エンニオ・モリコーネのレコードおすすめ7選|アナログLPで聴くべき名盤と盤選びのコツ
序文 — 映画音楽を超えた作曲家、エンニオ・モリコーネ
エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)は、スパゲッティ・ウエスタンでの革新的なサウンドから、叙情的なオーケストレーション、前衛的な音響実験まで、幅広い表現で映画音楽の常識を塗り替えた作曲家です。ここでは、レコード(アナログLP)で聴く価値の高い推薦盤を厳選し、各盤の聴きどころ、歴史的背景、選ぶ際のポイントをできるだけ深掘りして紹介します。
おすすめ盤の選び方(簡潔に)
- サウンドトラック盤とスコア盤の違い:映画の劇中音源を収録した「オリジナル・サウンドトラック(OST)」と、映画用に書かれた楽曲を再構成/演奏した「スコア盤(再録音)」が混在します。コレクションの目的(劇中音を重視するか、音楽そのものの演奏を重視するか)で選びましょう。
- オリジナル盤の魅力:当時のミックスやアートワーク、独自のドキュメント性があります。音質は必ずしも最新リマスターに勝るとは限りませんが、歴史的価値が高いです。
- 公式リマスター/再発盤:リマスターによるダイナミクス改善やノイズ低減が期待できます。作品によっては別テイクや未発表曲が追加されることも。
- 注意点:コンピレーションや編集盤は雰囲気は掴めますが、オリジナルのトラック順や未編集版を求めるならOSTやスコアの初出盤・公式再発を狙いましょう。
1. The Good, the Bad and the Ugly(『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』) — 1966
代表作中の代表作。冒頭の「The Ecstasy of Gold」や主題のホイッスルとトランペットによるフレーズは、モリコーネの代名詞とも言えます。セルジオ・レオーネとの黄金期を象徴する一枚で、スパゲッティ・ウエスタンのサウンドが完成された瞬間です。
- 聴きどころ:主題(テーマ)、「The Ecstasy of Gold」の劇的な展開、効果音的なパーカッションと人声の使い方。
- 背景:西部劇的な空間を音で再構築し、楽器の非定型な使い方(口笛、人声、エレキギター)で新しい語法を作りました。
- 盤選び:当時盤(1960年代イタリア盤)はアートワークや収録順に魅力がありますが、音質はリマスター再発が安定していることが多いです。
2. Once Upon a Time in the West(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』) — 1968
叙情性と劇的表現が極まった名作。主題歌の静謐さと「Man with a Harmonica」の緊張感は、映画音楽を「映画の延長としての音楽」へと昇華させました。フランコ・デ・ジェミニ(ハーモニカ奏者)やソプラノ人声の使い方も印象的です。
- 聴きどころ:ラウラのテーマ(女性の主題)の美しさ、ハーモニカとオーケストラのコントラスト、長尺で劇的な配置。
- 背景:映画の視覚性に完全に寄り添う設計で、サウンドトラック単体で聴いても物語性が伝わります。
- 盤選び:楽曲のダイナミクスを活かしたマスターを用いたリマスター盤が聴きやすいです。
3. Once Upon a Time in America(『ニュー・シネマ・パラダイス』とは別の傑作) — 1984
ロバート・デ・ニーロ主演作のためのスコアで、モリコーネの“哀愁の旋律”が極まった作品です。「Deborah's Theme」や「Cockeye's Song」など、映画の記憶を音だけで蘇らせる力があります。映画の多層的な時間構造を音楽で補完している点が聴きどころです。
- 聴きどころ:ピアノや弦楽器を基調とした叙情、メランコリックな主題の反復と変奏。
- 背景:80年代における映画音楽の集大成的作品の一つで、モリコーネのメロディーメーカーとしての才能が顕著。
- 盤選び:劇場公開版とサウンドトラック版で曲順や収録時間が異なることがあるため、収録内容を確認しましょう。
4. The Mission(『ミッション』) — 1986
「Gabriel's Oboe」は映画音楽史に残る名曲。宗教的で崇高な雰囲気と、民俗音楽的要素が混じり合った独特のサウンドは、モリコーネの多面性を示します。オーボエや合唱の使い方が際立つ一枚です。
- 聴きどころ:Gabriel's Oboe のソロ、合唱とオーケストラの対話、ラテン系民俗楽器の色付け。
- 背景:歴史・宗教・自然の風景を音で表現する試みが成功している作品で、映画音楽としてだけでなくコンサートレパートリーとしても親しまれています。
- 盤選び:映画音源に近いオリジナル盤と、演奏を洗練させた再録盤の違いを聴き比べるのも面白いです。
5. Cinema Paradiso(『ニュー・シネマ・パラダイス』) — 1988
トッタロットル(映画への愛)を音にしたような温かいスコア。映画のノスタルジーを包む柔らかな弦とメロディーは、映画音楽のポピュラー性を象徴します。親しみやすさと深さを両立した一枚です。
- 聴きどころ:テーマの素朴な美しさ、短いモチーフの反復による記憶の呼び起こし。
- 背景:国際的に広く愛される作品で、モリコーネの「映画と観客を結ぶ」手腕がよく表れています。
- 盤選び:サウンドトラックは複数バージョンが存在するため、好きな編集(劇中版/拡張版)を確認しましょう。
6. A Fistful of Dollars / For a Few Dollars More / The Good, the Bad and the Ugly(スパゲッティ・ウエスタン三部作のBOXや編集盤)
レオーネ3部作をまとめて楽しめる編集盤やBOXセットは、モリコーネの西部劇的語法を体系的に把握するのに最適です。テーマの類似や発展、モチーフの使い回しが見えてきます。
- 聴きどころ:各作品に共通するモチーフの変奏、俳優のキャラクターと音楽の関係性。
- 背景:3作を通して聴くことで、モリコーネの手法(楽器選定、声の使い方、リズムの配置)が体系的に学べます。
- 盤選び:BOXの内容はラベルやリリースによって差があるため、曲目・マスター情報を確認すると良いです。
7. The Hateful Eight(2015) — 後期の傑作(新作スコア)
タランティーノのために新作を書き下ろした作品で、アカデミー賞を受賞しました。冷たく厳しい室内劇の緊張感を音楽で補強する、後年の成熟した作風が光る一枚です。
- 聴きどころ:冷たい管楽器の色彩、サスペンスを煽る不協和音とリズムパターン。
- 背景:晩年に至っても新しい映画へ積極的に取り組み、古典的技巧と現代的感覚を融合させた点が興味深いです。
- 盤選び:新作のためオリジナル発売盤でも音質は高く、複数のフォーマット(アナログ再発を含む)が存在します。
聴きどころの深掘り — モリコーネ独自の語法
- 「音と効果」の境界を曖昧にする手法:口笛や生活雑音風の効果を音楽に取り込むことで、劇音楽としての即時性を高めます。
- ヴォーカルの役割:合唱やソプラノは単なるメロディの再生ではなく、空気感や宗教性、民族性を付与するテクスチャとして機能します。
- 短いモチーフの変奏:キャラクターや場面の心理を短い動機で表現し、それを微妙に変化させて物語を進行させる手腕が上手です。
盤の選び方(もう少し詳しく)
- オリジナルのOSTを狙うなら:当時の収録・ミックスを楽しみたいコレクター向け。アートワークやインナースリーブの情報も価値になります。
- 音質重視なら:公式リマスターやクリアなマスターを謳う再発(プレス・仕様を確認)を選ぶと良いでしょう。近年の180gプレスやアナログ・リマスター盤は制作品質が高いことが多いです。
- 楽曲構成を重視するなら:編集盤やベスト盤は短時間で代表曲を押さえられる反面、映画本来の流れや未公開テイクを見逃すことがあります。
終わりに — レコードで聴く価値
モリコーネの音楽は「場」の作り方が巧みで、アナログのダイナミクスや空間表現と相性が良い作品が多いです。アルバム単位でじっくり聴くと、映画の映像が脳内で再構築されるような体験が得られます。まずは代表作から一枚手に入れて、彼のメロディと音響実験の幅広さを味わってください。
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