ビング・クロスビー厳選ガイド:代表曲「White Christmas」から必聴名盤・リマスターまでの聴きどころ
はじめに — Bing Crosbyという存在
Bing Crosby(ビング・クロスビー、1903–1977)は、20世紀のポピュラー音楽を象徴するシンガーの一人です。マイク芸(microphone technique)を活かした「クルーニング」唱法や、自然体のフレージングで大衆の心をつかみ、ラジオ、映画、レコードの三媒体で巨大な人気を築きました。レパートリーはジャズ/ポップのスタンダードから映画主題歌、クリスマス曲まで幅広く、シングル、アルバム、映画音楽を通して残された録音は今なお聴き継がれています。
聴きどころの共通点
- 「語るように歌う」自然なフレージングとタイミング。小さな息遣い・間を活かす表現が魅力。
- ジョン・スコット・トロッター(John Scott Trotter)ら巧みな編曲家との長い協働により、ヴォーカルを引き立てる控えめで洗練されたアレンジが多い。
- スタンダード曲への解釈力。歌詞の語感と情景を大切にするため、同じ曲でも別録音ごとに異なる味わいがある。
おすすめレコード(厳選)
1. シングル: "White Christmas"(ホワイト・クリスマス)
代表曲中の代表曲。イーライ・ベルリン作のこの曲を歌ったクロスビーのヴァージョンは、世界的に最も知られたクリスマス・ソングのひとつです。商業的にも歴史的にも重要で、長年にわたり何度も再発売・再収録されました。
- 聴きどころ:クロスビーの温かい声と抑制の効いた表現が、曲の郷愁性を最大限に引き出します。芯のある低音域の安定感が特徴。
- ヴァージョンの違い:1942年に映画『ホリディ・イン』のために録音されたオリジナル・テイクが基となり、その録音をもとに後年いくつかの再録音・リマスターが存在します。収録盤によって微妙に響きが違うので、聴き比べがおすすめです。
- おすすめ盤:オリジナルの78回転盤コレクションや、モダンなリマスター/コンピレーション(Decca系や大手レーベルのクリスマス・アンソロジー)
2. アルバム: "Merry Christmas"(複数年代の編集盤)
クロスビーのクリスマス録音をまとめた代表的なアルバム。曲ごとに録音年代が異なることが多いですが、通して聴くと彼の季節感の作り方とヴォーカル・スタイルの一貫性がよくわかります。
- 聴きどころ:ホリディー曲の温もり、合唱やオーケストラとのバランス、トーンの滑らかさ。家族や年末年始の情景と結びつきやすいシーン描写力が強い。
- 注意点:初期の編集盤は78回転盤用に分割されていたため、LP/CD化で曲順やテイクが入れ替わることがある点に留意してください。
3. シングル/スタンダード曲: "Swinging on a Star"
映画やラジオで広く知られるヒット曲で、クロスビーの軽妙でユーモアのある一面が見える作品です。ポップ・スタンダードとしての完成度が高く、歌詞の遊び心を巧みに表現しています。
- 聴きどころ:軽快なリズム感と朗らかな発音。曲中の間(ま)やアクセントの付け方からクロスビーの語り口の魅力が伝わります。
4. 1930s〜40sのシングル集(Pennies from Heaven など)
クロスビーのキャリア初期から人気を確立したヒット群。懐かしさと当時のレコーディング技術の音像が魅力で、ポップスの古典を聴く愉しさがあります。
- 代表曲: "Pennies from Heaven" など、映画・ラジオで育まれたレパートリーが中心。
- 聴きどころ:大戦前後のアメリカ大衆音楽の空気感とクロスビーの即興性や朗読調の表現。
5. 映画音楽/サウンドトラック集("Going My Way" 等に関連する録音)
クロスビーは映画スターとしても活躍し、映画主題歌や劇中歌で多くの名演を残しました。映画と結びついた楽曲は演技的な歌い回しやドラマ性を感じさせます。
- 聴きどころ:台詞と旋律の交差、物語性のある表現、映画の場面を思い浮かべながら聴く楽しさ。
6. 近年のリマスター/ボックスセット(入門から深掘りまで)
初めてクロスビーをまとまって楽しみたい人、あるいは録音年代やテイク違いを詳しく追いたいコレクター向けに、現代のリマスター盤や大箱セットは強くおすすめできます。ドイツのBear Familyのような専門レーベルは、補遺資料や詳細なブックレットを付けた充実したセットを出しています(価格は高め)。
- 初心者向け:ベスト盤や「ベスト・オブ」系のリマスター盤で代表曲をまず押さえる。
- 中・上級者向け:年代別のデッキ収録やラジオ出演の録音、未発表テイクを収めたボックスセットで作品史を辿る。
聴き比べの楽しみ方
クロスビーの魅力は「同じ曲でも録音・編成・年齢で表情が変わる」点にあります。以下のような聴き方を試すと深みが出ます。
- 同曲の複数テイクを比べる:フレージング、テンポ、伴奏の違いを意識する。
- 映画音楽とシングル版を比較:映画の演出(台詞や効果音)と単独の音源では表現が異なる。
- 編曲者やオーケストラ編成に注目:ジョン・スコット・トロッターらとの共作期は一貫した美学が見えてきます。
まとめ
ビング・クロスビーは「歌の表現力」と「時代を超えた親しみやすさ」が同居する稀有なアーティストです。まずは代表曲(特にホリデー関連)やベスト盤で彼の声の魅力に触れ、その後に年代別のリマスターやボックスセットで録音史を辿る──という段階的な楽しみ方が効果的です。音楽的な“語り手”としての彼の力量を実感できるはずです。
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参考文献
- Bing Crosby — Wikipedia (English)
- Bing Crosby | AllMusic
- Bear Family Records — official site (詳細なボックスセットで知られるレーベル)
- Guinness World Records — Best-selling single("White Christmas"に関する言及がある情報源)


