ジョー・ヘンダーソン必聴レコード厳選ガイド — ブルーノート期から晩年までのおすすめ盤と聴きどころ

イントロダクション — ジョー・ヘンダーソンという巨匠

Joe Henderson(ジョー・ヘンダーソン、1937–2001)は、モダン・ジャズを代表するテナー・サックス奏者の一人です。長いキャリアの中でブルーノート期の硬質で先鋭的な演奏から、1970年代以降の多様な表現、1980年代以降の円熟したトリオ演奏まで、幅広い音楽性を示しました。本稿では「レコードで聴くと特に面白い」おすすめアルバムを厳選し、それぞれの魅力、聴きどころ、収録曲ハイライトを深掘りしていきます。

おすすめレコード(代表盤)

Page One (Blue Note, 1963)

ヘンダーソンのリーダー作デビュー盤として知られる一枚。モダン・ジャズの骨格を保ちつつ、メロディとリズムに鮮やかな個性が光ります。特に「Blue Bossa」はジャズのスタンダードになり、ヘンダーソンのネーミング・センスとソロの構築力がよくわかります。

  • 主な収録曲:Blue Bossa、Recorda Me、La Mesha など
  • 聴きどころ:曲ごとに切り替わるフレーズの輪郭、メロディに対する創意。ブルーノート初期の録音らしいクリアな音像も魅力。
  • おすすめポイント:ヘンダーソンの作曲能力と、フロントのインタープレイ(トランペット等)との化学反応を楽しめる入門盤。

Inner Urge (Blue Note, 1964)

より内省的で複雑なハーモニーを展開する名盤。表題曲「Inner Urge」はヘンダーソン作の代表作のひとつで、旋律の強度と緊張感あるリズムが特徴です。全体にアグレッシブで知的な雰囲気が漂います。

  • 主な収録曲:Inner Urge、Isotope 他
  • 聴きどころ:モーダルな進行やテンションの使い方、ヘンダーソンのフレーズ構築術。作品としての統一感が高く、アルバム通して聴く価値がある。
  • おすすめポイント:演奏の強度・革新性を味わいたい中級者以上のリスナー向け。

Mode for Joe (Blue Note, 1966)

ブルーノート期の傑作。豪華なフロントライン(トランペット+トロンボーン)を擁し、ハード・バップ的なグルーヴとモーダルな探求が同居します。完成度の高いアンサンブルワークと個々のソロの聴き応えが魅力です。

  • 主な収録曲:Mode for Joe(タイトル曲)、A Shade of Jade 等
  • 聴きどころ:ホーン・アンサンブルの力量、ヘンダーソンのリード・ライン、ソロの起承転結。ブルーノートならではの録音クオリティも秀逸。
  • おすすめポイント:ブルーノート黄金期のサウンドを堪能したいリスナーに最適。

Power to the People (Milestone, 1969)

70年代に向かう過渡期を映した作品で、エレクトリックな要素やファンク寄りの感覚を取り入れた曲も含みます。ヘンダーソンが当時のジャズの潮流をどのように咀嚼していたかがよくわかる一枚です。

  • 主な収録曲:Power to the People、Black Narcissus など
  • 聴きどころ:テナーのサウンドがより太く、リズム・セクションとのグルーヴ感が前面に出る場面が多い点。
  • おすすめポイント:60年代ブルーノート期とは違う、ソウル/ファンク的要素を取り入れた音像に興味がある方に。

The State of the Tenor, Vols. 1–3(Live at the Village Vanguard, 1985)

1980年代に入ってからの、ヘンダーソンの円熟を示すライヴ録音。シンプルなトリオ編成で、楽曲の本質と即興の深さが浮かび上がります。これにより再評価が進み、若い世代にも影響を与えました。

  • 主な収録曲:スタンダード中心の選曲で、長尺のソロが展開される。
  • 聴きどころ:トリオゆえに生まれる緊張感と対話。テーマの語り直しや余白の使い方に成熟を感じる。
  • おすすめポイント:ライブならではのスリルと、ヘンダーソンの「聴かせる」側面を深く味わえる。

Lush Life: The Music of Billy Strayhorn(1991–1993録音/1992〜1998頃発売の盤あり)

晩年に近い時期のリリースで、ビリー・ストレイホーンの曲をテーマにした解釈集。バラードや繊細なアレンジを通じて、ヘンダーソンのリリカルな側面が強く表れます。柔らかく情緒的なサックスを味わいたいときにおすすめです。

  • 主な収録曲:Lush Life 他ストレイホーン作品群
  • 聴きどころ:レパートリー曲を深く慈しむようなフレーズ、ニュアンスに富んだビブラートとタイム感。
  • おすすめポイント:バラード中心の静かな一面を知りたいリスナーに。

選盤のガイド — どのアルバムから聴くか

入門:まずは「Page One」「Mode for Joe」を。これらはヘンダーソンのソロと作曲、バンド・アンサンブルの魅力がまとまっているため、最初に触れるには最適です。

探究:モード的な先鋭性や難解さを味わいたいなら「Inner Urge」。

ライヴの醍醐味:生のインタープレイを体感したければ「The State of the Tenor」シリーズ。

抒情面:バラードや歌心を求めるなら「Lush Life」など晩年作がおすすめです。

聴きどころの具体的なポイント

  • フレーズの構造を見る:ヘンダーソンは短い動機から発展させるのが上手い。テーマ〜展開〜まとめの流れを意識して聴くと独特の語り口がわかります。
  • リズムの裏取り:テンポのグルーヴ感と拍の取り方に工夫があり、同じフレーズでも伴奏との関係で表情が変わります。
  • 音色の変化を追う:柔らかい吐息のような音から力強いフォルテまで、音色の幅が大きいのが特徴。曲ごとにどの側面を前面に出しているかを比べてみてください。
  • アンサンブルとの対話:ブルーノート時代のホーン・アンサンブルや、トリオでの余白の使い方など、編成ごとの聴き方の違いを味わうと深みが増します。

リスニングのヒント(具体的なトラックでの注目点)

  • "Blue Bossa"(Page One)— メロディの簡潔さとその背後でのハーモニーの動き、どこでソロが転換するかに注目。
  • "Inner Urge"(Inner Urge)— 主題の緊張感とソロ中のダイナミクス(高揚から沈静への移行)を追う。
  • "Mode for Joe"(Mode for Joe)— ホーンの重ね合わせ、アンサンブルの色彩感を探る。
  • ライブ音源(State of the Tenor)— テーマ再提示のときの「余白」や、長尺ソロ中のモチーフ変奏に注目。

最後に — ジョー・ヘンダーソンの魅力とは

ヘンダーソンは「テナー・プレイヤーとしての個性(音色・フレーズ)」「作曲能力」「編曲やアンサンブルとの相互作用」の三つが高いレベルで結実した稀有な存在です。時代ごとに表情を変えながらも一貫して知性と情感を併せ持った演奏を残しており、レコードで聴くことでその変化と連続性をより鮮明に感じ取れます。

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参考文献

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