カーター・ファミリーとは?歴史・メンバー・代表曲・希少レコードの価値と影響を徹底解説

カーター・ファミリーとは

カーター・ファミリー(The Carter Family)は、アメリカ合衆国のフォーク音楽およびカントリー音楽の草分け的存在であり、その歴史的影響は今日の音楽シーンにも多大な影響を与えています。1920年代から1930年代にかけて活躍し、特にレコードでの録音を通じてその名を全国、さらには世界に知らしめました。彼らの作品は、アメリカ南部の山岳地帯に根ざした伝統的な民謡を基にしたものであり、カントリー音楽の原点とされることが多いです。

メンバー構成と背景

カーター・ファミリーは主にアパラチア地方のバージニア州で活動した家族ユニットで、主なメンバーは以下の3人です。

  • A.P.カーター(Alvin Pleasant Carter):リーダーであり、歌詞の収集や編曲を担当。
  • サラ・カーター(Sara Dougherty Carter):ボーカルとオートハープを演奏。
  • メイベラ・カーター(Maybelle Addington Carter):ギターとボーカルを担当し、“カーター・ピッキング”と呼ばれる独特のギターテクニックを確立。

このユニットは1927年にレコード会社のヴァクスホーン・レコード(Victor Records)と契約し、本格的な録音活動を開始しました。

レコード録音の歴史と特徴

カーター・ファミリーの最初のレコード録音は1927年、ノースカロライナ州のブリストル・セッションで行われました。ブリストル・セッションは、アメリカ南部のローカル音楽を初めて大手レコード会社が商業的に録音し、リリースした歴史的イベントです。カーター・ファミリーはこのセッションの中で最も成功を収め、数多くのレコードをリリースしました。

彼らのレコードに収められた楽曲は、家族の世代から伝わった古い民謡や伝承曲をベースにしていますが、A.P.カーターが各地を巡って集めた新たな歌詞や曲も多く取り入れられています。レコードのフォーマットは当時の78回転盤(78rpm シェルアック盤)であり、これらは約3分以内の曲を収録可能であったため、彼らの楽曲もこの制約に合わせて演奏されました。

代表的なレコード作品

  • "Wildwood Flower"(ワイルドウッド・フラワー)
    なんと言っても彼らの楽曲の中で最も有名な一曲。「ワイルドウッド・フラワー」はメイベラ・カーターのギター技術が際立ち、多くのギタリストに影響を与えました。この曲は78回転レコードとして初期に録音され、現在も多くの再発盤やコンピレーション盤で取り上げられています。
  • "Keep on the Sunny Side"(キープ・オン・ザ・サニー・サイド)
    ポジティブなメッセージを持つこの曲も、カーター・ファミリーの代表作として知られています。オリジナルの78回転盤はコレクターの間で非常に価値が高いとされています。
  • "Can the Circle Be Unbroken (By and By)"(キャン・ザ・サークル・ビー・アンブロークン)
    宗教歌の要素を持ちつつも、当時のアメリカ南部の家族の人生や死生観を反映したこの曲もまた、彼らのレコードの中で特に人気が高かったナンバーです。

レコードの市場価値と収集事情

カーター・ファミリーのオリジナル78回転レコードは、現在では非常にコレクターズアイテムとして高い価値を持っています。特に1927年から1934年にヴァクスホーン・レコードからリリースされたオリジナル盤は希少であり、保存状態やプレスの状況によっては数百ドルから数千ドルの価格がつくことも珍しくありません。

これらのレコードは、アナログ音源として当時の録音技術や演奏スタイルを直接感じることができる貴重な資料です。また、オリジナル盤の裏面にはしばしばアートワークや当時の広告も掲載されており、音楽史だけでなく文化史の一端を垣間見ることができます。

レコード録音の技術的背景

1920年代の録音技術は主にアコースティック録音と電気録音の二段階を経ています。カーター・ファミリーの初期録音は1927年当時、すでに電気録音技術が導入されていたため、従来のアコースティック録音と比べて音質の向上が見られます。これは、彼らの音楽をより広い範囲にリスナーへ届けることを可能にしました。

当時の78回転シェルアック盤は直径が10インチが主流で、約3分間の演奏時間制限があるため、楽曲のアレンジやテンポにも工夫が見られます。この制限の中で、カーター・ファミリーは印象的なメロディとハーモニーを凝縮して表現し、後のミュージシャンに多大な影響を与えました。

レコード以降の影響と遺産

カーター・ファミリーの録音は20世紀のカントリー音楽の土台を築き、多くのアーティストにカバーされ続けています。彼らが初めてレコードに残した音源が、当時の田舎の音楽文化を記録し、現代に伝える重要な役割を果たしました。

特にメイベラ・カーターのギタースタイルは「カーター・ピッキング」と呼ばれ、アコースティックギターの演奏技法としてカントリーやフォークの基本的表現の一つとなっています。これもレコード録音を通じて広まった技術です。

まとめ

カーター・ファミリーは、1920年代から1930年代のレコード録音を通じて、アメリカ伝統音楽の重要な部分を後世に伝えました。当時の78回転盤シェルアックレコードは、今日のデジタル配信やCDでは失われがちなその時代特有の温かみある音質と演奏スタイルを今に残しています。コレクターズアイテムとしての価値も高く、音楽史研究やアナログ音楽愛好家の間で大切にされています。

カーター・ファミリーのレコードは、近代カントリー音楽の出発点であり、現在の音楽環境のルーツを知るうえで欠かせない存在です。彼らの音楽とそのレコードを通じて、アメリカの深い文化と歴史に触れることができます。