スティーヴ・ガッド入門:レコードで聴くセッションの巨匠の必聴名盤とドラミング徹底ガイド

イントロダクション — スティーヴ・ガッドとは何者か

スティーヴ・ガッド(Steve Gadd)は、ロック/ポップ/ジャズ/フュージョンの垣根を越えて活躍する“セッションの巨匠”です。繊細かつ力強いグルーヴ、独特のゴーストノート、そしてフレーズの「歌わせ方」によって、多くの名曲に不可欠な“色”を添えてきました。本コラムでは、ガッドのドラミングの特徴を織り込みつつ、レコード愛好家としてぜひ手に取って聴いてほしいおすすめ盤を深掘りして紹介します。

ガッドのドラミングの特徴(聴きどころ)

  • “間”と“字余り”の扱い:フレーズの合間に置かれるワンビートやゴーストノートで、楽曲に呼吸と躍動感を与えます。
  • タム/スネアの音色作り:ハイハットやスネアの叩き分け、タムの配置によるドラマチックな盛り上げが特徴的です。
  • ルーティングの巧みさ:複雑なビートでも聴き手に“分かりやすい”グルーヴとして提示する能力に長けています。
  • ジャンル横断性:ジャズ・フュージョンからポップス、ロック、ソウルまで、求められるサウンドに柔軟に適応します。

必聴の代表セッション盤(詳細解説)

  • Paul Simon — "Still Crazy After All These Years"(1975)

    おすすめポイント:このアルバムに収録された「50 Ways to Leave Your Lover」は、ガッドの代名詞的な仕事のひとつ。シンプルながら個性的なスネアのアクセントとパーカッシブなワンパターンが曲全体のアイデンティティとなっています。

    聴きどころ:冒頭のリズムパターンおよびヴァースでの“間の取り方”、ゴーストノートによる柔らかいグルーヴの形成。ドラムが主張しすぎないのに曲を決定づける典型例です。

    なぜコレクションすべきか:ポップスとドラミングの「ミニマルだが印象深い」関係を学べる一枚。セッション・ドラマーとしてのガッドの力量が分かりやすく出ています。

  • Steely Dan — "Aja"(1977)

    おすすめポイント:ジャズとロックが高度に融合した名盤。ガッドはタイトル曲「Aja」をはじめ、複雑なアンサンブル中でのゴルペ(タム回し)やダイナミクス処理で強烈な印象を残しています。

    聴きどころ:緻密なアレンジの隙間で繰り出されるタムワークやフィル、そして楽曲の転換点での的確なアクセント。プロダクションに埋もれない“生のグルーヴ”が味わえます。

    なぜコレクションすべきか:セッション・ドラミングの教科書的な働きを聴ける一枚。音楽的要請が高い状況での“的確さ”が学べます。

  • Paul Simon — "One-Trick Pony"(1980)

    おすすめポイント:「Late in the Evening」などでのラテン/ファンク的なビート処理が秀逸。よりダンサブルでエネルギッシュなガッドを楽しめます。

    聴きどころ:スネアのバックビートの入れ方、パーカッシブなフィルとホーンアンサンブルとの掛け合い。ライヴ感のあるグルーヴ感にも注目です。

    なぜコレクションすべきか:ポップ/ダンス寄りのプロダクションでのガッドの適応力と、楽曲をドライブする力を聴ける盤です。

  • Gaddがリーダー/共演した作品(Gaddの個性を直に感じる)

    おすすめポイント:スティーヴ・ガッド名義や“The Gadd Gang”など、彼がバンドリーダー/主導的立場にある録音では、叩く場面だけでなく曲作りやアンサンブル全体への関与が見えます。

    聴きどころ:ソロやブレイクでの表現、メロディとの対話、共演者(トム・スコット、リチャード・ティー等)とのコンビネーション。ガッドの音楽的嗜好とリズム哲学を直に感じられます。

    なぜコレクションすべきか:単なる“名脇役”ではなく、リーダーとしての指向や演奏美学を味わうことで、彼の全体像がより鮮明になります。

  • フュージョン/現代ジャズでの仕事(例:Chick Corea他)

    おすすめポイント:フュージョン系の録音では、複雑なタイム感やポリリズム、微妙なダイナミクスが要求されます。ガッドはそうした局面で的確に“音楽を支える”ドラミングを繰り出します。

    聴きどころ:スピード感のあるフレーズの中で聴こえる正確さ、余裕のあるビート処理、そしてソロ時のフレーズ展開。

    なぜコレクションすべきか:高度なテクニックと音楽性の両立を学べるので、ドラマーのみならず音楽家全般にとって示唆に富んだ録音群です。

各盤を聴くときの“聴き方ガイド”

  • 初回は“ドラムだけ”を集中して追いかける:イントロ→ヴァース→コーラスの繰り返しでガッドの変化球(ゴーストノートやフィル)を拾いましょう。
  • セッション感を聴き取る:ギターやホーンとの“合図”やレスポンスの瞬間に注目すると、彼の“音楽的相互作用”が見えてきます。
  • ダイナミクスの変化を掴む:ガッドは小さなバリエーションで曲全体の感情をコントロールするので、音量差やタッチの違いに注意。

まとめ — ガッドの何を持ち帰るか

スティーヴ・ガッドは“見せ場”を作らずとも曲を記憶に残す術を知っている稀有なドラマーです。代表的なセッション盤(Paul Simon、Steely Danなど)でその手法を学び、リーダー作やフュージョン系の録音で彼の音楽的守備範囲と個性を確認すると、ドラミングの本質に近づけます。コレクションとしては、セッションの名演を集めた編集盤や、彼の名前がクレジットされたオリジナル盤を探すと、“生きたレッスン”が詰まっています。

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参考文献