John Coltrane入門:Blue Train〜AscensionまでLPで聴く必聴レコード8選と聴き方ガイド

John Coltrane — おすすめレコード深掘りコラム

ジャズ史においてジョン・コルトレーン(John Coltrane)は、テナー/ソプラノ・サックス奏者として、演奏スタイル、作曲、精神性において強烈な足跡を残しました。本コラムでは、入門からコルトレーンの音楽的発展を追体験できるおすすめレコードを厳選して深掘りします。各作品の制作背景、主要メンバー、代表曲、聞きどころ(聴き方のヒント)をまとめました。LPで聴く楽しみを前提に、アルバムごとの「何を聴くべきか」「なぜ重要か」を丁寧に解説します。

1. Blue Train(1957)

概要:ハードバップ期の名盤。Prestigeレーベルからのリリースで、コルトレーンがリーダーとしての確かな存在感を示した一枚。

  • 主なメンバー:John Coltrane(ts)、Lee Morgan(tp)、Curtis Fuller(tb)、Kenny Drew(p)、Paul Chambers(b)、Philly Joe Jones(ds)
  • 代表曲:Blue Train、Moment's Notice、Lazy Bird

深掘りポイント:ブルー・トレインはコルトレーンの初期の「ビバップ/ハードバップ」系の力量が光る作品で、メロディの強さとアンサンブルのタイトさが魅力です。「Moment's Notice」のような速いテンポの曲でのコルトレーンのフレージングは、後の「シート・オブ・サウンド」へ続く萌芽が見えます。

聴き方のヒント:まずはテーマとソロのコントラストに注目。リー・モーガンやカーティス・フラーとの呼吸、リズム隊(Chambers/Jones)の推進力を味わってください。

2. Giant Steps(1960)

概要:コルトレーン・チェンジ(急速な和音進行)で知られる代表作。ジャズ理論的にも重要なアルバムで、彼の作曲能力と技術が頂点に達した時期の記録です。

  • 主なメンバー:John Coltrane(ts)、Tommy Flanagan / Wynton Kelly(p、曲により異なる)、Paul Chambers(b)、Art Taylor(ds)
  • 代表曲:Giant Steps、Naima、Cousin Mary

深掘りポイント:「Giant Steps」曲自体は短いが密度が高く、トーナルセンターが高速で移動する「コルトレーン・チェンジ」が特徴。Naimaは静謐で感情深いバラードで、対照的にコルトレーンの表現幅を示します。

聴き方のヒント:「Giant Steps」を反復して聴くことで和音進行の動きを体感してください。技術的側面だけでなく、テンションとリリックさの同居が彼の魅力です。

3. My Favorite Things(1961)

概要:ソプラノ・サックスを主要楽器として用い、大衆的なスタンダード曲をモダンに変換したアルバム。Coltraneの新たな音色探求が本格化した作品です。

  • 主なメンバー:John Coltrane(sop/ts)、McCoy Tyner(p)、Steve Davis(b)、Elvin Jones(ds)
  • 代表曲:My Favorite Things(特大ヒット)、Summertime(アルバム版)

深掘りポイント:オペラやミュージカルの曲を長尺のモーダル解釈で演奏することで、テーマの反復と即興の詩的変奏が際立ちます。特にタイトル曲はコルトレーンの「もうひとつの顔」を世界に示しました。

聴き方のヒント:長尺トラックの中でテーマがループする際の変化を追ってください。マッコイ・タイナーの和音、エルヴィン・ジョーンズのポリリズムがソプラノに絡む様子が聴きどころです。

4. Olé Coltrane(1961)

概要:スペインや北アフリカの民俗風味を取り入れたモーダル志向の作品。編成にトランペット、エリック・ドルフィーなどが参加し、音色と編成実験が豊富です。

  • 主なメンバー:John Coltrane(ts)、Freddie Hubbard(tp)、Eric Dolphy(as, bcl)、McCoy Tyner(p)、Reggie Workman(b)、Elvin Jones(ds)
  • 代表曲:Olé、Dahomey Dance

深掘りポイント:オリエンタル/地中海的なリズムとモードを背景に、コルトレーンは自由度の高い即興へ踏み込みます。エリック・ドルフィーの異色の音色も加わり、アルバム全体が異国的で先鋭的。

聴き方のヒント:リズムとモードの繰り返しを土台に、各ソロのアプローチの違い(トーン、モティーフの発展)を比較してみてください。

5. Ballads(1962)

概要:コルトレーンの「歌心」が前面に出たバラード集。極めて抑制された演奏と美しい音色で、強烈な即興技巧だけではない側面を示す作品です。

  • 主なメンバー:John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)
  • 代表曲:I Wish I Knew、You Don't Know What Love Is、If I Should Lose You

深掘りポイント:音量や速度を抑えた演奏は、フレーズの一音一音が意味を持ちます。切なさと静謐さに満ちたこのアルバムは、コルトレーンが「歌うサックス奏者」として成熟していることを示します。

聴き方のヒント:フレーズの息づかい、アタックの柔らかさ、タイミングの微妙な遅れ(ルバート的瞬間)に耳を傾けてください。感情表現の細部が光ります。

6. Crescent(1964)

概要:A Love Supremeの直前に位置する、深い瞑想性と陰影を帯びた作品。四重奏(タイナー/ギャリソン/ジョーンズ)とのコミュニケーションの成熟がうかがえます。

  • 主なメンバー:John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)
  • 代表曲:Crescent、Wise One、Bessie's Blues

深掘りポイント:曲全体に流れる憂愁と祈りのような空気は、A Love Supremeへと向かう精神的高まりの過程を感じさせます。フレーズの間の静けさとダイナミクスの幅が聴きどころです。

聴き方のヒント:アルバムを通して「余白」を感じること。ソロの前後にある沈黙や小さな動きが、曲全体のドラマを作っています。

7. A Love Supreme(1964/1965)

概要:コルトレーンの宗教的覚醒を表現した四部構成の大作。ジャズの枠を超えて広く評価される代表作で、精神性(スピリチュアリティ)と音楽が一体化しています。

  • 主なメンバー:John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)
  • 構成:Acknowledgement → Resolution → Pursuance → Psalm(四部構成の組曲)

深掘りポイント:一連のモチーフ(特にAcknowlegementのリフと「ファースト・モチーフ」)が全体を通して種となり、即興がその周りで開花します。最後の「Psalm」ではコルトレーンが楽譜を「祈りの文」として語るかのように演奏します。

聴き方のヒント:全曲を通して一つの物語として聴くのが最善です。各部の役割(導入→展開→クライマックス→黙想)を意識して聴くと、より深く届きます。

8. Ascension(1966)

概要:コルトレーンのフリー/アヴァンギャルド路線を代表する大型編成の実験作。集団即興によるエネルギーの爆発が特徴で、賛否を呼んだ問題作でもあります。

  • 主なメンバー:John Coltrane、Pharoah Sanders、Freddie Hubbard、Marion Brown、John Tchicai、Garnett Brown ほか(大編成)
  • 代表曲:Ascension(アルバム全体が一連の大曲)

深掘りポイント:全員による即興の密度と強度は圧倒的で、伝統的構造を放棄した瞬間の生々しさを伝えます。コルトレーン自身のサウンドもより荒々しく、倍音や叫びに近い表現が増えます。

聴き方のヒント:従来のメロディやコード進行を期待すると戸惑います。音の「群像劇」として聴き、個々のソロが全体にどんな「テクスチャ」を与えるかを観察してください。

まとめ:時代と精神の旅

ここで取り上げた作品群は、コルトレーンの音楽的変遷(ハードバップ→モーダル→スピリチュアル/フリー)を辿るうえで非常に有効です。入門者はまずBlue TrainやMy Favorite Things、Giant Stepsあたりから入り、A Love Supremeを聴いて精神性の高さに触れ、さらにAscensionで挑戦的な側面を体験する――という流れをおすすめします。

重要なのは「一枚ずつ丁寧に聴くこと」。短時間で済ませず、反復して聴くことでコルトレーンが曲の中で何を発見し、何を捨てているのかが見えてきます。

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参考文献