ジュリアン・ブリームの生涯と影響:ギターとリュートで拓く20世紀の古楽復興

ジュリアン・ブリーム(Julian Bream) — プロフィール

ジュリアン・ブリーム(Julian Bream、1933年7月15日 — 2020年8月14日)は、イギリス出身のクラシック・ギタリスト兼リュート奏者で、20世紀のギター音楽の復興と拡張に大きく貢献した人物です。バロックやルネサンスの古楽から現代作品まで、幅広いレパートリーを高い音楽性で提示し、演奏技術・音色表現・レパートリーの面で後続の世代に強い影響を与えました。

経歴の概略

  • ロンドン生まれ。若年よりギターに親しみ、やがて本格的に演奏活動を開始。
  • リュート演奏や古楽研究にも深く関わり、ルネサンスやバロックの作品を積極的に演奏・録音。
  • 20世紀の作曲家に作品委嘱や演奏機会を与えたことでも知られ、特にベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten)のギター独奏曲「Nocturnal(夜想曲)」(1963年)はブリームのために書かれ、彼の代表的レパートリーになりました。
  • レコーディングは主にEMIをはじめとする主要レーベルで行い、多くの名盤を残しました。

演奏の魅力・特徴

ブリームの演奏は、ただ技巧的であるだけでなく、音色の豊かさと深い詩情で聴衆を惹きつけます。以下の点が特に魅力です。

  • 音色の多様性:右手の指使い、爪と肉の使い分けによって幅広い音色を生み出し、弦楽器としての「歌う」表現を実現している点。
  • フレージングと間(ま)の取り方:呼吸感のあるフレーズ作り、余韻や沈黙を効果的に使うことで楽曲のドラマ性や内面性を強調します。
  • 歴史的音楽観と現代作品の同居:ルネサンスやバロック作品では原典的・歌心ある演奏を示しつつ、現代作品においては作曲者の語法を理解し新しさを生かす柔軟さを持っている点。
  • 楽器へのこだわり:伝統的なトーレス型や現代製作家による楽器を使い分け、その音色を楽曲に合わせて最適化した演奏をします(例:デイヴィッド・ルビオなどのリュート/ギター製作家と関係があったことが知られています)。

レパートリーと代表作・名盤

ブリームは幅広い時代の作品を取り上げました。ここでは特に知られるものを挙げます。

  • ルネサンス/リュート作品:ジョン・ダウランド(John Dowland)などのリュート歌曲・リュート曲。ブリームのダウランド録音はリュート音楽の魅力を伝える重要な記録です。
  • バロック:J.S.バッハのリュート組曲やバロック期作品のギター編曲・演奏。バッハの深い表現をギター/リュートで示しました。
  • 近現代作品:ベンジャミン・ブリテンの「Nocturnal, Op.70(夜想曲)」はブリームのレパートリーの中でも特に評価が高く、彼の演奏によりこの作品はギター現代レパートリーの金字塔となりました。
  • ギター・デュオ/室内楽:ジョン・ウィリアムズ(John Williams)とのデュオ録音や、室内楽での共演も多く、ギターのアンサンブル可能性を拓きました。

おすすめの入門盤(代表例)

  • ベンジャミン・ブリテン:Nocturnal(ブリームによる演奏) — ブリテン作品の代表的解釈。
  • ダウランド/リュート曲集 — ブリームのリュート演奏を知るうえで大切な録音。
  • バッハのリュート/ギター作品集 — バッハ解釈の深さを感じられる演奏群。
  • ブリーム&ジョン・ウィリアムズの共演盤 — ギター・デュオの魅力を堪能できる一枚。

芸術的貢献と影響

  • レパートリー拡充:作曲家にギター作品の委嘱を促し、ギターのための現代曲を拡大しました(ブリテンの代表作など)。
  • 古楽の普及:リュートやルネサンス音楽への関心を高め、古楽復興運動に寄与しました。
  • 教育的影響:演奏録音やコンサートを通じて、多くの若手ギタリストに演奏観や音楽性の模範を示しました。
  • 録音による遺産:高品質なスタジオ録音とライブ録音を多数残し、今日の演奏家・聴衆にとって重要な参照点となっています。

聴きどころのガイド(聴き方のヒント)

  • 音色の変化に注目する:同じ旋律でも指の当てどころやニュアンスで音色が変わる点を聴き分けてみてください。
  • フレーズの終わり方と余韻:ブリームはフレーズの終わりを非常に大切にし、余韻の処理で楽曲の意味を深めます。
  • 対比を意識する:古典的な素材と現代作品を並べて聴くと、彼の解釈が時代を超えてどう一貫しているかが分かります。

まとめ

ジュリアン・ブリームは、単に卓越したテクニックを持つ演奏家というだけでなく、音楽の選択眼、音色に対する深い感覚、さらにはギター音楽そのものを拡張した点において20世紀を代表する音楽家の一人です。古楽から現代曲まで幅広く、しかも深く演奏するその姿勢は、現在のギター界においても多くの示唆を与え続けています。まずは代表的な録音を数枚聴いて、音色とフレージングの魅力を直接体感することをおすすめします。

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参考文献