膨張管とは?役割と膨張タンクとの関係をわかりやすく解説|温水・蒸気設備の基本知識
膨張管とは
膨張管(ぼうちょうかん)とは、温水や蒸気の温度上昇によって体積が膨張した水を、膨張タンクへ送り出すための配管のことです。
空調や給湯、ボイラーなどの密閉系システムでは、水が加熱されると膨張します。このとき、逃げ場のない水が配管内で圧力を上昇させると、機器の破損や漏水につながるおそれがあります。
そこで、膨張管を通じて膨張タンクに膨張水を逃がすことで、圧力を吸収・緩和し、安全に運転を続けることができます。
膨張管の役割
1. 圧力調整
密閉式の温水暖房や冷温水システムでは、加熱によって水の体積が増加します。
膨張管はその膨張分の水を圧力吸収装置(膨張タンク)へ導く通路の役割を果たします。
これにより、システム全体の圧力が一定に保たれ、安全弁の過剰作動や配管の破損を防止します。
2. 機器の保護
もし膨張管や膨張タンクがない状態で水が膨張すると、閉じた配管系では圧力が急上昇し、
・配管継手の破損
・バルブやポンプの損傷
・漏水や異音の発生
などのトラブルを引き起こします。
膨張管と膨張タンクの組み合わせによって、設備機器を長期的に保護することができます。
膨張タンクとの関係
膨張管と膨張タンクは、常にセットで機能します。
- 膨張管:膨張した水を逃がすための「通り道」
- 膨張タンク:逃がされた膨張水を一時的に貯め、圧力を吸収する「受け皿」
つまり、膨張管がなければ水はタンクに届かず、タンクがなければ逃げ場がなくなるため、どちらも欠かせません。
膨張タンクの種類
膨張管がつながる膨張タンクには、開放式と密閉式の2種類があります。
1. 開放式膨張タンク
配管系統の最も高い位置に設置され、大気に開放された構造です。
圧力がかかりにくく、構造がシンプルで保守も容易ですが、
蒸発や酸素混入による腐食リスクがあるため、近年ではあまり採用されません。
2. 密閉式膨張タンク
内部が**ブラダー(ゴム袋)やダイヤフラム(隔膜)**で仕切られており、水と空気が直接触れない構造です。
腐食を防ぎ衛生的で、設置場所の自由度も高く、現代のビル設備やボイラーシステムで主流となっています。
密閉式膨張タンクは、膨張管を通じて水を受け取り、内部の空気室を圧縮することで圧力を吸収します。
膨張管の設計・設置ポイント
- 配管径の設定
膨張量に応じた適切な管径を確保します。一般的にはできるだけ短く・太く・まっすぐが理想です。 - 取付位置
膨張タンクとの接続は、**配管系の低圧側(ポンプ吸込み側)**に設置するのが基本です。 - 逆止弁の禁止
膨張水がスムーズにタンクへ移動できるよう、膨張管途中には逆止弁やバルブを設けないのが原則です。 - 保温・保護
温水を扱うため、配管の保温や外部損傷防止も重要です。
膨張管が使用される主な設備
- 冷温水空調システム(チラー・AHU系統)
- 給湯設備(ボイラー・温水タンク)
- 床暖房・融雪システム
- 各種密閉循環システム
これらの設備では、膨張管がシステム圧力の安定化と機器保護の要となっています。
まとめ
膨張管とは、温度上昇による水の膨張を安全に逃がし、圧力を安定化させるための重要な配管です。
膨張管は単独で機能せず、膨張タンクと一体で初めて圧力制御が成立します。
特に密閉式膨張タンクは、現代のビル空調や給湯設備で標準的に採用されており、
膨張管の正しい設計・施工・メンテナンスが、設備の長寿命化と安全運転を支えています。


