Airto Moreira(アイルトン・モレイラ)入門:ジャズ×ブラジルを彩る必聴アルバム5選と聴きどころ

はじめに — Airto Moreiraとは

Airto Moreira(アイルトン・モレイラ、通称Airto)は、ブラジル出身のパーカッショニスト/ドラマーで、1960〜70年代のジャズ〜ジャズ・フュージョン界にブラジル音楽のリズム感と色彩を持ち込んだ重要人物です。Flora Purim(妻/歌手)とのコンビや、Miles Davis、Chick Corea、Return to Forever らとの共演を通じて、ワールドミュージック的な打楽器表現をジャズの最前線に定着させました。本稿では「聴いておきたい」代表作を厳選して紹介し、各アルバムでAirtoが何をしているか、どこに注目して聴くべきかを深掘りします。

聴きどころの共通点 — Airtoの音楽的特徴

  • ブラジル由来のリズム感:サンバやマルシャ、北東部のリズムなどの色彩をジャズの時間感に溶かす技術。
  • テクスチャーとしてのパーカッション:ドラムキット以外のシェイカー、カイシャ、アゴゴ、ベル類を用いて「空気」を作る。
  • 対話性:ソロやアクセントで前に出るより、ソリストやハーモニーに寄り添って音楽の流れを支える役割が多い。
  • 録音での創意:70年代のフュージョン期にはエフェクトやスタジオ処理も積極的に取り入れ、サウンドの広がりを演出。

おすすめレコード(深掘り解説)

Miles Davis — "Bitches Brew"(代表作としての位置づけ)

なぜ聴くか:ジャズ史に残る電化・即興拡張の金字塔。Airtoはこの時期のスタジオで、ブラジル的なパーカッションを投じることでマイルズのトーンとビッグ・サウンドに独特の色彩を加えました。

聴きどころ:トラック全体で空間を埋める間奏や、ビートの分裂・再結合が起きる瞬間。Airtoの打楽器は「不規則な推進力」や「浮遊するリズム感」を提供し、電化されたホーンや鍵盤と混ざり合います。

Chick Corea — "Light as a Feather"

なぜ聴くか:Chick Coreaのリリースの中でもラテン色が強い一作。Flora Purimの歌とAirtoのパーカッションが融合し、ブラジリアン・ジャズの魅力が前面に出ます。

聴きどころ:ピアノのモチーフとパーカッションの応答。Airtoは単なるリズムの補強に留まらず、コード進行のアクセントやフレーズの呼吸を整えます。ソロの合図や色付けとしての小物楽器使いに注目してください。

Flora Purim — "Butterfly Dreams"

なぜ聴くか:Flora Purimの代表作の一つであり、Airtoは演奏・プロデュース面で強く関与。ボーカル・ジャズとブラジリアン・アレンジの親和性が高い作品です。

聴きどころ:歌メロとパーカッションの細かな掛け合い。Airtoのリズムは歌い手を支えつつ、ところどころで色彩的に前面に出てきて楽曲の表情を変えます。静かなパートでの“間”の取り方も巧みです。

Return to Forever — "Return to Forever"(デビュー作/初期作)

なぜ聴くか:Return to Foreverの音楽的出発点はアコースティック寄りのラテン色を残したジャズで、Airto/Floraコンビが関与している初期作は、その「ブラジル的側面」を聴ける重要資料です。

聴きどころ:よりアコースティックなアンサンブルでの打楽器の役割。ビートの推進だけでなく、色彩音としてのパーカッション(間奏の微細な装飾やハーモニーへの溶け込み)に注目すると、Airtoのスタンスが見えてきます。

Airto Moreira — "Fingers"(ソロ作の代表格)

なぜ聴くか:ソロ名義でリーダーシップをとった作品では、パーカッションを中心に置きつつ、メロディやコンポジションへの意識が強まるのが特徴。自身のルーツを前面に出した実験性とポップさが混在します。

聴きどころ:パーカッション・アンサンブルの編成や、打楽器がメロディックに働く瞬間。曲ごとにリズム語法を変え、どのように楽曲表情を作るかを見せてくれます。またゲスト奏者との対話も聴き所です。

その他注目作・聴きどころ(補遺)

  • 共同作やセッション録音:Airtoは多くのセッションに呼ばれ、短いフレーズでも強い印象を残すタイプです。クレジットを追っていくと、思わぬ名演に出会えます。
  • フュージョン期の録音:エレクトリックな文脈でのパーカッションの使い方(エフェクト含む)を学びたいなら、70年代前半〜中盤の作品群をまとめて聴くと理解が深まります。

聴き方の提案 — 何を基準に選ぶか

  • 「コラボでの役割」を楽しむ:MilesやChick Coreaのような巨人の作品では、Airtoが全体の色をどう変えているかを見るのが楽しい。
  • 「リーダー作」で個性を掴む:ソロ/リーダー作は彼自身の音楽観がより直接的に出ます。構成や曲作りに注目。
  • 「声と打楽器の共演」を味わう:Flora Purimとの共演は、歌とパーカッションが溶け合うユニークな体験になります。

入門から深掘りまでのおすすめ順

  1. まずは「Light as a Feather」や「Butterfly Dreams」などの明快でメロディアスな作品から入る。
  2. 次に「Bitches Brew」などで、Airtoが大きな音のなかでどう機能しているかを聴く。
  3. 最後にAirto名義の作品で彼自身のコンポジションとサウンド美学をじっくり味わう。

最後に — Airtoを聴く意義

Airto Moreiraを聴くことは、単にきれいなパーカッションを楽しむだけでなく、リズムの「語法」を学ぶことでもあります。彼はブラジルの伝統的なリズムとジャズの即興性を橋渡しし、音色や細部のニュアンスで楽曲の輪郭を変えてしまう稀有な奏者です。初めて出会う方は、コラボ作→リーダー作の順で辿ると、彼の存在の多面性を効率よく理解できるでしょう。

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