TFカードとmicroSDの完全ガイド:規格・速度・耐久性・偽造対策を徹底解説
TFカードとは — 名前の由来とmicroSDとの関係
TFカード(TransFlashカード)は、携帯機器などで使われる超小型のフラッシュメモリカードの一種で、現在は一般的に「microSD(マイクロSD)カード」と同義で扱われます。もともと「TransFlash(トランスフラッシュ)」は2004年にSanDiskがMotorola向けに発表した名称で、2005年にSDアソシエーションが同仕様を取り込み「microSD」として標準化しました。つまり技術的・物理的にはTFカード=microSDカードであり、名称の違いは歴史的経緯によるものです。
外形・物理仕様
- 寸法:およそ15 mm × 11 mm × 1 mm(長さ×幅×厚さ)。
- 重さ:概ね0.2〜0.5 g 程度(製品により異なる)。
- 端子:microSDは標準的な接点を持ち、SDカードアダプタで標準サイズのSDカードスロットに挿せます(アダプタは単なる物理変換で電気的信号は同じ)。
容量規格とファイルシステム
microSD(TF)カードは容量とファイルシステムによっていくつかの世代に分かれます。各規格はSDアソシエーションの定義に準拠します。
- microSD(初期): 最大2GB、一般にFAT16でフォーマット。
- microSDHC: 4GB〜32GB、通常はFAT32でフォーマット。
- microSDXC: >32GB〜2TB(規格上)、通常はexFATでフォーマット。
- microSDUC: >2TB〜128TB(規格上、将来的拡張)。
注意点:古い機器はmicroSDHC/SDXCを認識できないことがある(特に32GB超を扱えない機器が多い)。機器の取扱説明書で対応容量・ファイルシステムを確認してください。
速度と性能指標(速度クラス)
カードの速度は主に次の表記で示されます。これは最低保証の連続書き込み速度やアプリ性能を示す目安です。
- 従来のクラス:Class 2 / 4 / 6 / 10(数値は最低保証のMB/s)。
- UHSスピードクラス:U1(≥10MB/s), U3(≥30MB/s)。UHSはバスの世代(UHS-I / UHS-II / UHS-III)によって最大転送速度が変わります(UHS-I 最大約104 MB/s、UHS-II 最大約312 MB/s、UHS-III 最大約624 MB/s)。
- ビデオスピードクラス:V6 / V10 / V30 / V60 / V90(動画撮影向けの連続書き込み保証)。
- アプリケーションパフォーマンス:A1 / A2(ランダムI/O性能を規定、A1: 読取1500 IOPS / 書込500 IOPS、A2: 読取4000 IOPS / 書込2000 IOPS)。スマートフォンでアプリを運用する場合に重要。
- SD Express / NVMeベースの微少カード:PCIe/NVMeを利用する新仕様で、理論上は最大数百〜約985 MB/sなどの高速転送を実現。
内部構造と寿命
microSDカードの内部はNANDフラッシュメモリと制御用コントローラから構成されます。NANDの種類(SLC/MLC/TLC/QLC)や3D NANDなどで耐久性が異なり、一般向け製品は容量重視でTLCやQLCが使われることが多いためP/Eサイクル(書換回数)には限りがあります。カード側ではウェアレベリングや不良ブロック管理により寿命を延ばしていますが、長期間の常時書き込み用途(ドライブレコーダーや監視カメラなど)には「高耐久(Endurance)」モデルが推奨されます。
用途別の選び方ガイド
- スマートフォンのストレージ拡張:アプリを多く使用するならA1またはA2のカード、写真・動画用なら容量とVクラスを重視。
- 写真撮影(連写・RAW)/ 一眼カメラ:高速のUHS-I U3、あるいはUHS-II対応カードを推奨(カメラ側が対応している場合)。
- 4K・8K動画撮影:少なくともV30(4K)やV60/V90(高ビットレート)を選ぶ。
- ドライブレコーダー・監視カメラ:高耐久モデルと一定以上の持続書込性能(メーカー指定のもの)を選択。
- データロギング・IoT機器:耐温度・高耐久仕様を検討。
互換性と注意点
- 機器のファームウェアが大容量・新規格に対応しているか確認する(特に古い端末は32GBまでしか認識しないケースあり)。
- カードを差し替える際は書き込み中の抜き差しを避ける。データ破損やカード故障の原因になる。
- カードの初回使用や機器を変えた場合、機器側からのフォーマットを推奨することが多い(ファイルシステムやアロケーションユニットサイズの最適化)。
- SDアダプタは単なる変換で、電気的には同じ規格のため速度はカード本体の性能に依存する。UHS-IIカードをUHS-Iスロットに入れると規格上はUHS-I速度に制限される。
偽造品・不良品対策と検証方法
特にオンラインマーケットでは容量を偽装した格安カードが流通することがあります。購入時の注意および購入後の検証方法は以下の通りです。
- 信頼できる販売店・正規代理店から購入する。大手ブランド(SanDisk, Samsung, Kingston, Toshibaなど)を選ぶ。
- 外観(刻印、パッケージ、シールの品質)や型番・シリアルの整合性を確認する。
- 購入後はH2testw(Windows)やF3(Linux/macOS)などのツールで容量・書込検査を行う。これらは本当に記録可能な領域をチェックし、偽装容量を検出するのに有効です。
- 実際の読み書き速度はCrystalDiskMark(Windows)やA1/A2のベンチマークツールで確認するのが良い。
フォーマットとデータ復旧、消去
カードを新しい機器で使うときは、機器側でフォーマット(消去)してから使用するのが最も確実です。WindowsやmacOSでもフォーマット可能ですが、exFATやFAT32など機器が期待するファイルシステムを選ぶ必要があります。誤ってデータを消してしまった場合、市販のデータ復旧ソフト(Recuva、PhotoRecなど)が有効な場合がありますが、上書きされたデータは復旧困難です。
実務上の運用ポイントとトラブル対策
- 重要データは複数箇所でバックアップする(microSDはあくまで可搬・補助ストレージ)。
- 定期的にカードの健康状態(読み書きエラーの有無)をチェックする。エラーが増えたら早めに交換する。
- 温度・湿度が厳しい環境では耐環境仕様のカードを使う。極端な低温や高温は故障の原因になる。
- 頻繁な書換えが発生する用途(ログ取り等)では高耐久モデルや産業用カードを選定する。
まとめ
TFカードは歴史的な名称で、現在はmicroSDカードとして広く知られる超小型のフラッシュメモリカードです。容量や速度、耐久性、用途に応じた規格(microSDHC / microSDXC / SDUC、速度クラス、A1/A2、Vクラスなど)を理解して選ぶことが重要です。特に動画撮影や常時録画など負荷の高い用途では速度と耐久性を重視し、偽造品対策や定期的なバックアップ運用を徹底することで安定した運用が可能になります。
参考文献
- TransFlash - Wikipedia(日本語)
- microSD - Wikipedia(日本語)
- SD Association(公式サイト)
- SanDisk: microSD 製品情報(メーカー)
- H2testw(容量検査ツール、ダウンロード)
- F3 (Fight Flash Fraud) - GitHub(偽造容量検査ツール)


