ハリー・ニルソン(Harry Nilsson)入門:必聴アルバムと初心者向けプレイリスト&購入ガイド
はじめに — ハリー・ニルソンとは何者か
Harry Nilsson(ハリー・ニルソン、1941–1994)は米国のシンガーソングライター/ヴォーカリストで、ポップ/ロック/バラードを自由に横断する類まれなメロディ・メイカーです。作曲家としての完成度の高さと、レンジの広い歌声、ユニークなアレンジ感覚で同時代のミュージシャンやプロデューサーから高く評価されました。ここでは代表的・推薦盤を中心に、作品ごとの魅力や聴きどころ、楽しみ方を深掘りしていきます。
入門に最適:Nilsson Schmilsson(1971)
なぜ聴くべきか:Nilsson Schmilsson はニルソンの商業的成功を決定づけた名盤で、ポップセンスとアレンジの妙がバランス良く結実しています。プロデュースはリチャード・ペリー。幅広いジャンル感覚とポップ・メロディの巧さが詰まった一枚です。
- 代表曲: "Without You"(ピート・ハム/トム・エヴァンスのカバー)— ニルソンの解釈は圧倒的な歌唱力で感情を引き出し、世界的ヒットとなりました。
- 注目トラック: "Coconut"(単純明快なリフ/中毒性のあるコーラス)や "You're Breakin' My Heart"(ブラック・ユーモアを含むポップ)など多彩。
- 推薦ポイント:シングル曲の完成度が高く、サウンドプロダクションも洗練されています。初めて聴くならここからが手堅い。
創造性の高まり:Pandemonium Shadow Show(1967)
なぜ聴くべきか:デビュー近辺の作品ながら、メロディの鋭さとソングライティングの成熟が現れているアルバム。フォーク/ポップの良質な折衷で、後の名曲群の萌芽を感じさせます。
- 代表曲: "Everybody's Talkin'" — 後に映画『真夜中のカウボーイ』の挿入歌として知られ、ニルソンの存在を広く知らしめた一曲。
- 注目点:アレンジに遊びがあり、ニルソンの声の表現力が既に確立されています。
多面的な魅力:Aerial Ballet(1968)とHarry(1969)
なぜ聴くべきか:Aerial Ballet と Harry は初期の実験性とポップ・ソングライティングが混ざり合った作品群。ヴァン・ダイク・パークスなど当時の才人との交流も垣間見え、音楽的レパートリーの広さが分かります。
- Aerial Ballet の注目曲: "Everybody's Talkin'"(こちらにも登場)に加え、ニルソンならではの選曲センスが光るカバー曲群。
- Harry の注目点:メロディと歌唱により一層の磨きがかかった時期で、ソングライティングの幅を確認できます。
挑戦とコラボレーション:Son of Schmilsson(1972)
なぜ聴くべきか:Nilsson Schmilsson の成功後に発表された作品で、実験色と豪華なゲスト陣(例:ジョン・レノン等)によるコラボが見どころ。シリアスな曲からコミカルな曲まで振り幅が大きいのが特徴です。
- 注目トラック:アルバム全体でプロ・ミュージシャンによる緻密なアレンジが聴けます。特定の一曲というよりアルバム通しての多様性が魅力。
大人の歌謡性:A Little Touch of Schmilsson in the Night(1973)
なぜ聴くべきか:クラシックなブロードウェイやスタンダード・ナンバーを豊かなオーケストラで歌い上げた一枚。柔らかな歌唱と高い演奏水準が、ニルソンの「大人の歌手」としての側面を引き出します。
- 聴きどころ:オーケストレーションにより、ニルソンの声の色彩感が際立つ。スタンダード曲への真摯なアプローチは歌唱表現の教科書的。
伝説の一夜:Pussy Cats(1974)
なぜ聴くべきか:ジョン・レノンがプロデュース(ニルソンの“Lost Weekend”期間中)したアルバムで、制作の舞台裏に濃密な人間ドラマがあることでも有名です。荒削りながらもエネルギーに満ちたロック寄りの一面が出ています。
- 注目点:制作時の混乱が音楽に生々しさを与え、普段の洗練されたプロダクションとは違った魅力があります。
- おすすめの楽しみ方:制作背景を踏まえながら聴くと、その「生き様」感が伝わってきます。
物語作品:The Point!(1971)
なぜ聴くべきか:子ども向けの物語アルバム(コンセプト作)で、ナラティブと楽曲が一体となった作品。楽曲のポップさと物語性が際立ち、家族で楽しめる一方でニルソンの作曲の柔軟性がよく分かります。
そのほか注目作とフェーズ別の楽しみ方
中期〜後期にかけての作品群(Duit on Mon Dei、Flash Harry など)は、商業的成功の波を超えた実験や個人的な表現が色濃く残り、コアなファンにとっては発見が多い時期です。トラック単位での変化やプロデュース陣の違いを追うと、ニルソンの音楽的遍歴がよく見えます。
ニルソンの魅力を深掘りするポイント
- メロディの質の高さ:ニルソン作曲のオリジナル曲はもちろんのこと、カバー曲の選曲眼や再解釈も特筆すべき点です。
- 歌唱表現の幅:コメディ・タッチから深いバラードまで、声で表現するレンジが広い。
- アレンジ/プロダクションの多様性:オーケストラ・ポップ、ロック、シンプルなフォーク調まで様々。各アルバムごとに顔が変わるのも楽しみの一つです。
- 人間ドラマとしての聴き方:制作時の人間関係や逸話(レノンとの関係など)を知ると、曲がより立体的に聞こえます。
オススメの聴き方(プレイリスト編成のヒント)
- 入口:Nilsson Schmilsson 全体 + 代表曲(Without You、Coconut)
- 深掘り:Pandemonium Shadow Show → Aerial Ballet → Harry の順で初期作をたどる
- 物語性を楽しむ:The Point! を通して聴く(ストーリーテリングとして鑑賞)
- 制作背景を楽しむ:Pussy Cats を聴きつつ当時のエピソードを読み合わせると面白さ倍増
どのエディションを狙うか(購入の目安)
- スタンダードなベスト盤やリマスター盤:まずは音質の良いリマスター/コンパクトなベストで全体像を掴むのが効率的。
- デラックス盤/ボーナストラック収録盤:制作のアウトテイクやデモを聴くことで制作過程や別テイクの魅力を発見できます。コアなファンにおすすめ。
- サウンドトラック系(The Point! など):物語性重視ならオリジナルの順番で聴ける盤を選ぶと良いでしょう。
まとめ
Harry Nilsson は「歌の達人」であると同時に「曲作りの名職人」です。Nilsson Schmilsson のような分かりやすい名盤から、Pandemonium や Aerial Ballet のような初期のキラリと光る作品、Pussy Cats のようなドラマ性のある一枚まで幅広く楽しめます。まずは一枚、Nilsson Schmilsson を軸にして周辺作を聴き比べると、彼の音楽的多面性がしっかり味わえます。
参考文献
- Harry Nilsson - Wikipedia
- Harry Nilsson | AllMusic
- Nilsson Schmilsson - Wikipedia
- Pandemonium Shadow Show - Wikipedia
- Pussy Cats - Wikipedia
- Harry Nilsson | Discogs
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