Tony Bennett入門 — 初心者におすすめの名盤6選と聴きどころ徹底解説
はじめに — Tony Bennettとは
Tony Bennett(トニー・ベネット)は、ジャズ/ポップスの枠を越え、長年にわたりスタンダードを歌い継いできたアメリカのボーカリストです。深い発声とフレージング、歌詞への丁寧な寄り添いで知られ、ビッグバンドからピアノ・トリオ、現代のポップスターとのデュエットまで幅広い活動を行いました。本コラムでは“まず手に入れたい”と自信を持っておすすめできる代表的レコードをピックアップし、それぞれの聞きどころ、代表曲、聴き方の視点(音楽的な注目点)を深掘りします。
1. I Left My Heart in San Francisco(代表曲を含むコンピレーション/シングル)
「I Left My Heart in San Francisco」はTony Bennettの代名詞的楽曲で、彼のキャリアを象徴する一曲です。アルバムとしては様々な編集盤やコンピレーションで広く流通していますが、この曲の持つ情感と歌の表情は単独で何度でも聴く価値があります。
- 聞きどころ:**冒頭のフレーズの伸ばし、間(ま)の取り方、語尾の温度感**。シンプルな伴奏に対して声のニュアンスが際立ちます。
- 代表曲(必聴):「I Left My Heart in San Francisco」
- おすすめポイント:トニーの“物語を語る”歌い方が最も端的に表れる一曲。初めてTony Bennettに触れる人にも入りやすい。
2. The Tony Bennett/Bill Evans Album(Bennett × Bill Evans — デュオ作品)
ピアニストBill Evansとのデュオ・アルバムは、極めて親密で音楽的に豊かな一作です。伴奏をピアノ一台に限定することで、歌とピアノの対話が際立ち、スタンダード曲群の解釈が深く抽出されています。
- 聞きどころ:**空間感と呼吸の共有**。Bennettの語りかけるようなフレージングに対し、Evansの和声的な反応が瞬時に返ってくる点。
- 代表曲・注目曲:ハーモニーの変化が美しいスタンダードの数々(例:「The Very Thought of You」など)。
- おすすめポイント:スタンダードを“歌う”のみならず“会話する”アプローチを味わえる。歌手とピアニストの微妙な間合いに注目。
- 聴き方のヒント:伴奏の余白や和音の選択に注意して、Evansがどの瞬間にスペースを埋め、どこで沈黙を保つかを追うと楽曲の構造が見えてきます。
3. Basie Swings, Bennett Sings(Count Basieオーケストラとの共演)
Count Basie楽団との共演作は、ビッグバンドのダイナミズムとBennettのスウィング感が合わさった豪快かつ洗練された録音です。大編成のリズムとブラスの色彩が歌を押し上げます。
- 聞きどころ:**ビッグバンドのアンサンブルとトニーのフレーズの“交差”**。ブラスの応答やアンサンブル・リフが歌に与えるエネルギー。
- 代表曲・注目曲:スウィング・ナンバー中心。アップテンポの曲での発声の輪郭や音の抜け具合を確認。
- おすすめポイント:Bennettのスウィング適性を堪能できる一枚。ジャズ的なドライブ感が好きな方に特におすすめ。
4. MTV Unplugged(ライブ:90年代の再ブレイクを象徴する録音)
1990年代、Tony Bennettは若い世代にも再評価され、MTV Unplugged出演などで新たなファン層を獲得しました。ライブ盤は柔らかく即興的な表現が聴ける点で魅力的です。
- 聞きどころ:**ライブならではの即興的なフレージング、観客とのインタラクション**。録音の温度感やMCでの語りも含めて、人間味が濃い音源。
- 代表曲・注目曲:スタンダードの名曲群をライブならではのアレンジで披露。
- おすすめポイント:スタジオ盤とは違う臨場感を味わいたい人、歌手としてのトニーのコミュニケーション力に注目したい人に推奨。
5. Duets: An American Classic / Duets II(現代との共演シリーズ)
2000年代以降、Bennettは幅広い世代のアーティストとデュエットすることで再び注目を浴びました。これらのデュエット・アルバムは、伝統を守りつつポップ/現代音楽と接続する良質な橋渡しをしています。
- 聞きどころ:**異ジャンルの歌手との化学反応**。各曲でBennettがどのように相手に寄り添い、また自分の色を保つか。
- 代表的な共演者:Elton John、Diana Krall、Barbra Streisandなど多様。
- おすすめポイント:伝統的なスタンダードの解釈を現代の声と組み合わせて楽しめる。アレンジやプロデュースの幅広さも魅力。
6. Cheek to Cheek(with Lady Gaga — ジャンル横断の二重奏)
Lady Gagaとの共作「Cheek to Cheek」は、世代・ジャンルの違いを超えた成功例として注目されます。若いアーティストとの対話を通じて、新しい聴衆にスタンダードを提示した作品です。
- 聞きどころ:**語り口の対比**。Bennettの熟練の語りとGagaの表現力のコントラスト、そして二人のハーモニー。
- 代表曲・注目曲:アルバム全体がスタンダード中心で、解釈の違いを楽しめます。
- おすすめポイント:伝統的ジャズ歌唱がポップ・リスナーに届く好例。コラボレーションの妙を味わいたい人向け。
選曲と購入のポイント(音楽的視点)
どのレコードを選ぶかは、あなたがTony Bennettのどの側面を聴きたいかによります。以下は選び方の指針です。
- 「歌だけを純粋に味わいたい」→ デュオや小編成(Bill Evansとの作品など)を選ぶ。
- 「スウィング/ビッグバンドの迫力を楽しみたい」→ Basie等との共演盤を。
- 「歴史的・代表曲を押さえたい」→ 「I Left My Heart in San Francisco」 を含むコンピレーションや初期のヒット曲集。
- 「現代的な再解釈や若手とのコラボが聴きたい」→ DuetsシリーズやCheek to Cheek。
聴きどころの深掘り:フレージング/語り口/歌詞解釈
Tony Bennettを深く楽しむ鍵は“フレージング(音の切り方・つなぎ方)”と“語り口”の理解にあります。短くポイントをまとめます。
- フレージング:語尾の処理(巻き込む/切る)、フレーズの伸ばし方、ポルタメント的なニュアンスが豊富です。テンポが穏やかな曲では、語りかけるように語尾を下げることが多いです。
- 語り口:歌詞の意味を“伝える”ための選択が随所にあります。歌詞の語感を優先する場面と、メロディの美しさを優先する場面の使い分けを探すと面白い。
- 対話性:共演者(ピアニストやバンド)との対話に意識を向けると、アレンジの“応答”や瞬間的な表現が聴き取れます。
最後に:どこから聴き始めるか
初めてTony Bennettに触れるなら、まず「I Left My Heart in San Francisco」を軸に、デュオ(Bill Evans)で歌の深さを確認し、Basieとの共演で表現の幅の広さを知る――という順が分かりやすいです。現代の感覚と交差した作品(DuetsやCheek to Cheek)も、彼の表現力の普遍性を示す良い入口になります。
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参考文献
Rolling Stone — Tony Bennett のキャリア解説記事
Tony Bennett | Discogs(ディスコグラフィ参照)


