オーネット・コールマン入門:フリージャズ革命の歴史と代表作アナログ盤の魅力解説

オーネット・コールマンとは

オーネット・コールマン(Ornette Coleman、1930年3月9日 - 2015年6月11日)は、アメリカのジャズ・サクソフォーン奏者、作曲家であり、フリージャズの先駆者として知られています。彼の演奏と作曲は従来のジャズの枠を超え、その革新的なアプローチはジャズの歴史において革命的な意味を持ちました。コールマンは伝統的な和声や拍子の制約から解放された即興演奏を推進し、多くのミュージシャンに影響を与えました。

オーネット・コールマンの音楽的特徴

コールマンの音楽は「ハーモリーの自由化」と「リズムの自由度の拡大」を特徴とし、これが後に「フリージャズ(Free Jazz)」と呼ばれるスタイルの基礎となりました。彼は単なるメロディックな演奏だけでなく、音の色彩や緊張感を活かした表現を追求し、その柔軟な形式はジャズの即興性を新たな次元へと引き上げました。

オーネット自身は「ハーモニックな構造を排除し、即興演奏をもっと自由に」という理念のもと演奏し、その結果、一般的なジャズ理論からは異端視されましたが、結果的にジャズの枠組みを大きく押し広げることになりました。

代表的なレコード作品とその解説

ここからはオーネット・コールマンの代表的なレコード作品に焦点を当て、それぞれの音楽的意義や特徴について解説します。特にリリース当時のレコード盤情報を優先して紹介します。

1. 「The Shape of Jazz to Come」(1959年、Atlantic Records)

このアルバムはオーネット・コールマンの最も有名かつ影響力のある作品の一つであり、フリージャズの黎明期を象徴しています。AtlanticレーベルからリリースされたこのLPは、ジャズ界に大きな衝撃を与えました。

  • レコード情報:Atlantic 1318(1959年オリジナルLP)
  • 編成:オーネット・コールマン(アルト・サックス)、ドン・チェリー(コルネット)、チャーリー・ヘイデン(ベース)、ビリー・ヒギンズ(ドラムス)

タイトルの通り、「The Shape of Jazz to Come(ジャズの未来の形)」は、伝統に縛られない新しいジャズの形態を提示しました。特に、和声の従来制約にとらわれず、メンバーが自由に交流し即興を進めるスタイルが前面に出ています。例えば、A面1曲目の「Lonely Woman」は、その哀愁と独特のリズム感覚で広く知られています。

2. 「Free Jazz: A Collective Improvisation」(1961年、Atlantic Records)

「Free Jazz」はオーネット・コールマンが自己の音楽哲学を強烈に表現した作品です。2枚組LP(Atlantic 1388)で、同時に2つのカルテットが同時に演奏するという大胆な構成が特徴的です。

  • レコード情報:Atlantic 1388(1961年オリジナル2LP)
  • 編成:オーネット・コールマン(アルト・サックス)、ドン・チェリー(コルネット)、チャーリー・ヘイデン(ベース)、ビリー・ヒギンズ(ドラムス)と、エドリー・ジャクソン(トランペット)、ドン・マーレイ(アルト・サックス)、スコット・ラファロ(ベース)、ビリー・ヒギンズの弟エド・ブラックウェル(ドラムス)

LPのA面とB面に別々のカルテットが同時進行の即興演奏を行い、2枚のスピーカーから流れる複雑かつ斬新なサウンドが聴き手を圧倒します。この録音はフリージャズの名称の由来ともなり、当時批評家やファンから賛否両論を巻き起こしましたが、現代ジャズの指標的な録音とされています。

3. 「This Is Our Music」(1961年、Atlantic Records)

同じくAtlanticからリリースされた「This Is Our Music(我々の音楽だ)」は、「The Shape of Jazz to Come」と「Free Jazz」の間を埋める重要な作品です。すでにフリージャズのエッセンスが洗練され、より多彩な音楽性が展開されています。

  • レコード情報:Atlantic 1414(1961年オリジナルLP)
  • 編成:オーネット・コールマン(アルト・サックス)、ドン・チェリー(コルネット)、チャーリー・ヘイデン(ベース)、ビリー・ヒギンズ(ドラムス)

タイトル曲「This Is Our Music」は、アルスムーズでありながらも緊張感のある演奏が印象的です。また、曲構成の自由さが一層深まり、聴き手はリズムやメロディの境界を超えた深い世界へと誘われます。ジャケットもシンプルでありながらそのタイトルが示す意志の強さが感じられる名盤です。

4. 「Ornette!」(1962年、Atlantic Records)

「Ornette!」はAtlantic時代の最後の作品の一つで、オーネット・コールマンがさらなる音楽的進化を試みたアルバムです。

  • レコード情報:Atlantic 1435(1962年オリジナルLP)
  • 編成:オーネット・コールマン(アルト・サックス)、ドン・チェリー(コルネット)、チャーリー・ヘイデン(ベース)、ビリー・ヒギンズ(ドラムス)

このアルバムでは、オーネットの個性的な音色がさらに研ぎ澄まされ、独特なフレージングが随所に現れます。全体的に切迫感がありながらも自由度高く即興が繰り広げられ、伝統的なジャズとは一線を画す自由さを感じられます。

オーネット・コールマンのレコードの価値と現代での評価

オーネット・コールマンのこれらのレコードは発売当時、既存のジャズの枠を超える挑戦的な作品として物議を醸しました。しかしながら、現在ではジャズの歴史における革命的な芸術作品として高く評価されており、オリジナルのアナログ盤はジャズ・コレクターの間で非常に価値の高いアイテムとなっています。

特にAtlanticレーベルからの初期のプレスは、音質も優れており、ジャズファンにとっては歴史的なリスニング体験を提供します。また、ジャケットデザインや盤面の質感にも時代の風格が感じられ、単なる音楽ソースとしてだけでなく、コレクションとしての魅力も持ち合わせています。

まとめ

オーネット・コールマンはフリージャズの先駆者として、その革新的な演奏と作曲でジャズの未来を切り開きました。彼の代表作である「The Shape of Jazz to Come」、「Free Jazz」、「This Is Our Music」、「Ornette!」は、いずれもアナログレコードとしての歴史的価値と音楽的革新性を兼ね備えています。

これらのLP盤を手に取り、当時の音響機器で聴いてみることで、当時のジャズシーンを体感できるだけでなく、コールマンの音楽哲学や表現の豊かさをより深く理解することができるでしょう。もしジャズの歴史やフリージャズに興味を持つなら、彼のこれらのレコードは是非ともコレクションに加えてほしい逸品です。