E.S. Posthumus徹底解説:Nara・Pompeii・Ariseの音楽性からアナログ盤コレクター向け真贋チェックまで
序章:E.S. Posthumusとは — 劇的で映画的な音楽をつむぐ双子の作曲家
E.S. Posthumus(E.S.ポストヒューマス)は、フランツ(Franz)とヘルムート(Helmut)・フォンリヒテン兄弟を中心に活動したアメリカの音楽制作プロジェクトで、オーケストラ、合唱、民族音楽的な要素、そしてエレクトロニクスを融合させた“シネマティック・ミュージック”で知られます。彼らの楽曲は映画予告編、テレビ番組、スポーツ中継のオープニングやCMなどで広く使われ、一般リスナーにも印象深いメロディとドラマ性で支持されました。
音楽的特徴と作風の深掘り
E.S. Posthumusの楽曲は以下の要素で特徴づけられます。
- 主題(テーマ)の強さ:シンプルで耳に残るモチーフを反復し、徐々に楽器や和声を増やして盛り上げる構成。
- ハイブリッド編成:生オーケストラや合唱の温かみを、リズムセクションやシンセの現代的テクスチャーと組み合わせる。
- ワールドミュージックの引用:民族打楽器や異国情緒を匂わせるスケール、ボーカル的なフレーズ(言語を伴わない声)を用いることが多い。
- トレーラー音楽的演出:短時間でピークを作る構成、転調やダイナミクスの劇的変化。
これらの要素が、映画やドラマの“次に何が起きるのか”という期待感を生み出し、映像作品と極めて相性が良いサウンドを作っています。
代表曲の詳細解説(Nara / Pompeii / Ariseを中心に)
Nara — 壮大なオープニングと“覚えやすさ”
「Nara」はE.S. Posthumusを象徴する一曲で、特にテレビドラマのテーマ曲として広く知られるようになりました。曲はシンプルな旋律モチーフの反復から始まり、打楽器と低音群がリズムを刻みつつ、ストリングスとブラス、そして子音節的なボーカル(言語を用いない歌声)が重なっていきます。構成的には“イントロ→ビルドアップ→クライマックス”の典型を踏襲し、特に中盤以降の和声の拡張(転調や和音密度の増加)によって聴覚的なカタルシスを生みます。
収録メディア(特にレコード)での楽しみ方としては、アナログならではの低域の“力感”とホールトーンの余韻が生々しく伝わり、トレーラー的な迫力をよりダイレクトに体感できます。初期のプレスやプロモ盤が流通することもあるため、盤質やマスターに注目すると違いが感じられます。
Pompeii — リズム主体のドラマ性
「Pompeii」はリズムと展開の劇的な使い方が印象的な曲です。打楽器の多層的な配置が前面に出て、そこにブラスやストリングスが断続的にフレーズを差し込むような構成が取られます。聴きどころは“間の取り方”と“ダイナミクスの制御”で、静と動の対比が強い点が映画音楽的精神を体現しています。
アナログの再生では、パーカッションのアタック感やスネア/太鼓の余韻がより力強く再現されるため、モニタリング環境を整えた上での試聴が推奨されます。プロモ盤や限定の12インチカットが存在する場合、DJやライブラリミュージック関係者に人気があることもあります。
Arise(あるいはアルバムのオープナー的トラック) — 序破急の構築術
オープニング曲(アルバム序盤を飾る楽曲)は、しばしばE.S. Posthumusの“世界観”を一気に提示します。ミニマルなフレーズが徐々に重なり合ってフルスコアへと広がる作りは、彼らの手法の典型です。アナログで聴くと、各パートのパンニングやリバーブの違いが明瞭になり、ミックスの“奥行き”を感じやすくなります。
レコード(アナログ)に関する情報とコレクター向けガイド
E.S. Posthumusは活動開始時期が2000年代初頭であり、当時はCDやデジタル配信が中心でした。そのため、初回から大量のビニールLPが存在したわけではなく、アナログ盤は以下のような形で市場に出てくることが多い点に注意が必要です。
- 限定プレス、再発盤、あるいは海外のインディーレーベルによる少量生産が中心で、流通量は限定的。
- TV用のプロモーション用12インチやDJ向けカットが存在することがあり、これらは通常の市販盤より希少性が高い。
- 後年の人気に伴いファンメイドや非公式のアナログ再発が出回るケースもあるため、出所(リリース情報/カタログ番号)を確認することが重要。
具体的な検索・調査手順:
- Discogsでアーティストページ→リリース一覧を確認。マスター/リリースごとにプレス国、カタログ番号、フォーマットが記載されている。
- 出品写真でレーベル面/ランアウト(刻印)を確認。正規プレスはレーベルロゴやカタログ番号、マトリクス刻印が整っている。
- シール、帯、インナースリーブの有無、ジャケット印刷の質感(光沢/マット)でオリジナルと再発を区別する手がかりになる。
- テストプレスやプロモ盤は通常マトリクスに手書きの番号や「Test Pressing」の表記がある。
盤の状態と価値を見極めるポイント
- ジャケット:端の擦れ、剥がれ、背表紙の割れなどが価格に大きく影響。シールやサインの有無も要チェック。
- 盤面:スクラッチ、磨耗、クラックル音。視認できる傷は音に出る場合が多いため写真で確認する。
- 付属品:ライナーノーツ、インナー、限定ポスター、封入カードなどの有無で市場価値は変わる。
- 盤質(マトリクス):マトリクス/ランアウトに刻印される番号やエンジニアのサインで初回盤かどうか判断できることがある。
市場価格は作品の人気、流通量、状態によって大きく変わります。E.S. Posthumusは“トレーラー音楽”というジャンル的需要があるため、シングルのプロモ盤やオリジナル初回プレスはコレクターの注目を集めやすい傾向にあります。
アナログ特有の聴取・保管・メンテナンスのアドバイス
- 再生環境:適切なアームバランスとカートリッジ、良好なフォノイコライザーを用いると低音の厚みやホール感が引き出せます。
- クリーニング:炭酸水や専用クリーナー、ブラシでの定期的なメンテナンス。静電気対策のためにアース付きのターンテーブルや帯電防止スリーブを推奨。
- 保管:直射日光や高温多湿を避け、立てて保管。ジャケット同士が摩耗しないようにインナースリーブを使用。
- 再生速度とEQ:トレーラー系の重低音が強い録音は適切にイコライジングしないとスピーカーに負担がかかる。
メディア露出とカルチャーへの影響
E.S. Posthumusの楽曲は、映画予告編やテレビ番組のオープニング、スポーツ中継の演出などで頻繁に使用され、その“ドラマを煽る”力により多くのリスナーの印象に残りました。特に「Nara」がテレビのテーマ曲として定着したことは、アナログ盤コレクションの需要を高める一因ともなっています。彼らの作風は後のトレーラー音楽やポスト・クラシカル系アーティストにも影響を与え、映画音楽とポップ/エレクトロニクスを橋渡しする重要な役割を果たしました。
最後に:レコード収集者へ向けた実践的な提言
- まずはDiscogsでリリース履歴を把握すること。写真やコメント欄に出所・状態のヒントが多くあります。
- 疑わしい再発やブート盤に注意。正規盤を求める場合はマトリクス/カタログ番号が一致するか確認する。
- プロモ盤やテストプレスは音質の良い場合が多く、コレクターズアイテムになりやすいが価格変動も大きい。
- 音楽的価値だけでなく“ジャケットのデザイン性”や“付属品の有無”も評価対象にするとコレクションが充実します。
参考文献
- E.S. Posthumus — Wikipedia
- E.S. Posthumus — Discogs
- E.S. Posthumus — AllMusic
- E.S. Posthumus — 公式サイト(アーカイブ)
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