ナナ・ヴァスコンセロス入門:必聴名盤と聴きどころガイド — Dança das Cabeças・Codona・ソロ作で味わう打楽器の新境地
はじめに — Naná Vasconcelos とは何者か
Naná Vasconcelos(ナナ・ヴァスコンセロス、1944–2016)は、ブラジル出身のパーカッショニスト/打楽器奏者であり、ベルンバウ(berimbau)やボイス・エフェクトを巧みに用いた独自のサウンドで国際的に評価されたアーティストです。ジャズ、ブラジリアン・ミュージック、民族音楽、即興演奏を横断しながら、楽器を「声」のように使う表現性で多くのミュージシャンから信頼を得ました。本コラムでは、彼の代表的なレコードを深掘りし、聴きどころや背景、なぜそのアルバムが重要かを解説します。
聴く前に押さえておきたいポイント
- 打楽器=リズムだけでなく「旋律・テクスチャー」を担うという発想に注目すること。
- ベルンバウや口唱、身体音を楽器として前面に置くため、従来のメロディ主導の楽曲とは違った「空間の扱い」「呼吸感」を楽しめる。
- 即興と作曲の境界が曖昧な演奏が多く、聴くたびに新しい発見がある点。
おすすめレコード(深掘り解説)
Egberto Gismonti & Naná Vasconcelos — "Dança das Cabeças"(代表的コラボレーション)
なぜ聴くべきか:ブラジル音楽と現代ジャズの境界を軽やかに行き来する名盤です。エグベルト・ジスモンチのギター/ピアノとナナの打楽器が互いに反応し合い、リズムと旋律が溶け合う独特の音世界を作り上げています。
聴きどころ:
- ベルンバウや手拍の即興的なフレーズが楽曲の中心に据えられ、そこからメロディが伸びていく構造。
- ジスモンチの複合リズムとナナの「声的」表現(ハミング、短いコーラス的フレーズ)が会話のように展開する点。
- 伝統的なブラジルのリズム感が前面に出ながらも、欧米のジャズ/現代音楽の空間処理を取り入れていること。
Codona(Don Cherry / Collin Walcott / Naná Vasconcelos) — "Codona" シリーズ
なぜ聴くべきか:Codona は自由なワールド・ミュージック的実験と即興の接点を示す代表的プロジェクト。ドン・チェリー(トランペット等)とコリン・ウォルコット(弦・パーカッション)とのトリオで、エキゾティックな音色とミニマルな構造が特徴です。ナナのベルンバウとパーカッションは、楽曲に独自の「地」を与えます。
聴きどころ:
- 民族楽器とジャズ的即興が融合したサウンドスケープ。ナナは単なる伴奏役ではなく、曲のテクスチャーを決定づける重要な声部を担います。
- ミニマルなループや反復の中で変化する色彩感(音の残響、間の取り方)を堪能できる点。
- 3枚にわたるシリーズ(Codona / Codona 2 / Codona 3)は、それぞれ実験の方向性が異なるため連続して聴くことで彼の表現幅を実感できます。
ナナのソロ作品(概観)
なぜ聴くべきか:ソロ作品ではナナ自身の音楽言語が最もストレートに表われます。ベルンバウ、打楽器、口唱によるレイヤーで「ひとりオーケストラ」的な効果を出し、民族的要素と現代的即興が融合した独自の世界を提示します。
聴きどころ:
- 一人で多層的なサウンドを作るための録音テクニックや空間処理に注目しましょう。録音上の残響やマイク配置も表現の一部です。
- 歌とパーカッションが同等に扱われることで生まれる「語り」の感覚。物語性や儀式性を感じる瞬間が多いです。
その他の注目コラボレーション(概説)
ななは生涯で多くのミュージシャンと共演しています。代表的な例として、ジャズ/現代音楽の文脈で活躍するミュージシャンやブラジルの名アーティストとの共演が挙げられます。これらのセッションでは、ナナがリズムだけでなく「音の色」や「空間」をコントロールする役割を果たしています。
各アルバムの聴き方ガイド(実践)
- 初回は「全体の流れ」を重視:曲と曲の間にある空間(間合い)や持続音に耳を傾けてください。ナナの表現は“音の間”に響きます。
- 2回目以降は「個々の音」に注目:ベルンバウの微妙なニュアンス、手の打ち方による音色の変化、声の倍音などを探してみてください。
- ヘッドフォンや良いモニターで低域と高域のバランスを確認:ナナの演奏は繊細な倍音を含むため、再生環境で聴こえ方が大きく変わります(レコード再生の話ではありませんが、良い音環境推奨)。
- 他アーティスト作品との比較:ジスモンチやドン・チェリーらとの共演作とソロ作を比較すると、ナナがどのように「伴奏」と「主導」を使い分けるかがよく分かります。
なぜこれらのレコードが“名盤”なのか
- 伝統と実験の橋渡し:ブラジル土着のリズム感覚を基盤に、現代音楽や即興の要素を取り込みました。
- 楽器の概念の拡張:ベルンバウや人声を“メロディ”や“テクスチャー”として積極的に使い、打楽器の役割を再定義しました。
- 国際的ネットワーク:世界中の即興系ミュージシャンやジャズ界との交流を通じて、ワールド・ミュージック以降の表現に影響を与え続けた点。
最後に — これから聴く人へのメッセージ
Naná Vasconcelos の音楽は一聴で理解できるタイプのものではなく、何度も繰り返し聴くほど深みが増します。ジャンルを越境する音楽として、既成概念に縛られない「音の可能性」を楽しんでください。初めはコラボレーション作品から入り、慣れてきたらソロ作品で彼の声そのものをじっくり味わうのがおすすめです。
参考文献
- Naná Vasconcelos — Wikipedia(英語)
- Naná Vasconcelos — AllMusic(英語)
- Naná Vasconcelos — Discogs(作品一覧)
- Codona(Don Cherry / Collin Walcott / Naná Vasconcelos)— Wikipedia(英語)
- Egberto Gismonti(協働アーティスト紹介)— Wikipedia(英語)
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/
また、CDやレコードなど様々な商品の宅配買取も行っております。
ダンボールにCDやレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単に売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery


