David MunrowとEarly Music Consort of Londonの名盤LPで味わう古楽復興の真髄
David MunrowとEarly Music Consort of London:名盤レコードの世界
1970年代に活躍した音楽家デイヴィッド・マンロー(David Munrow)は、中世からルネサンスにかけての古楽(Early Music)復興の先駆者として知られています。彼の主宰したアンサンブル、Early Music Consort of Londonは、当時としては画期的な古楽の演奏を実現し、その録音は名盤として高く評価されています。今回のコラムでは、David MunrowとEarly Music Consort of Londonの代表的なレコード作品を中心に、その魅力と意義を深く掘り下げていきます。
David Munrowとは?その生涯と音楽観
デイヴィッド・マンローは1942年にロンドンで生まれました。オックスフォード大学で音楽を学び、古楽器の演奏家としての道を歩み始めます。彼の最大の特徴は、単に曲を演奏するだけでなく、古楽の歴史的背景や当時の演奏習慣を精査し、可能な限り当時の音を再現しようとした点にあります。彼は多くの古楽器を操り、単独でも複数の楽器を録音するなど、その卓越した技術は古楽界に新風を巻き起こしました。
1970年代初頭にEarly Music Consort of Londonを結成し、古楽の豊かな音世界をレコードに収めることに力を注ぎました。その活動は単なる考古学的再現にとどまらず、生き生きとした演奏で聴衆に感動を与え、多くの名盤が制作されました。
Early Music Consort of Londonの特徴
Early Music Consort of Londonは、マンローを中心に多様な古楽器奏者が集まり、様々な時代の古楽を再現したアンサンブルです。使用される楽器は、中世の古いリコーダーやヴィオラ・ダ・ガンバ、ルネサンスのガンバやラウタなど多岐にわたります。特に人工的に再現された琴やルネサンスの古楽器が用いられたことで、当時の演奏状態に非常に近い音を出すことができました。
アンサンブルのもう一つの特徴は、歴史的な文献に基づき、単なる演奏技術の再現にとどまらず、当時の演奏形態や楽曲構成にも徹底的にこだわったことです。これにより、彼らの録音は単なる録音物ではなく、歴史的なドキュメントとしても価値が高いものとなりました。
名盤レコード紹介
ここからは、Early Music Consort of Londonの名盤をいくつかピックアップし、特徴や収録内容のポイントを解説していきます。これらの作品は当時のLPレコードでリリースされ、多くの古楽ファンに愛されてきました。
1. Music from the Age of Chivalry (1973年、EMI)
このアルバムは、マンローの代表作として最もよく知られています。中世ヨーロッパの宮廷音楽、騎士の時代をテーマに、リコーダーやドローンの効いたハープ、ガンバなどを中心に収録しています。
- 収録曲目例:ジョン・ダンスタブル、ビトリュヴィウス、匿名作品など
- 音質:当時のEMIの技術によるクリアな録音で、古楽器の繊細な音色がよく捉えられている。
- レコードジャケット:中世の写本風のイラストが配された美しいデザインが印象的。
このレコードは当時、LPでの古楽愛好家の必携品となり、マンローの楽器操作と考証がいかに革新的であったかをひと目で理解させる作品です。
2. The Art of the Netherlands (1976年、HMV)
15〜16世紀のネーデルラント地方の音楽を特集したもので、ルネサンス期の複雑な多声音楽が充実しています。マンローが指揮するEarly Music Consortが、多彩なリコーダーやヴィオラ・ダ・ガンバを駆使して優雅な響きを醸し出しています。
- 収録曲目例:ジョスカン・デ・プレ、オケゲム、ディ・ルフェールなど
- 演奏の特徴:複雑な対位法が美しく浮かび上がる繊細で緻密な演奏。
- レコードの価値:当時のルネサンス音楽のLPとして希少であり、今なおコレクターに高く評価。
この作品は古楽専門レコード店で探す価値があり、アナログレコードならではの温かみのある音質が楽しめます。
3. The Triumphs of Oriana (1972年、EMI)
エリザベス朝イングランド時代のマドリガル集。女王エリザベス1世を讃える複数の作曲家の作品を収録しています。Early Music Consortならではの情感あふれる声楽と器楽が融合した演奏で、史料的価値も高い作品です。
- 収録曲目例:トマス・モーリー、ウィリアム・バード、ジョン・ウィルソンなど
- 特徴:肉声の明瞭さと器楽の繊細なバランスに優れ、古楽アンサンブルの魅力を最大限に引き出している。
- ジャケット:16世紀の肖像画をモチーフにした高級感あるデザイン。
LPで入手すると、当時の録音の空気感、ライブ感がよりリアルに味わえ、デジタル録音では得にくい迫力があります。
マンローとEarly Music Consortのレコードの特徴と価値
当時の古楽録音はまだまだマイナーだった中、David MunrowとEarly Music Consort of Londonは、EMIやHMVといった大手レコードメーカーを通じて、古楽を世界に普及させる重要な役割を果たしました。彼らのLPは、音質の良さはもちろんのこと、音楽の学問的裏付けとパフォーマンスの芸術性が高く評価されています。
さらに、録音に用いられた古楽器のリアルな音色は、アナログレコードならではの温かみと自然な響きで再現されており、古楽ファンや音楽史研究者にとっても貴重な資料とされています。近年のCDやストリーミングでは得難い「現場感」がLPに封じ込められているのです。
また、当時のLPジャケットは研究資料や古文書、絵画を大胆に取り入れ、視覚的にも古楽の世界観を演出しています。所有する喜びがある点でも、コレクター版として高く価値づけられている理由です。
レコード入手のポイントと注意点
David MunrowとEarly Music Consortのレコードは、1970年代のオリジナルプレスが特に価値が高く、オークションや中古レコードショップ、専門の古楽レコード取扱店で探すのがおすすめです。以下のポイントを押さえましょう。
- 盤質重視:アナログ盤は盤面の傷や盤反りによる音質劣化が起こりやすいため、盤面の状態をしっかり確認。
- オリジナルプレスの確認:オリジナルのEMIやHMVプレスが音質的にも価値的にも優れている。
- ジャケット状態:美しいジャケットは中古市場では希少であり、古楽ファンのコレクションとして重要。
- 付帯資料の有無:ライナーノーツや英文ブックレットが付属している場合、演奏解説や楽曲解釈のヒントが得られる。
まとめ:David MunrowとEarly Music Consortのレコードは古楽復興の証
David MunrowはEarly Music Consort of Londonを通じて、中世からルネサンスにかけての音楽文化を現代に蘇らせる偉業を成し遂げました。彼らのレコード作品は単なる音楽録音を超え、歴史的探究、学問的研究、アート作品としての側面も持っています。
LPレコードという媒体で残された彼らの古楽演奏は、現代のデジタルオーディオが提供しにくい温度感と空気感を音楽にもたらし、耳を傾ける者に当時の音楽体験の一端を伝えてくれます。古楽ファン、音楽史愛好家にとって、David MunrowとEarly Music Consort of Londonのレコードは今なお「名盤」として不朽の価値を持っています。
これから古楽を深く探求したい方や、音楽の歴史を五感で感じたい方にとって、彼らのLPは最高の入り口となるでしょう。ぜひ今一度、レコードショップやオークションで掘り出し物を見つけ、当時の古楽の息吹を感じてみてください。


