ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)入門:トロピカリアからTransa・Expresso 2222までの必聴アルバム6選
はじめに — Gilberto Gilとは
Gilberto Gil(ジルベルト・ジル)は、ブラジル音楽界を代表するシンガーソングライター、ギタリスト、作曲家。トロピカリア運動の中心人物の一人として1960年代末に注目を集め、その後も常にジャンルを横断する創作を続けています。政治的弾圧による亡命、帰国後の再出発、アフロ志向やロック、レゲエへの接近など、キャリアを通して多様な音楽的変化を見せる点が大きな魅力です。本コラムでは、初めて聴く人にも既にファンの人にも響く「おすすめレコード」を深掘りして紹介します。
聴きどころの前提:何を期待するか
- トロピカリア的な実験精神(西洋のロックやポップ、伝統的なブラジル音楽の融合)
- 社会・政治的な文脈を反映した歌詞と爽やかなメロディの対比
- 弾き語りから大編成アレンジまで多彩なサウンドスケープ
- 英語やポルトガル語のミックス、ブラジル北東部やアフロ系リズムの影響
必聴盤(選りすぐり)
1. トロピカリア作品(コンピレーション)
まずは運動そのものを知るために、トロピカリア関係の編集盤や共作アルバムに触れてください。GilはCaetano Velosoらとともに、従来のMPBやフォークの枠を壊す試みを行い、ラディカルで鮮烈な音像を提示しました。トロピカリア作品群は、ジルの後の多面的な活動を理解するうえで基礎になります。
- 聴きどころ:政治的・文化的メッセージの強さ、実験的アレンジ、楽曲のメロディセンス
- おすすめ理由:ジルの原点にあたり、その後の変化を追う手がかりになる
2. Transa
ジルが亡命中のロンドンで制作した作品。英語とポルトガル語が混在し、ロック、レゲエ、サンバが溶け合った独特のサウンドです。亡命期の孤独や郷愁、創造性の解放が反映され、批評的にも高く評価されている傑作です。
- 聴きどころ:抑圧下で生まれた自由な表現、英語詞とポルトガル語詞のコントラスト、ギターやアコースティックなテクスチャ
- おすすめ理由:ジルの「国際的な」側面とブラジル音楽の融合を強く実感できる作品
3. Expresso 2222
ジルの代表作のひとつで、帰国後のポジティブなエネルギーが詰まったアルバム。タイトル曲「Expresso 2222」は彼の象徴的ナンバーとして知られ、ブラジルらしいメロディとポップセンスが光ります。幅広いジャンルが混ざり合い、聴きやすさと深さを両立させた一枚です。
- 聴きどころ:キャッチーなメロディ、ブラジルのリズム感、復帰後の活力
- おすすめ理由:初めてジルを聴く人にも入りやすく、彼のポピュラー性を実感できる
4. Gil e Jorge("Na Praia"としても知られるデュオ作品)
ジョルジ・ベン(Jorge Ben)のような同世代ミュージシャンとの即興性の高いデュオ作。シンプルな編成ながらグルーヴ感と即興の緊張感が持続する、ライブ感あふれる録音です。長尺のトラックが多く、じっくりと音の有機的な広がりを楽しめます。
- 聴きどころ:即興的なやり取り、リズムの有機性、繰り返しによるトランス効果
- おすすめ理由:ジルのミュージシャンシップと即興性を堪能したい人に最適
5. Refazenda / Refavela(アフロ志向・地方性の探求)
これらの作品群では、ジルがブラジルの地方音楽やアフロ・ブラジリアン的な要素を積極的に取り入れています。伝統リズムの現代的解釈や、社会文化への視線が音に落とし込まれており、深みのある聴きどころが多いです。
- 聴きどころ:パーカッションやコーラスの重層、民俗的モチーフの現代的アレンジ
- おすすめ理由:ブラジルのルーツ音楽と現代的プロダクションが交差するポイントを理解できる
6. ベスト/コンピレーション盤
長いキャリアを持つアーティストなので、まず全体像を掴みたい方はベスト盤や編集盤も有効です。年代順に聴くことで、トロピカリア期→亡命期→帰国後→以降の変化を追えます。
- 聴きどころ:代表曲を効率的に把握できる、異なる時期の対比が明確になる
- おすすめ理由:入門用として最適。気に入った時にオリジナルアルバムへ掘り下げていく流れがスムーズ
代表曲(入門的に押さえたいナンバー)
- Aquele Abraço — ブラジルで広く愛されるシングルで、ジルの代名詞的な一曲
- Expresso 2222 — 同名のタイトル曲。彼のポップな側面がよく出ている
- Back in Bahia(Transaに代表されるタイプの楽曲)— 亡命期における郷愁と開放感が同居した作風を示す
- Vamos Fugir — 軽快なリズムとメロディで幅広い世代に知られるナンバー
どの盤から聴くか(初心者向けの順番提案)
- まずはベスト盤で代表曲に触れる
- 次に「トロピカリア系の編集盤」→「Transa」→「Expresso 2222」の順で聴くと、ジルの変遷がよくわかる
- さらに掘るなら「Gil e Jorge」や「Refavela/Refazenda」へ。ライブ即興やルーツ志向の奥行きを体験できる
聴き方のポイント(音楽体験を深めるために)
- 歌詞:ポルトガル語の歌詞には時に政治的・文化的な文脈が含まれます。意訳や解説を読みながら聴くと理解が深まります。
- 編成の差:ソロ寄りのアコースティックな曲と、ホーンや打楽器が重なる大編成の曲で驚くほど表情が変わります。場面ごとに集中して聴き比べを。
- 時代背景:ブラジルの政治状況(軍事政権期など)や社会運動が楽曲に影響しています。背景を少し調べると歌詞や表現の重みが増します。
最後に:ジルの魅力とは
Gilberto Gilの魅力は「音楽の柔軟さ」と「社会と結びついた誠実さ」にあります。ポップさと実験性、地元性と国際性を同時に体現する稀有なアーティストです。今回紹介したアルバム群はその多面性を捉えるための良い出発点となります。まずは一枚手に取って、歌詞や背景に目を向けながらじっくり味わってみてください。
参考文献
- Gilberto Gil — Wikipedia
- Tropicália — Wikipedia
- Transa (album) — Wikipedia
- Expresso 2222 — Wikipedia
- Gil e Jorge / Na Praia — Wikipedia
- Refavela — Wikipedia
- Refazenda — Wikipedia
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