「ハーブ・エリスの名盤解説とオリジナルレコードの価値|ジャズギター黄金期の至宝」
ハーブ・エリスとは?ギター・ジャズの黄金期を彩る名手
ハーブ・エリスは、ジャズギターの歴史において欠かすことのできない存在です。1921年にアメリカで生まれ、1940年代から活躍を始めた彼は、その卓越したテクニックと独特のスウィング感で多くのジャズファンを魅了しました。特に、エリスはカウント・ベイシー楽団やオスカー・ピーターソン・トリオでの活動を通して、その名声を不動のものとしました。
本稿では、ハーブ・エリスの代表的な名盤について、当時のオリジナル・レコードを中心に、ディスクの価値や内容、そして彼の音楽的特徴に焦点を当てて解説していきます。
名盤解説:Herb Ellis「Herb Ellis Trio」(1953, Norgran MG N-1030)
このアルバムは、ハーブ・エリスのピアノレス・トリオ編成による初期の代表作です。ノーグラン(Norgran)レーベルからリリースされ、ジャズギターとベース、ドラムのシンプルながら凝縮されたアンサンブルが楽しめます。
- レコードの特徴:初期プレスではモノラル盤でブラック・レーベル。ジャケットのデザインもクラシックなN-1030シリーズの典型で、コレクター間で人気が高い。
- 音楽的見どころ:「I'll Remember April」や「That Old Devil Moon」などのスタンダードを、ハーブ・エリスの流麗かつきらびやかなギター・トーンで自在に展開。特にエリスのシングルノートのラインやブロックコードは後の多くのジャズギター奏者に大きな影響を与えた。
- 入手の難しさ:1950年代初期のノーグランのオリジナルプレスは流通量が極めて少なく、状態の良い盤はヴィンテージ市場で高値で取引されている。
オスカー・ピーターソン・トリオ参加作のレコード群
1950年代におけるハーブ・エリスのキャリアの中で不可欠なのが、オスカー・ピーターソン・トリオのメンバーとしてのレコーディングです。エリスのギターはこのトリオのサウンドに柔らかくもエネルギッシュな彩りを加え、その名盤群はジャズ・レコードコレクターの間で絶大な人気を誇ります。
- 「Night Train」(1955, Verve MG V-8223)
オスカー・ピーターソン・トリオの代表作として知られ、ハーブ・エリスの味わい深いギターが随所に光ります。ヴァーヴ・レコードのモノラル・オリジナル盤は特に音質が優れており、LPの厚みのあるジャケットや内袋も当時のまま保存されたものが珍重されています。
- 「The Trio」(1954, Verve MG V-8268)
この作品もエリス在籍時のトリオ録音で、ギターとピアノ、ベース、ドラムのバランスが絶妙。オリジナルのグリーン・ラベルのヴァーヴ盤はヴィンテージ市場で高人気です。特に「Tricrotism」などの曲でのエリスの流れるようなソロは必聴。
エリスのソロ名盤:Herb Ellis「Nothing But the Blues」(1958, Verve V-8375)
ハーブ・エリスのソロ・アルバムとしてファンから高く評価されているのがこの作品です。ブルースを基調としたシンプルながら深みのある楽曲群を、エリスが自らのギタースタイルで描き出しています。
- レコード仕様:ヴァーヴのオリジナル・プレスは深い溝でカッティングされており、重厚なサウンドが特徴。ジャケットのデザインは黒を基調にしたシックなもの。
- 楽曲の特徴:「Cherry Red」や「Blues for Jim」など、ブルースの醍醐味を存分に味わえるトラックが並ぶ。エリスのコードワークとシングルノートが見事に融合し、ジャズブルースの魅力が詰まっている。
- レコード市場での価値:良好なコンディションのオリジナル盤は中古レコード市場で高値で取引されることが多く、ヴィンテージギター盤コレクターにとっては見逃せないアイテム。
ハーブ・エリスのレコード価値とコレクションのポイント
ハーブ・エリスのレコードを集める際には、以下のポイントに注意すると良いでしょう。
- オリジナルプレスの識別:1950年代のノーグランやヴァーヴ・レコードはマトリクス番号やレーベルの色・ロゴの違いでプレス年が判別できるため、鑑定の要素となる。
- コンディション:ジャケットの状態、盤のスクラッチの有無が価格に大きく影響。特にジャズのヴィンテージレコードでは音質の良さを保つためにVG++以上の状態が望ましい。
- レア盤:エリスの初期ソロ作やノーグランの少量プレス作品は希少で高騰傾向にある。購入時には信頼できる専門店やオークションの落札実績を参考にするとよい。
まとめ:レコードで味わうハーブ・エリスの音楽の魅力
ハーブ・エリスが残したジャズギターの名盤は、レコードで聴くことで当時の空気感や演奏者の息遣いがよりリアルに伝わってきます。特にノーグランやヴァーヴのオリジナル盤は、録音技術の進歩が限定的だった1950年代のジャズレコードの魅力を最大限に引き出しており、コレクターの間で非常に高く評価されています。
彼の繊細かつ力強いギターワークは、現代のギタリストにも大きな影響を与え続けています。レコードという「物としてのメディア」を通して、ハーブ・エリスの豊かな音楽世界に触れてみることは、ジャズ愛好家にとってかけがえのない体験となるでしょう。


