのは、クラリネットという楽器の「可能性の拡大」です。伝統的にスウィングやニューオリンズジャズで使われてきたクラリネットを、デフランコはビバップやモダンジャズの複雑なリズムに適応させ、かつてない速さと技巧で演奏しました。レコードでは、そのテクニックと感情表現の多様性がしっかりと捉えられています。
また、彼の多くのレコードは当時の著名なレーベル(Clef、Mercury、Verveなど)からリリースされており、その録音の音質や芸術的価値も高く評価されています。LPならではの音の温もりが、アナログファンにとっては非常に魅力的です。
日本におけるバディ・デフランコのレコード事情
日本では1950年代から1960年代にかけてジャズの人気が高まり、多くのアナログ盤が輸入されました。バディ・デフランコのLPも例外ではなく、その独特のクラリネットサウンドはジャズ愛好家の間で密かに評価を高めてきました。特に「Buddy De Franco Plays Benny Goodman」や「The Swinging Buddy DeFranco」など、ヴァーヴやマーキュリーのオリジナル・プレスはコレクターズアイテムとして高値で取引されています。
また、日本のレコードショップや専門店で時折見つかる再発盤や輸入盤も、彼のアートワークやジャケットデザインの美しさが好評で、視覚的にも楽しめるコレクションとなっています。
まとめ
バディ・デフランコはジャズクラリネット界における革新者であり、そのレコード作品はジャズ史における貴重な証言であると同時に、音楽的芸術性の高さを物語っています。LPというフォーマットで残された彼の録音は、アナログレコードの魅力と共に多くのジャズファンに愛され続けています。今後も彼のレコードコレクションは、クラリネット奏者のみならずジャズ愛好家全般にとって重要な存在であり続けるでしょう。


