ウィルソン・ピケット名盤ガイド:スタックス&マッスルショールズで聴くおすすめレコードと聴きどころ
Wilson Pickett — ソウルの炎を歌った男のおすすめレコード深掘りコラム
ウィルソン・ピケット(Wilson Pickett)は、60年代のアメリカン・ソウルを代表するシンガーの一人です。ゴスペル由来の力強いボーカル、切迫感のあるグルーヴ、そしてスタックスやマッスルショールズなど名門スタジオで生まれた名演が特徴。ここでは代表曲を生んだ重要作と、それぞれが持つ音楽的な魅力、聴きどころを深掘りして紹介します。
おすすめレコード(アルバム/コンピレーション)と聴きどころ
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In the Midnight Hour(1965) — 代表曲「In the Midnight Hour」を収録。
聴きどころ:スティーヴ・クロッパーらを迎えたメンフィス=スタックス系のサウンドで、ピケットのグルーヴ感とフレージングが鮮烈に出た一枚。タイトル曲はリズムのズレ(バックビートの強調)で当時のソウル・ミュージックの方向性に大きな影響を与えました。 -
The Exciting Wilson Pickett(1966) — 「Land of 1,000 Dances」「634-5789」などのヒットを含むアルバム。
聴きどころ:ヒットシングル群が集約された作品で、ピケットの荒々しいシャウトとホーンの掛け合いが楽しめます。シングル中心に彼の“ヒットメイカー”としての側面を知るのに最適。 -
Wilson Pickett's Greatest Hits / ベスト・コンピレーション(複数版あり) — 初期の名曲を効率よく聴ける入門盤。
聴きどころ:シングル主導の活動だったピケットは、名曲がシングルとして発表されることが多いため、ベスト盤で一気に代表曲を確認するのが分かりやすい。編集によって収録曲・音源(モノ/ステレオ)が異なる点は注意。 -
The Muscle Shoals Sessions / Complete Muscle Shoals Sessions(編集盤) — マッスルショールズ・スタジオでの録音を集めた編集盤。
聴きどころ:リック・ホール/マッスルショールズ・リズム・セクションと共演したトラックは、よりグルーヴを前面に出した録音が多く、ピケットの泥臭い魅力を強調します。「Mustang Sally」などマッスルショールズ録音の代表曲を深堀りしたいなら必聴。 -
1960s Atlantic / Stax Singles Collections(ボックス/編集盤) — 1964〜69年頃のシングルを網羅する編集コレクション。
聴きどころ:プロデューサーやスタジオが変わるごとに音の質感・アプローチが変化するのがピケットの面白さ。スタックスのタイトなホーンとマッスルショールズのスワンプ感、アトランティックのプロデュース力を比較しながら楽しめます。 -
Later period albums(1970年代の作品) — フィラデルフィア・ソウルやファンク寄りのアレンジを取り入れた作品群。
聴きどころ:70年代にはオーケストレーションや洗練されたプロダクションに寄る曲も増え、ピケットの歌唱の表現レンジを見ることができます。初期のラフさとは違う成熟した歌い回しを味わえるのが魅力です。
各レコードを深掘り:なぜ聴く価値があるのか
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「In the Midnight Hour」系の録音(スタックス):スティーヴ・クロッパーらの手によるリズム、メンフィスのホーン・アレンジ、そしてピケットのシャウトが噛み合い、ソウルの原石のようなエネルギーが詰まっています。曲のフレージングや間合いの取り方から、当時のステージング感やダンス感覚が伝わってきます。
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マッスルショールズ録音(FAME):リズムがよりグルーヴィーでタイト。地元のセッション・ミュージシャンによる“泥臭くも正確”なバックが、ピケットの声の持つ原始的な魅力を引き立てます。シングルのヒット性と演奏の堅牢さが両立している点が特徴です。
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編集盤/ベストの価値:ピケットはシングルヒットが多かったため、時代ごとの代表曲を編んだ編集盤は彼のキャリアを俯瞰するのに便利。初めて聴く人はまずベストで名曲の“ツボ”を掴み、気に入った曲の収録アルバムへ深掘りするのがおすすめです。
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歌唱の注目ポイント:ピケットの強みは“語るように突き刺す”フレージングと、ゴスペル由来のダイナミクス(小声から絶叫までの幅)。バックとの呼吸(間のとり方)やコール&レスポンス、ホーンに対する掛け合いを意識して聴くと、より細部の魅力が見えてきます。
聴き方の提案:順序とフォーカス
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1) まずはベスト盤で代表曲(In the Midnight Hour / Mustang Sally / Land of 1,000 Dances / 634-5789 / Funky Broadway)を一通り聴く。
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2) スタックス録音(メンフィス)→ マッスルショールズ録音の順にアルバムを聴き比べ、サウンドの違いとピケットの歌唱スタイルの変化を確認する。
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3) 70年代以降の作品でアレンジの多様化や成熟した歌い回しを聴き、キャリア全体の幅を感じる。
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4) 気に入った曲はライヴ音源や別ミックス(モノ/ステレオ差)を探して比較すると、ボーカルの表現がさらに際立ちます。
ピケットをより深く楽しむための視点
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プロデューサー/スタジオごとの違いを見る:ジェリー・ウェクスラー、スティーヴ・クロッパー、リック・ホールらの関与はサウンドを大きく変えます。誰がプロデュースしているかを確認すると、新たな発見があります。
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曲のルーツを辿る:多くの彼のレパートリーはゴスペル、リズム&ブルース、ダンスチューンの伝統を受け継いでいます。元曲(カバー元)や、同時代の他アーティストとの比較も面白い視点です。
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シングル中心のアプローチを理解する:当時のソウルはシングル志向が強く、アルバムは必ずしも統一コンセプトを持っていないことが多いです。ヒット・シングルを軸に聴くと全体像が早く掴めます。
入門 → 深掘り:おすすめの聴き進めルート(具体的)
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ステップ1:ベスト盤で代表曲を把握(まずは「In the Midnight Hour」「Mustang Sally」「Land of 1,000 Dances」)
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ステップ2:スタックス録音のアルバム(1964〜1966頃)をじっくり聴く
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ステップ3:マッスルショールズ録音を聴き、グルーヴ感の違いを味わう
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ステップ4:70年代以降の作品を聴いて変遷を確認。ライブ録音や別テイクも探す
まとめ
ウィルソン・ピケットは“声そのもの”が楽器であり武器であるタイプのシンガーです。スタックスの鋭利なホーン・アレンジ、マッスルショールズのグルーヴ、そして70年代の洗練されたプロダクション……各時期の録音を聴き比べることで、彼の歌唱力と表現の幅をより深く理解できます。まずは代表曲を押さえたベスト盤から入り、気に入った曲のバックを演奏するミュージシャンや録音場所に着目してアルバムを掘っていくのが王道です。
参考文献
- Wilson Pickett - Wikipedia
- Wilson Pickett Biography & Discography - AllMusic
- Wilson Pickett - Rock & Roll Hall of Fame
- Rolling Stone: Wilson Pickett articles
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