Core Web Vitals 完全ガイド:LCP・INP・CLSの計測方法とSEOに効く改善手法

Core Web Vitalsとは

Core Web Vitals(コア・ウェブ・バイタルズ)は、Google が提示するウェブページの「ユーザー体験(UX)」を定量化するための一連の指標群です。ページ読み込みや表示、ユーザー操作に関する実際の体感を数値化し、検索結果のランキング要因(ページ エクスペリエンス)にも組み込まれています。もともとは Largest Contentful Paint(LCP)、First Input Delay(FID)、Cumulative Layout Shift(CLS)の3指標で構成されていましたが、ユーザー操作の評価指標として INP(Interaction to Next Paint)への移行が進められています。

なぜ重要か

従来のパフォーマンス指標(例えば総読み込み時間やリクエスト数)だけではユーザーの実際の体感を十分に表せません。Core Web Vitals は「見た目」「操作の応答性」「レイアウトの安定性」に着目することで、ユーザーがページを使って感じる快適さを直接評価します。検索ランキングへの影響に加え、コンバージョン率・直帰率・滞在時間といったビジネス指標にも直結するため、フロントエンド最適化の主要なターゲットになっています。

主要指標の詳細

  • Largest Contentful Paint(LCP)

    ページの主要なコンテンツ(大きな画像やテキストブロックなど)が表示されるまでの時間を測定します。ユーザーが「ページは読み込まれている」と感じる指標です。

    目安(暫定的・Google 推奨): 良好 ≤ 2.5 秒、改善の余地 2.5–4.0 秒、悪い > 4.0 秒。

  • First Input Delay(FID) と Interaction to Next Paint(INP)

    FID は最初のユーザー操作(クリックやキーボード入力など)に対する応答遅延を測る指標でした。主に最初のインタラクションに焦点を当てます。目安は良好 < 100 ms など。

    しかし、FID は「最初の操作のみ」を対象とするため、継続的な操作の体験を評価しきれないという課題があり、Google は INP(Interaction to Next Paint)を推奨指標として導入しています。INP はページ上での様々なインタラクション全体を評価し、遅延の分布を基にしたスコアで「ユーザーが操作した際の平均的な応答性」を表します。閾値は測定方法やバージョンで変動するため公式ドキュメントを参照してください。

  • Cumulative Layout Shift(CLS)

    ページの読み込み中や動作中に予期せずレイアウトがずれる量(視覚的な安定性)を示す指標です。画像の読み込みによるシフトや動的挿入コンテンツ、広告の差し込みなどが主な原因です。

    目安: 良好 < 0.1、改善の余地 0.1–0.25、悪い > 0.25。

計測の種類:フィールドデータ vs ラボデータ

Core Web Vitals は「現実のユーザー(フィールド)」から得られるデータと、開発環境で再現する「ラボ」での計測の両方があります。

  • フィールドデータ:Chrome UX Report (CrUX) が代表で、実際のユーザー環境(端末・回線・利用状況)の分布に基づく実測値。Search Console の Core Web Vitals レポートや PageSpeed Insights の実ユーザーデータで確認できます。
  • ラボデータ:Lighthouse や WebPageTest などで固定の環境(例えば低速モバイル)を再現して測定。再現性が高くデバッグに有効ですが、実際のユーザー環境を完全には反映しません。

測定ツール(代表例)

  • Google PageSpeed Insights(ラボ + フィールド)
  • Lighthouse(Chrome DevTools 内)
  • Chrome User Experience Report(CrUX)/ BigQuery(フィールドデータの集計)
  • Search Console の Core Web Vitals レポート
  • WebPageTest(詳細なラボ計測)
  • web-vitals JavaScript ライブラリ(LCP/CLS/INP 等をクライアントで計測)

改善の具体的な手法

以下は代表的な最適化手法です。実際のボトルネックを特定するため、まずはツールで計測して原因を把握してください。

LCP 改善(表示速度向上)

  • サーバー応答時間の短縮(FastCGI キャッシュ、Redis、APCu、動的処理の最適化)。
  • CDN の利用で距離遅延を低減。
  • 重要なリソース(Hero 画像、フォント、CSS)をプリロード(preload)する。
  • レンダーブロッキングリソースの削減(CSS の最小化、Critical CSS の抽出、JS の遅延読み込み)。
  • 画像の最適化(適切なフォーマット(WebP/AVIF)、サイズレスポンシブ、遅延読み込みの活用)。
  • クライアント側でのレンダリング負荷を下げる(不要な JavaScript 処理を削減、サーバーサイドレンダリングを検討)。

INP / FID 改善(応答性向上)

  • メインスレッドの長時間タスク(Long Tasks)を分割する。Webpack や Rollup でコード分割を行う。
  • 重たい処理を Web Worker に移す。
  • サードパーティスクリプトの影響を評価し、遅延読み込みまたは非同期化する。
  • イベントハンドラのコストを下げる(同期で重い処理を行わない)。
  • Input responsiveness を改善するためにポリシー(requestIdleCallback, requestAnimationFrame の適切な利用)を検討する。

CLS 改善(レイアウトの安定化)

  • 画像や動画のタグに width/height 属性を設定し、CSS でアスペクト比を保持する。
  • 広告や埋め込みコンテンツのためにプレースホルダーの領域を確保する。
  • DOM 操作でのコンテンツ挿入位置に注意し、既存コンテンツを押し下げない方法を採る。
  • アニメーションは transform(translate/scale)を使い、レイアウトの再計算を引き起こさないようにする。

実務上の注意点

  • 「最小化」だけを追うと機能性やアクセシビリティを損なう恐れがあるため、ユーザー体験全体のバランスを考えること。
  • フィールドデータは幅のあるユーザー分布(遅い回線や古い端末)を含むため、ラボで良くても実ユーザーが悪いケースがある。CrUX を必ず確認する。
  • サードパーティスクリプト(広告、解析、チャット等)は予期せぬ遅延やレイアウトシフトを引き起こすことが多く、継続的な監視と最適化が必要。
  • 指標の仕様や閾値は更新されるため、Google の公式ドキュメントを定期的に確認する。

SEO との関係

Google は Core Web Vitals を含む「ページ エクスペリエンス」を検索ランキング要因の一部として導入しています(最初の導入は 2021 年ごろ)。ただし、コンテンツの関連性が依然として最も重要な要素であり、Core Web Vitals は順位決定の一側面に過ぎません。最終的な目標は検索順位の上昇だけでなく、ユーザーの満足度とコンバージョン向上です。

まとめ

Core Web Vitals はユーザーが実際に感じるページの「速さ」「反応性」「安定性」を定量化する強力な指標群です。正確な原因特定にはフィールドデータとラボデータの両方を使い分け、優先度をつけて改善を進めることが重要です。技術的な対策(画像最適化、サーバー改善、JSの分割・最適化、レイアウトの安定化)を継続的に実施することで、ユーザー体験とビジネス成果の両方を高められます。

参考文献