連結送水管とは?仕組み・設置基準・点検方法までわかる完全ガイド
連結送水管とは?建物の消防活動を支える重要設備
連結送水管(れんけつそうすいかん)とは、火災発生時に消防隊が地上から建物内部の消火栓やスプリンクラーへ送水できるように設けられた配管設備のことです。
高層ビルや大規模建築物では、消防車の放水だけでは上層階への水圧が届かないため、この「連結送水管」が消防隊と建物設備をつなぐ命綱として機能します。
消防法施行令(第31条)に基づき、一定規模以上の建築物には設置が義務付けられており、消防活動の効率化と安全確保に欠かせない設備です。
連結送水管の基本構造
連結送水管は、主に以下の3つの部分で構成されています。
- 送水口(屋外側)
- 建物の外壁や駐車場付近に設置され、消防車のホースを接続する部分です。
- 通常「赤いボックス」や「ステンレス製パネル」に「連結送水管」と表示されています。
- 口径は**65A(2.5インチ)**が一般的で、2口または3口設けられています。
- 配管(屋内側)
- 送水口と屋内の放水設備(屋内消火栓・スプリンクラー)をつなぐ配管です。
- 耐圧性能が高い鋼管(STPG・SGPなど)が用いられます。
- 消防ポンプ車からの圧力水に耐えられるよう、耐圧試験に適合していなければなりません。
- 放水口(屋内側)
- 消防隊が屋内でホースを接続して放水するための接続口です。
- 廊下・階段・エレベーターホール付近に配置され、すぐに利用できる位置に設置されます。
このように、連結送水管は「屋外の送水口」→「配管」→「屋内の放水口」で構成され、**地上の消防ポンプ車から上階へ送水する“橋渡し”**を担っています。
連結送水管の設置義務と対象建築物
消防法および消防庁告示により、以下のような建物には連結送水管の設置が求められます。
- 高さ31mを超える高層建築物
- 延べ面積が6,000㎡を超える大規模建築物
- 特定防火対象物(病院、劇場、ホテル、商業施設など)で一定規模を超えるもの
- 地下街、地下駅舎、地下駐車場などの地下構造物
これらの施設では、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備と連動して運用されることが多く、火災時の初期対応と消防隊活動を両立させる仕組みになっています。
連結送水管の仕組みと作動原理
火災が発生した際、消防隊は建物外の送水口にホースを接続し、消防ポンプ車で加圧送水します。
水は連結送水管を通って屋内の放水口やスプリンクラーヘッドに供給され、消火活動が可能になります。
作動の流れ
- 火災発生
- 消防隊が建物外部の送水口にホースを接続
- 消防ポンプ車から水を高圧で送水
- 連結送水管を通じて屋内の放水口や消火栓に到達
- 消防隊が屋内で放水活動を実施
このように、連結送水管は建物の内部配管を消防隊が利用できるようにする装置であり、外部の水圧を内部設備に連結する役割を果たしています。
連結送水管の種類
連結送水管には用途や接続先によっていくつかの種類があります。
| 種類 | 接続先 | 主な設置対象 |
|---|---|---|
| 屋内消火栓用連結送水管 | 屋内消火栓設備 | 高層オフィスビル・商業施設など |
| スプリンクラー用連結送水管 | スプリンクラー設備 | 大型店舗・病院・ホテルなど |
| 泡消火設備用連結送水管 | 泡混合装置付きの消火設備 | 化学工場・危険物施設など |
| 兼用型連結送水管 | 消火栓+スプリンクラー | 総合防火システムを備える大型建築物 |
建物の用途や防火区画構成により、これらを単独または併用して設置します。
点検と維持管理の重要性
年2回以上の点検が義務
消防法により、連結送水管は年2回以上の定期点検が義務付けられています。
点検は専門の消防設備士(甲種1類・2類など)が実施し、次の項目を確認します。
- 送水口・放水口のキャップ・パッキン・弁の劣化
- 配管の腐食・漏水・閉塞の有無
- 耐圧試験による水密性の確認(5年に1回以上)
- 表示・識別プレートの有無
- 放水試験による圧力・流量の測定
よくある不具合例
- 送水口のキャップ紛失・異物混入
- バルブ閉鎖忘れによる送水不能
- 配管内の錆び・スケール詰まり
- 老朽化による漏水・圧力不足
特に、建物改修や配管更新の際に送水経路が変更された場合は、図面との整合性確認が必須です。
連結送水管の表示と識別
消防活動時に迷わないよう、送水口の表示には以下のルールがあります。
- **「連結送水管」または「スプリンクラー用連結送水管」**など、用途を明記
- 文字の高さは25mm以上
- 赤色地に白文字で明瞭に表示
- 送水口の近くに階層・接続系統の案内板を設置することも推奨
また、送水口には防塵キャップが取り付けられており、使用時には簡単に取り外せる構造になっています。
連結送水管の更新・改修ポイント
老朽化や増築により、既存配管の耐圧不足や系統変更が必要になる場合があります。
その際には、以下の点を考慮します。
- JIS G 3452(SGP)またはJIS G 3454(STPG)規格に適合した配管を使用
- 継手部にはねじ込み・溶接・フランジ接合を採用
- 新設時は消防署への設置届出・竣工検査が必要
- 改修後は必ず耐圧・漏水試験を実施
特に高層ビルでは、水圧が1MPa(約10kgf/cm²)を超えるため、高耐圧配管や防振継手の採用が推奨されます。
まとめ:連結送水管は消防と建物をつなぐ命綱
連結送水管は、平常時には目立たない存在ですが、火災時には消防活動を迅速かつ安全に行うための要となる設備です。
設置基準を正しく理解し、定期点検・耐圧試験を怠らないことが、建物全体の防災力を高める第一歩となります。
今後はIoT技術を活用した遠隔監視型の送水管監視システムなども普及しつつあり、防火設備のデジタル化が進んでいます。
建築・設備・防災の分野すべてが協働して、この“命をつなぐ配管”を守り続けることが求められています。
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