Cigarettes After Sex入門ガイド:サウンドの特徴・代表曲の聴きどころとおすすめの聴き方
はじめに:Cigarettes After Sexという存在
Cigarettes After Sex(シガレッツ・アフター・セックス)は、グレッグ・ゴンザレス(Greg Gonzalez)を中心に2008年に結成されたアメリカのドリーム・ポップ/シューゲイズ系バンドです。特徴的なのは、囁くようなアンビエントなボーカル、広がりのあるリバーブ、極端に抑えられたダイナミクスとミニマルな編成による「映画的な」音世界。ロマンティックで時に切実な歌詞はジェンダーや性的指向を超えてリスナーの感情に直接訴えかけ、SNSやストリーミングで大きな支持を獲得しました。
サウンドの核:ミニマリズムと空間表現
- ボーカル表現:グレッグのボーカルは低く柔らかく、しばしばステレオの中央に置かれたブレス感の強い録音。声が近いことで「密室で囁かれるような感覚」を生み出します。
- ギターとエフェクト:クリーンでリバーブ/ディレイを多用したギター。コード進行はシンプルでも残響と反復により豊かなテクスチャが生まれます。
- アレンジの寡欲さ:過剰な装飾を避け、ドラム、ベース、鍵盤も必要最小限で配置。空白(音の余白)を意図的に使うことで感情の余韻を引き立てます。
- ジャンル的背景:スロウコア、ドリームポップ、シューゲイズ、マザーリングなポップ感—Mazzy StarやCocteau Twins、Galaxie 500あたりの系譜を感じさせます。
代表曲の深掘り
Nothing's Gonna Hurt You Baby
オリジナルは2012年前後に出たEPで注目を集め、その後2017年のセルフタイトル・アルバムでも再録。穏やかなアルペジオ、反復フレーズ、そして「守りたい」という感情を静かに歌う歌詞が特徴です。テンポは非常にゆっくりで、サビと呼べる部分も抑制的。楽曲の魅力は派手さではなく「安心感」と「儚さ」の共存にあります。
Apocalypse
2017年のセルフタイトル・アルバムを象徴するバラッド。ピアノ的な和音進行と深めのリバーブ、ボーカルの微かな震えが「終末的なロマンス」を想像させるため、リスナーの想像力をかき立てます。コード進行自体はシンプルですが、テンポと音響でドラマを作る典型的な例です。
K.
短めの楽曲ながら、情感を削ぎ落とした語り口が心に残る一曲。歌詞は特定の人物への強い執着や記憶の断片を切り取るように並べ、サウンドは非常にミニマル。映画のワンシーンのように、情景が浮かぶ構成になっています。
Sweet
よりポップでメロウな側面を見せる楽曲。メロディラインが耳に残りやすく、デビュー以降の「親しみやすさ」を示す一曲です。多数の再生リストに入ることで新規リスナーの入口となりました。
Affection(およびEP収録曲群)
初期EPに収められた曲群は、後のバンド・サウンドを確立した重要な宝庫。Affectionのような曲は、静的な美学と直接的な感情表現のバランスが取れており、後のスタイルを予見させます。
アルバムごとの特徴とおすすめトラック
- Cigarettes After Sex(2017):バンドのセルフタイトル作。初期シングルやEPの集大成としての側面が強く、空気感と統一された美学が完成。おすすめ曲:Nothing's Gonna Hurt You Baby、Apocalypse、K。
- Cry(2019):プロダクションが若干ポップ寄りになり、楽器の幅も広がった印象。批評家からは「より多彩になった」という評価と「初期の密室感が薄れた」という評価の両方があり、賛否分かれる作品。おすすめ曲:Heavenly、Falling In Love(※トラック名の表記は盤によって異なる場合あり)
歌詞世界とテーマ性
Cigarettes After Sexの歌詞は日常の断片(夜、香り、キス、別れ)を切り取ったものが多く、比喩よりも具体的な情景描写で感情を直球に伝えます。そこに漂うのは、甘美さと痛みの同居。恋愛の幸福だけでなく喪失、執着、後悔などが丁寧に描かれており、リスナーは自分の記憶と重ね合わせやすいのです。
プロダクションとライブの差異
スタジオ音源は空気感重視の精密なサウンドメイクで知られますが、ライブではその空間性をどう再現するかが鍵になります。バンドはリヴァーブやマイクワーク、照明・ビジュアルでスタジオ的な空気を再現し、時に曲を延長して即興的な余韻を足すことで生の魅力を出します。ライブ映像や公演の評判を見ると、音の密度を保ちながらも臨場感が加わるため、別の楽しみ方ができます。
批評と社会的影響
批評面では、その美学に対する賛否がしばしば語られます。「単一のムードに徹していることを称賛する」意見と「表現の幅が狭い」とする意見。いずれにせよ、ストリーミング時代のプレイリスト文化と極めて相性が良く、若い世代を中心に幅広い支持を得ています。視覚的なモノクロ映像や統一されたアートワークもブランドとして成功しました。
入門ガイド:どこから聴くか
- まずは「Nothing's Gonna Hurt You Baby」と「Apocalypse」を聴いてバンドの核を掴む。
- セルフタイトル・アルバムを通しで聴いて世界観を確認。
- 次に「Cry」を聴いて、プロダクションの変化や楽曲の広がりを比較する。
- ライブ映像や公式EPのトラックもチェックして、スタジオとライブでの表情の違いを楽しむ。
おわりに
Cigarettes After Sexは「静けさ」を武器にしながら、聴き手の内面に直接語りかける稀有なバンドです。音楽的に派手なことはしませんが、その抑制された表現こそが強烈な個性と共感を生んでいます。初めて触れるならまず代表曲を、既に好きならアルバム単位やライブで深掘りしてみてください。
参考文献
- Cigarettes After Sex - Wikipedia
- Pitchfork: Cigarettes After Sex review
- The Guardian: Cigarettes After Sex — Cry review
- NME: Album reviews and features
- AllMusic: Cigarettes After Sex biography & discography
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/
また、CDやレコードなど様々な商品の宅配買取も行っております。
ダンボールにCDやレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単に売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery


