Supertrampをアナログで聴く:Crime of the Century/Breakfast in America オリジナル盤ガイド&選び方

はじめに:Supertramp と「名盤」の位置づけ

イギリス出身のロック・バンド、Supertramp(スーパートランプ)は、リック・デイヴィス(Rick Davies)とロジャー・ホジソン(Roger Hodgson)を中心に1970年代に国際的な成功を収めました。本稿では、特にレコード(アナログLP)というフォーマットに焦点を当て、彼らの代表作を盤や音質、パッケージ、マニア視点の聴きどころまで深掘りします。特に「Crime of the Century」(1974)と「Breakfast in America」(1979)を中心に、オリジナル盤の特徴やヴァリアント、当時の制作背景、レコード収集のポイントを解説します。

Crime of the Century(1974) — アルバムの背景とレコードとしての魅力

「Crime of the Century」はSupertrampの商業的ブレイク作であり、バンドのサウンドが確立された重要作です。リリース年は1974年、A&Mレコードから発表され、シンセサイザーとピアノ、ホーン類を効果的に配したドラマチックなアレンジが特徴です。楽曲では「School」「Bloody Well Right」「Dreamer」などが代表曲として知られています。

レコーディングとプロダクション(レコード視点)

音作りは当時のアナログ・スタジオ機材で行われ、ダイナミックレンジの広さやアナログ特有の温かさを残したミックスがLPでの再生に適しています。初期プレスはマスターから直接カッティングされたため、高域の伸びと低域の厚みがしっかり感じられることが多いです。A&Mのオリジナル盤はカッティングやプレスの品質差が存在するため、盤ごとの音色差が大きく、コレクターにとっては個体差を楽しむ対象になります。

  • ジャケット:オリジナルのアートワークは印象的で、厚手の紙に印刷されたシングル・スリーブが多い。内袋(インナー・スリーブ)は白紙または印刷入りのものが確認される。
  • 音質の特徴:初期プレスは中低域のボトムがしっかりしており、ピアノやローズの余韻が豊かに出る。ドラムの質感やホーンの輪郭も良好。
  • 注意点:経年で溝の摩耗やプレス不良(ポップノイズ、スクラッチ)が発生しやすいため、保存状態を確認すること。

Breakfast in America(1979)— 商業的成功とレコードでの音像

「Breakfast in America」は1979年発表のバンド最大のヒット作で、世界的に高いセールスを記録しました。収録曲「The Logical Song」「Goodbye Stranger」「Take the Long Way Home」などはFMラジオやシングル・カットでも大ヒットしました。LPとしての魅力は、ポップでありながら演奏の細部がよく聞き取れるミックスと、ヴォーカルの明瞭さにあります。

オリジナル盤の見どころ

オリジナルのA&M盤は、当時のマスターテープからダイレクトにカッティングされたため、OG盤(original pressing)ならではの抜けの良さとダイナミクスを楽しめます。ジャケットは表面にコラージュ的な朝食を模したデザインが施され、内側に歌詞カードやクレジットが付く仕様のものが多いです。

  • プレスのヴァリエーション:国(米国・英国・日本など)やプレス時期によって重さやマトリクス表記(ランアウト溝の刻印)が異なる。特に米国と英国のプレスは音色傾向が異なることがある。
  • シングル解像度:シングル・カット曲のプレスはラジオ向けのEQでマスタリングされている場合があり、LP収録版とは微妙に音像が違う。
  • 保存性:1970年代後半のプレスはビニールの品質が安定しているケースが多いが、保管環境によりチリノイズや帯電が生じる。

アナログならではの聴きどころと再生チェックポイント

レコードでSupertrampを聴く際のポイントをまとめます。特にこのバンドはピアノ、オルガン、メロトロン、サックスの音色が重要なので、セットアップ次第で印象が大きく変わります。

  • ターンテーブルの針圧とカートリッジ:適切な針圧と良好なMC/MMカートリッジを使うと高域の伸びと低域のアタック感が両立する。古いシェルやアームのガタつきは歪みやチャンネルバランス崩れの原因になる。
  • アンプとスピーカーの帯域特性:中高域が前に出るセットアップだとボーカルやピアノの粒立ちが際立つ。低域過多だとアレンジの繊細さが埋もれることがある。
  • 盤の状態確認:スクラッチや磨耗はポップノイズやダイナミクス低下を招く。視覚的に大きな傷がある場合は試聴前に避ける。
  • プレス違いの比較:同一タイトルの米盤・英盤・日本盤を比較すると、マスタリングやEQの差が分かる。コレクターはこれを楽しみとして選別する。

コレクティングのコツ:オリジナル盤を見分ける方法

オリジナル盤(初期プレス)を探す際の一般的なチェックポイントを挙げます。個別のマトリクス刻印やカタログ番号は盤ごとに異なるため、購入前に写真や出品情報で確認することが重要です。

  • ジャケットの印刷クオリティ:初期リリースはカラーの発色や見開きの仕上げがしっかりしていることが多い。
  • インナー・スリーブとライナーノート:オリジナル盤はオリジナル仕様のインナーや歌詞カードが付く場合が多い。欠損要素は価値に影響する。
  • ランアウト(マトリクス)刻印:盤周辺の刻印にはプレス工場やカッティング情報が記されている。これを複数の信頼できる情報源と照合する。
  • ラベル表記:A&Mのロゴやカタログ番号のフォント、ラベル色などは年代ごとに変化するので観察ポイント。

保存とメンテナンス:アナログ盤を長持ちさせるために

良好な音を維持するための基本ケアをまとめます。特に70〜80年代のプレスは適切に管理すれば長く楽しめます。

  • 保管環境:直射日光や高温多湿を避け、垂直に立てて保管する。
  • クリーニング:専用のブラシやレコードクリーナーを使用。深い汚れはレコード洗浄機でのウェットクリーニングが有効。
  • ハンドリング:盤縁を持ち、指紋や油分が溝に付かないようにする。

まとめ:名盤は盤で聴く価値がある

Supertrampの「Crime of the Century」「Breakfast in America」は共に楽曲の完成度が高く、アナログLPというフォーマットで聴くと楽器の余韻やミックスの空間表現が生き生きと伝わります。オリジナル盤はマスタリングやプレスの違いが音に直接表れるため、レコード収集や視聴を通じて新たな発見が得られるでしょう。レコードを選ぶ際は、盤の状態、ジャケットの保存、マトリクス情報などをチェックし、信頼できる出品者や専門店から購入することをおすすめします。

参考文献

Supertramp - Wikipedia
Crime of the Century - Wikipedia
Breakfast in America - Wikipedia
Supertramp | AllMusic
Discogs(各盤のマトリクスやプレス情報の参照に便利)

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery