Klaus Schulzeの名盤を徹底解説—ベルリン・スクールの長尺電子音楽をレコードで聴くおすすめガイド
Klaus Schulze — レコードで聴くべきおすすめ作品と深掘りガイド
ドイツの電子音楽家クラウス・シュルツェ(Klaus Schulze)は、ベルリン・スクールの先駆者であり、シンセサイザー/シーケンサーを用いた長尺の即興的な音響構築で知られます。本稿では、彼の代表作・名盤をピックアップし、それぞれの聴きどころ、作品が持つ文脈や特徴、レコードで聴く意義について掘り下げます。長尺で瞑想的な作風が多いため、「どこから入るか」「何を期待するか」を示した上で紹介します。
一言で捉えるクラウス・シュルツェの魅力
- 長大な構築:1曲が20〜60分に及ぶことがあり、時間をかけて変化する音の風景を楽しむタイプ。
- 変遷するサウンド:初期はオルガンやテープ処理を活用した実験的なドローンから、1970年代中盤以降のシーケンサー/シンセ中心のリズム感ある作品へと進化。
- 瞑想性とドラマ性の両立:アンビエント的な静寂と、シーケンスによる推進力やドラマが同居。
- 影響力:テクノ、アンビエント、ニューエイジ、現代的なエレクトロニカにまで及ぶ広い影響。
おすすめレコード(厳選)
Irrlicht (1972)
聴きどころ:クラウス・シュルツェのソロ・デビュー作で、まだシンセサイザーが前面に出る前の実験作。オルガン、ライヴ・オーケストラートラックのような加工、テープループやエフェクトで作られた“音の風土”が特徴です。ロックや現代音楽、電子の狭間に位置する作品で、シュルツェの「音で場を作る」という基本姿勢が早くも示されています。
- おすすめポイント:電子音楽の古典的出発点を体感できる作品。序盤の不穏で朧なテクスチャーは唯一無二。
- 代表的な聴取方法:アルバム1枚を通して「一つの風景」を味わうつもりで。
Cyborg (1973)
聴きどころ:より電子的、シンセ寄りになり、長尺のドローンとモジュラ的なテクスチャーが展開されます。まだシーケンサー全開の時代ではありませんが、音響の密度を操作してドラマを生み出す技法が明確です。
- おすすめポイント:Irrlichtからの進化を追う一枚。暗く機械的な美学が好きなリスナーに特に刺さります。
Timewind (1975)
聴きどころ:シュルツェの“古典”の一つ。長尺2トラック構成で、シーケンスとメロディの拡張がじっくり展開。従来の実験性から、より「音楽的なドラマ」を持つ大作へと到達しています。シンセの深いサステインと微妙な変化が時間経過で強いカタルシスを生みます。
- おすすめポイント:ベルリン・スクールの成熟形を感じられる重要作。長時間の没入を前提とした音楽体験。
- 注目点:構造の単純さと微細な音色変化で聴き手の感情を動かす手腕が冴えます。
Moondawn (1976)
聴きどころ:シーケンサーを本格的に導入し、リズム感とメロディがバランスした作風。キーボードのうねりに乗るシーケンスと、ドラマティックなパッドが夜景のような煌めきを作ります。Harald Großkopf(ハラルド・グロースコフ)などとの共演で人間味ある推進力が加味されています。
- おすすめポイント:シュルツェの“ダンス寄りではないが推進力のある”作品を体験したい人に最適。
- 聴きどころ:繰り返されるモチーフが徐々に色づき、感情の高まりを作る構成。
X (1978)
聴きどころ:ダブルLP相当の組曲的作品で、各パートは詩的・絵画的なタイトルを持つ。より壮大で多面的なサウンドスケープが広がり、オーケストレーション的な広がりを電子音で表現する試みが見られます。
- おすすめポイント:シュルツェの構成力と叙情性が凝縮された野心作。アルバムを通じての物語性を楽しめます。
Dune (1979)
聴きどころ:フランク・ハーバートの小説『デューン』にインスパイアされた楽曲群(映画音楽ではなく独立した解釈)。シネマティックで叙情的、かつ暗い砂漠のような広がりを持つ音像は、後年の映画的電子音楽にも通じるものがあります。
- おすすめポイント:物語性ある電子音響を求める人に。映画的・叙事的な展開が好みのリスナーに刺さります。
Audentity (1981)
聴きどころ:1980年代に入ってからの作品で、シンセ技術の進化を反映しつつもシュルツェ自身の「長尺で展開するドラマ性」は保たれています。デジタル寄りの音色やリズムが強まり、時代性を感じさせる作風。
- おすすめポイント:70年代クラシック群から“その後”の音像に触れたい場合の架け橋となるアルバム。
各作品の選び方・聴く際のポイント
- 「初めてなら」:Timewind、Moondawnあたりが入りやすい。構成が明快で長時間でも没入しやすい。
- 「実験/最初期を探るなら」:Irrlicht、Cyborg。シンセ以前の発想やテープ操作の美学を楽しめる。
- 「叙事性/映画的な音像が好み」:DuneやXをじっくり。物語を想起させる音の進行が魅力。
- 「80年代以降のサウンド」:Audentityなど、デジタル時代の音色が出てくる作品を選ぶと変遷が分かる。
- 「長尺作品の聴き方」:一部を飛ばすより、最初から終わりまで流すことをおすすめします。時間経過で形成される“場”が核心です。
盤選びについての考え方(音楽的観点)
ヴィンテージ・プレスとリイシューのどちらを選ぶかは、音質/音色の好みや収集性次第です。1970年代のオリジナル・プレスは時代の空気とテープ録音由来の暖かみがあり、当時の制作意図を直接感じられます。一方、公式リイシュー(リマスター盤)はノイズ低減や音の帯域調整で現代の再生環境にマッチしやすく、細部が聴き取りやすいことが多いです。どちらを選ぶかは「当時の雰囲気を重視するか」「音のクリアさを重視するか」で決めると良いでしょう。
補足:ライブ作品とボックスセット
シュルツェはスタジオ作の他にライブ録音や膨大なアーカイブを含むボックスセット(例:Silver EditionシリーズやHistoric Editionなど)を出しています。スタジオ・アルバムで彼の構成力を味わったら、ライブ録音で即興の緊張感や変奏の妙を追うのもおすすめです。特にライブではスタジオ盤では出ない即興の局面やノイズ処理、演奏上の決断が垣間見えます。
クラウス・シュルツェを深く聴くために
- 時間を確保する:長尺作品は短時間での繰り返し視聴には向きません。集中して1枚を通して聴く習慣を作ると新たな発見があります。
- 環境を変える:ヘッドフォン/スピーカーや再生ボリュームを変えることで、テクスチャーの印象が大きく変わります。
- 他作品との比較:同時代のタンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)やピエール・アンリ、ブライアン・イーノなどと比較すると、ベルリン・スクール内でのシュルツェの位置づけが見えてきます。
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