Pavement(パヴェメント)徹底解説:結成から代表曲・サウンドの特徴・聴き方まで網羅
Pavement — プロフィールと概略
Pavement(パヴェメント)は、1989年にカリフォルニア州ストックトンで結成されたアメリカのインディー・ロック・バンドです。スティーヴン・マルクマス(Vo/G)、スコット・カンバーグ(通称Spiral Stairs、G/Vo)を中心に、初期にはゲイリー・ヤング(Dr)を擁し、のちにボブ・ナスタノヴィッチ(per/vo)、マーク・イボルト(B)、スティーヴ・ウェスト(Dr)などが加わりました。
結成とキャリアの歩み
- 結成:1989年、マルクマスとカンバーグを中心に活動を開始。
- 初期とブレイク:1992年のデビュー・アルバム『Slanted and Enchanted』でインディー・シーンの注目を集め、1994年の『Crooked Rain, Crooked Rain』で広く評価され、シングル「Cut Your Hair」などで認知度が向上しました。
- 中期以降:1995年の『Wowee Zowee』は実験的で方向性が多様になった作品として賛否を呼び、1997年の『Brighten the Corners』、1999年のプロデューサーにナイジェル・ゴドリッチを迎えた『Terror Twilight』を経て1999年に一度解散。
- 再結成:2010年に再結成ツアーを行うなど、断続的に活動を振り返る動きがあり、バンドの影響力は継続しています。
メンバーと役割(代表的な編成)
- Stephen Malkmus — リードボーカル、ギター、主要ソングライター。独特の語り口と乾いたヴォーカルが特徴。
- Scott "Spiral Stairs" Kannberg — ギター、ヴォーカル。マルクマスとは対照的なポップ寄り曲も提供。
- Bob Nastanovich — タンバリンやコーラス、補助的なパーカッションや“マスコット”的存在。
- Mark Ibold — ベース(中期以降参加)。その後他バンド(e.g. Sonic Youthの周辺)とも関わる。
- Gary Young / Steve West — ドラム。ヤングは初期のルーズな雰囲気を作り、ウェストは安定感を与えた。
サウンドと歌詞の特徴
Pavementの魅力は、いくつかの要素が同時に作用している点にあります。
- ルーズでラフな美学(Lo-fi的な質感):初期はレコーディングの粗さや即興的な演奏がむしろ音楽性を強調し、完璧さを求めない「スラッカー」的美学を体現しました。
- ギターの掛け合い:マルクマスとカンバーグのギターは時に不協和でありながらもフックを生む。コードワークやアンサンブルの“隙間”にメロディが顔を出す構造が多いです。
- 乾いたヴォーカルと語り口:マルクマスのヴォーカルは抑制が効いたトーンで、皮肉やユーモア、断片的イメージを混ぜた歌詞を淡々と歌い上げます。
- 言葉遊びと断片的な物語性:歌詞は明確にストーリーを語るというよりも、断片や状況描写、風景的なフレーズで感情や空気を生み出す傾向があります。
- 多様性と実験性:『Wowee Zowee』以降はより実験的で、ポップ、ノイズ、カントリーの断片が同居するなど、常に同じタイプの作品に留まらない点も魅力です。
代表曲・名盤(聴きどころ解説)
入門から深掘りまで、押さえておきたい作品をピックアップします。
- Slanted and Enchanted(1992)
デビュー作。ジャンク感と鮮烈なメロディが混ざった名盤で、インディー・ロックの金字塔的作品。例えば「Summer Babe」のような曲でPavementの基本的な魅力が示されています。
- Crooked Rain, Crooked Rain(1994)
商業的に最も広く知られる作品群を含むアルバム。キャッチーな「Cut Your Hair」や「Gold Soundz」「Range Life」など、メロディを押し出した曲が多く、バンドの“ブレイク”作とされます。
- Wowee Zowee(1995)
意図的にバラエティ豊かな楽曲を詰め込んだ“実験作”。一聴しただけでは掴みどころがないが、繰り返し聴くことで新たな発見があるアルバムです。
- Brighten the Corners(1997)/Terror Twilight(1999)
後期作として、より洗練されたアレンジやプロダクションの工夫が見られます。特に『Terror Twilight』はプロデューサーにナイジェル・ゴドリッチを迎え、異なる雰囲気が濃厚です。
- コンピレーション:Westing (By Musket and Sextant), Slanted and Enchanted: Luxe & Reduxe 等
シングル曲やデモ、レアトラックを通してバンドの多面性を楽しめます。コアなファンはB面やEP群から新たな魅力を発見することが多いです。
Pavementの魅力はどこにあるか
- 即興性と人間味:演奏の“抜け”や不完全さを肯定する姿勢が、聴き手に親近感と生々しさを与えます。
- メロディとゆるさのバランス:完璧なポップ性を目指すのではなく、緩い演奏の中に隠れたフックが見つかる愉しみがある。
- 言語的魅力:歌詞の断片的表現や言葉遊びが、聞き流すだけでなく何度も聴かせる要因になっています。
- 影響力:90年代以降のインディー・ロックやDIYカルチャーに対する影響は大きく、多くの後続バンドがPavementのアプローチを参照しています。
ライブとパフォーマンスの特色
ライブではルーズさがますます際立ち、予測不能なやりとりや冗談めいたMC、アドリブが含まれることが多いです。これはスタジオ盤とは異なる生の醍醐味を与え、ファンにとっては“その場限り”の体験価値が高いバンドでもあります。
聴き方ガイド:初めての人、深掘りしたい人へ
- 入口:まずは『Slanted and Enchanted』か『Crooked Rain, Crooked Rain』を1枚聴いてみる。キャッチーさと同時にバンドの核が見える。
- 深掘り:『Wowee Zowee』やB面集を聴くと、Pavementの実験性や守備範囲の広さを理解できる。
- 歌詞の楽しみ方:直訳的な意味よりも、フレーズの断片が作る“空気”を味わうとよい。何度も繰り返すことで新しい表情が出てきます。
- ライブ音源やデモ:荒削りな演奏や別テイクにPavementの核心が見えるため、ファンはスタジオ盤に加えコレクション的な音源も楽しみます。
影響と評価
Pavementは90年代のインディー・ロックの代表格として語られ、メインストリームの成功を追わない姿勢やDIY的精神が、以後の多くのバンドに模倣・参照されました。Criticsにも高く評価され、アルバムはしばしば“90年代の必聴作”リストに挙げられます。
まとめ
Pavementの魅力は、技術的完成度よりも個性と空気感、断片的な美学にあります。ルーズな演奏と鋭いセンスが同居するその音楽は、聴き手に発見と反復の楽しみを与え、インディー・ロック史に確固たる足跡を残しました。初めての人はまず代表作を、既に好きな人はシングルやB面、ライブ録音で深掘りすると新たな味わいが見つかるはずです。
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