10cc入門&コレクター必携盤5選:名盤の聴きどころとオリジナル盤/リマスターの選び方
はじめに — 10ccとは何者か
10ccは1970年代を代表する英国のポップ/アート・ポップ・バンド。メンバーのグレアム・グールドマン(Graham Gouldman)、エリック・ステュワート(Eric Stewart)、ケヴィン・ゴドレイ(Kevin Godley)、ロル・クレーム(Lol Creme)は、それぞれが優れたソングライター/スタジオ職人であり、ポップの王道と実験的なスタジオ技法を高い次元で融合させました。多彩な曲調、精密なアレンジ、そして革新的な録音手法(特に多重コーラスやテープ・ループを用いた表現)が彼らの特徴です。
コラムの狙い
ここでは「10ccを聴きたい」「レコードで揃えたい」人向けに、入門〜コレクター寄りまでおすすめのレコード(アルバム&重要シングル)を選び、その魅力や聴きどころ、購入時に注目したいポイントを深掘りして解説します。音楽的・制作的な評価を中心に、どの盤を優先して買うべきかの指針を提供します。
おすすめレコード(必携盤)
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「Sheet Music」(1974)
初期10ccの創造性が一気に開花した名盤。ポップセンスと前衛的な構成が同居しており、短い曲でのアイディアの凝縮、アレンジの妙、ブラックユーモアを含む歌詞表現など、バンドの“核”が詰まっています。バンドのコーラスワークやマルチトラック・テクニックを堪能でき、アルバム全体の流れも秀逸。
聴きどころ:複数の短篇が連なる構成、曲ごとの細かなアレンジ変化。初めて聴く人にはアルバムで通して聴くことを強くおすすめします。
購入ポイント:オリジナルUK盤はコレクターズアイテムとして価値がありますが、近年の公式リマスター/拡張盤も音質・ボーナストラック面で有益です。
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「The Original Soundtrack」(1975)
10ccを代表する商業的かつ芸術的到達点。ここからシングル「I'm Not in Love」が生まれ、名曲の圧倒的な録音美と独創的な表現が世界的評価を確立しました。ポップでありながら音響的な冒険心も失わないバランスが魅力です。
聴きどころ:「I'm Not in Love」のコーラス重ね技法(スタジオでの革新的なサウンドメイク)や、バラエティ豊かな楽曲群。ポップと実験の好例が同居します。
購入ポイント:シングル・エディットとアルバム・バージョンで長さやミックスが異なることがあるため、収録バージョンに注目。リマスター盤は「I'm Not in Love」の奥行きがより明瞭になることがあります。
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「How Dare You!」(1976)
メンバー間のクリエイティブな対立が表面化し始める前の、まだフルメンバーでの密度の高い作品。楽曲の幅は広く、巧みなポップ職人技が多数光ります。
聴きどころ:メンバーそれぞれの個性が曲ごとに色濃く出ており、アレンジのディテールを発見するのが楽しいアルバムです。
購入ポイント:この時期のLPはオリジナル・ステレオ盤(UK/US仕様の違い)で微妙に音像が異なる場合があるため、好みのサウンドを基準に選ぶと良いでしょう。
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「Deceptive Bends」(1977)
ケヴィン・ゴドレイとロル・クレームが脱退した後、グールドマンとステュワートが中心となって制作されたアルバム。メロディの強さ、洗練されたポップ感が前面に出ており、「The Things We Do for Love」などのヒットも生まれました。『10ccらしさ』を保ちながら、よりストレートなポップを提示した一作。
聴きどころ:メロディの質の高さと、スタジオ・ワークの隙間に覗く工夫。後期10ccの入り口として最適です。
購入ポイント:シングルヒット収録盤として人気が高く、初期プレスは需要があります。CDの再発盤ではボーナス曲が付くことも多いので内容比較を。
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「Bloody Tourists」(1978)
「Dreadlock Holiday」などのヒットを含むアルバム。レゲエ風味を取り入れたトラックや、世界観の広がりが感じられる作品で、ツアーによる経験が反映されたアレンジが魅力です。
聴きどころ:「Dreadlock Holiday」の物語性とリズム感、アルバム全体の多様性。
購入ポイント:シングルの編集バージョンとアルバムバージョンの違いに注意。輸入盤(UK/US/Japan)でジャケットや内袋の仕様差があるためコレクション性を重視するなら比較検討を。
初めて聴く人におすすめの入り口(コンピ/ベスト)
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「Greatest Hits」系の編集盤 — 代表曲を手早く押さえたいなら必携。ヒットシングルがまとまっているので、まずはアルバム単位ではなく曲単位で好みを探るのに便利です。
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ボックスセット/拡張リマスター盤 — アルバム単位で深掘りしたい人向け。デモ、アウトテイク、シングルB面などが収録されていることが多く、制作過程や別ミックスを楽しめます。
代表曲と、その聞きどころ
- I'm Not in Love — 圧倒的なサウンドイメージとコーラス・ワーク。スタジオでのアイディアが楽曲の主役になった好例。
- Rubber Bullets — 初期のヒット。ポップでありながらブラックユーモアを含む作風。
- The Things We Do for Love — メロディの強さとポップスとしての完成度が高い。
- Dreadlock Holiday — レゲエ・テイストを取り入れたナラティヴ・ソング。コーラスの掛け合いも印象的。
購入時のチェックポイント(盤選びのヒント)
- オリジナル・プレス vs リマスター:オリジナル盤は雰囲気やコレクション価値がありますが、現代のリマスター/拡張盤は音の解像度やボーナス曲で魅力的。何を優先するかで選び分けましょう。
- UK盤とUS盤のミックス差:同じ作品でもミックスや収録曲順が異なる場合があるため、好みのミックス(アルバム・バージョン/シングル・エディット)を確認。
- 国内盤(日本盤)特典:日本の再発CDや一部LPにはボーナストラックや紙ジャケット、帯(obi)がつくことがあり、コレクターには魅力的です。
- コンディションと付属物:オリジナルの帯、インナースリーブ、ライナーノート等が揃っているかは査定・満足度に影響します(特にコレクション目的の場合)。
聴き方の提案(深掘りガイド)
- 曲ごとのディテールを楽しむ:10ccはアレンジやコーラスの細部にアイディアが詰まっているため、ヘッドフォンや良好なモニターで聴くと新たな発見があります。
- アルバムを「通して」聴く:短い曲やインタールード的パートも含めて構成を楽しむと、彼らの世界観がよく分かります。
- シングルとアルバムを比較する:編集差や別ミックスに触れることで、制作意図やマーケティング面の違いが見えてきます。
まとめ
10ccはポップスとしての耳障りの良さと、スタジオ実験の知的好奇心が絶妙に噛み合うバンドです。まずは「Sheet Music」「The Original Soundtrack」「Deceptive Bends」「Bloody Tourists」あたりを軸に、好みに応じてオリジナル盤かリマスター盤を選ぶのが良いアプローチ。聴き進めるほど発見があるタイプのアーティストなので、気に入った1枚を見つけたら関連作を遡る楽しみも大きいでしょう。
参考文献
- 10cc - Wikipedia
- 10cc | Biography - AllMusic
- 10cc - Discogs
- Sound On Sound — Classic Tracks: "I'm Not In Love" (10cc)
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