Barbra Streisand(バーブラ・ストライサンド)代表曲徹底解説:歌唱テクニック・編曲・ライブ変遷から聴きどころまで
はじめに
Barbra Streisand(バーブラ・ストライサンド)は、ブロードウェイ/ミュージカル出身の歌手であり俳優、長年にわたりポップ/大衆音楽と映画音楽の橋渡しをしてきた稀有なアーティストです。本稿では彼女の代表曲を中心に、楽曲ごとの背景、編曲・歌唱テクニック、ライブでの解釈の変遷、そして作品がもたらした文化的影響までを深掘りして解説します。
ストライサンドの歌唱の特徴(概説)
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声質:一般にメゾソプラノに分類されるが、中音域の厚みと柔らかなトップ、確かな低音も持つ。歌詞を明瞭に伝えることに重きを置く。
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フレージングと呼吸:フレーズ内の呼吸の入れ方や語尾の処理が非常に計算されており、語感で感情を増幅させる技が得意。
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ダイナミクスとニュアンス:静かな部分から一気に爆発するようなクレッシェンド、意図的なルバート(テンポのゆらぎ)で聴き手を惹きつける。
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解釈力:歌詞の物語性を重視し、舞台的表現(ドラマ性)とポップな親しみやすさを同居させることができる。
代表曲の深掘り
People(1964 / Funny Girl)
概要:ミュージカル『Funny Girl』からの曲で、ストライサンドの初期の代表曲の一つ。作曲はJule Styne、作詞はBob Merrill。
音楽的特徴:ピアノを軸にしたシンプルな伴奏から始まり、ストリングスが徐々に拡がってクライマックスへ向かう構成。楽曲自体はバラード寄りだが、サビの「People who need people are the luckiest people…」で感情が開放される設計。
歌唱の見どころ:語尾をやや切ることで言葉の重みを保ち、サビに向けて段階的に声量と情感を積み上げる技術が顕著。人間関係の普遍性を、個人的な告白のように聴かせることで共感を呼ぶ。
Don't Rain on My Parade(1964 / Funny Girl)
概要:同じく『Funny Girl』の代表的ナンバー。劇的で視覚的な表現に適した“アクト・ナンバー”。
音楽的特徴:ブラスやリズムセクションが強く入り、寸分たがわぬテンポでの攻めが効果的。短いフレーズをテンポよく畳み掛ける場面があり、楽曲全体が“決意”を表現する造り。
歌唱の見どころ:舞台的で“よく通る”発声を用い、フレーズの切り返しや強拍の取り方でキャラクター(人物像)を明確に伝える。コンサートのオープナーとしても機能する力強さがある。
The Way We Were(1973)
概要:同名映画の主題歌。作曲:Marvin Hamlisch、作詞:Alan & Marilyn Bergman。映画の叙情性と結びついた代表曲。
音楽的特徴:ピアノとオーケストレーションを軸にした、ノスタルジア感の強いアレンジ。シンプルな和声進行の上に歌が丁寧に乗るため、歌詞の一語一語が際立つ。
歌唱の見どころ:回想や後悔を思わせる微妙なテンポの揺らぎ、そして抑制された語りかけるようなトーン。感情を爆発させるのではなく「噛み締める」ことで深い余韻を生む歌い方が特長。
Evergreen (Love Theme from A Star Is Born)(1976)
概要:映画『A Star Is Born』のラブテーマとして知られる一曲。映画の文脈の中で二人の関係性を象徴する楽曲で、広くカバーされた。
音楽的特徴:繊細なピアノ導入から、スムーズに広がる弦楽器アレンジへと移行する。和声も旋律も親密さを演出するように書かれており、歌の細かなニュアンスが映える構成。
歌唱の見どころ:ほとんど囁くように聴かせるパートから、中盤で語り口を変えて深い余情を残すまでのコントラストが見事。映画の場面と連動した語りかけるような表現力が心を打つ。
Woman in Love / Guilty(1980 前後)
概要:1980年前後の「Guilty」期は、Barry Gibb(Bee Gees)とのコラボレーションでストライサンドがポップ/AOR路線で大成功を収めた時期。代表曲「Woman in Love」(大ヒット)やタイトル曲「Guilty」はこの時期の主要曲。
音楽的特徴:シンセや洗練されたストリング・アレンジ、Gibbのコーラス・ワーク(特徴的なハーモニー)など、当時の最新ポップ・プロダクションが導入されている。リズム感、グルーヴ感を意識したアレンジが特徴。
歌唱の見どころ:ブロードウェイ的なドラマ性から一転して、よりポップで親しみやすい抑制の効いた歌い方へ。スタジオ・ワークでは細かなニュアンスとコンデンスした表現が求められ、結果的に幅広い層に響いた。
代表曲に共通するアレンジと演出のポイント
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「空間」を使う:イントロの静けさ、間(ま)を作ることで次のフレーズの重みが増す。
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クライマックスの段階的構築:一気に盛り上げるのではなく、楽器層/声量を徐々に積み上げる方法を多用。
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言葉の明瞭さ:歌詞を伝えることを第一に考えた発音・アクセントの処理。
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プロデューサー/編曲家との協業:Jule StyneやMarvin Hamlisch、Barry Gibbら多彩な協力者との相互作用によってサウンドの幅を拡げている。
ライブでの変化と再解釈
ストライサンドは同じ曲を長年にわたって歌い続け、その都度アレンジや解釈を変化させることで知られます。若い頃の劇的で勢いのある歌唱から、円熟期には内省的で落ち着いた表現へ移行することが多く、歌詞の「意味」を深掘りして別の角度から聴かせるのが得意です。また、オーケストラ編成、ピアノ伴奏、バンド編成、さらにはデジタルなプロダクションと、編成を変えることによって曲の印象を自在に変える力量があります。
名盤(入門としておすすめのアルバム)
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「The Barbra Streisand Album」(1963) — デビュー盤。歌唱の基礎とスタイルが端的に示されている。
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「Funny Girl (Original Broadway Cast Recording) / Soundtrack」(1964/1968) — ミュージカル曲の代表作群を収録。舞台的表現の原点がわかる。
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「The Way We Were」(1973) — 映画主題歌を含む時期のアルバム。映画音楽と大衆曲の交差点を体現。
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「A Star Is Born (Soundtrack)」(1976) — 「Evergreen」などの映画主題歌を収録。映画と歌の関係性の好例。
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「Guilty」(1980) — Barry Gibbとのコラボでポップ路線が開花した商業的成功作。プロダクションの刷新が体感できる。
ストライサンドの影響と評価
彼女は単に“歌が上手い”だけでなく、シンガーとしての構築力(どのように曲を語るか)に優れているため、後進の歌手やプロデューサーから高く評価されてきました。ミュージカル、映画、ポップスの橋渡しをした功績は大きく、商業的成功とともにアーティスティックな評価も得ています。
聴く際のポイント(鑑賞ガイド)
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歌詞を追う:ストライサンドは言葉で感情を積み上げる歌手なので、歌詞を読みながら聴くと新しい発見がある。
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アレンジの変化に注目:同一曲でもスタジオ録音とライブ録音で表情が大きく変わることが多い。
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間(ま)と呼吸:意図的に取られる休符や呼吸から演出意図を汲み取ると、より深く味わえる。
まとめ
Barbra Streisandの代表曲群は、楽曲の魅力自体とストライサンドの“解釈する力”によって名作化しています。ミュージカル的表現、映画音楽としての物語性、ポップスとしての普遍性──それらを一人の歌手が自在に行き来することで、曲の聴こえ方が何度でも刷新されるのが彼女の強みです。個々の楽曲に注意深く耳を傾ければ、発声やフレージング、小さな音の揺れがいかに歌の意味を変えていくかが見えてきます。
参考文献
- Barbra Streisand - Wikipedia
- People (song) - Wikipedia
- The Way We Were (song) - Wikipedia
- Evergreen (song) - Wikipedia
- Barbra Streisand - AllMusic
- Barbra Streisand Charts & Awards - Billboard
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