Pale Saints を再発見する:シューゲイザー時代の名盤3選とレコードで味わう空間表現
はじめに — Pale Saints を改めて聴く理由
Pale Saints は1990年前後のイギリスのオルタナ/シューゲイザー系シーンを代表するバンドの一つです。4AD レーベルの傾向ともうまく噛み合い、透明感のある空間系ギターとメロディックなポップ感覚を同居させた音づくりで、多くのリスナーに愛されてきました。本コラムでは「レコードで聴くならこれを押さえたい」といった観点から、おすすめのアルバムを深掘りして紹介します。
バンドの簡単な位置づけ
Pale Saints はドリーミーで曖昧な音像(いわゆるシューゲイザー/ドリームポップ)に、ポップライティングの丁寧さを加えたスタイルが特徴です。ギターのレイヤーやエフェクト処理による“壁”を作りつつ、ヴォーカルはメロディを大事に出すため、曲ごとの聴きどころがはっきりしています。4AD の美意識とも親和性が高く、ジャケットや音像に統一感があります。
おすすめレコード 3選(名盤・必携盤)
The Comforts of Madness(1990)
デビューアルバム。シューゲイザー特有のエフェクティブなギター・サウンドと、そこに映えるメロディラインのバランスが非常に良く出た作品です。アグレッシブすぎない“うねる”ようなギター群と、内省的ながら耳に残る歌が同居しており、バンドの核となる魅力が詰まっています。レコードで聴くと空間の広がりや倍音のニュアンスが際立つため、初めて買うならこのアルバムから入るのがおすすめです。
注目ポイント:楽曲ごとのダイナミクス(静と動)の使い方、ギターの多層的テクスチャ。
In Ribbons(1992)
前作よりさらに実験性とドラマ性を増した2nd。曲構成が長めになり、空間処理やアレンジでより深い世界観を作り出す方向に振られています。シューゲイズ的な“音の壁”を維持しつつ、曲ごとの展開や楽器の使い分けが巧みになった印象で、バンドの成熟を感じさせる一枚です。LP で聴くと各トラックの奥行きと低域の再現が豊かで、アルバム全体を通しての流れを楽しめます。
注目ポイント:曲の長いパートでの空間演出、アンサンブルの厚みと細部のニュアンス。
Slow Buildings(1994)
3rd にあたる作品で、これまでのドリーム寄りの美学に新たなアプローチが加わったアルバムです。ポップ寄りの曲や、よりストレートにメロディを前面に出した曲もあり、バンドの音楽性の幅を見せています。ファンの間では賛否分かれる面もありますが、バンドの全体像を理解するうえで重要な一枚。ヴァイナルでの再生は、レコーディング/ミックスの違いがはっきり感じられ、アルバムごとの音像の変遷を追う楽しみがあります。
注目ポイント:ポップ性と実験性の混在、アルバムを通しての音作りの変化。
代表曲(入門的に押さえておきたい曲)
- Sight of You — バンドの魅力がストレートに出るシングル寄りのナンバー。メロディの良さと空間演出が分かりやすく出ています。
- (アルバム単位での流れを重視するなら)各アルバムの冒頭〜中盤あたりの楽曲群 — 単曲よりもアルバムのまとまりで聴くと Pale Saints の良さが伝わりやすいです。
レコードで聴く際のポイント(音楽的観点)
- 空間表現:エフェクトやアンビエンスの余韻が音場にどう残るかは、アナログ再生でとても楽しめます。アルバム全体の“距離感”を意識して聴くと、各楽器の定位やレイヤー感がよく分かります。
- ダイナミクス:静かなパートと音が厚くなるパートの差をレコードならではの滑らかさで感じられます。曲のデザイン(間の取り方)を味わうにはLPが向きます。
- マスタリング差:CD版とアナログ盤で印象が変わる場合があります。特に低域の出方や高域の伸びで曲の印象が異なることがあるので、試聴できるなら複数フォーマットを比べてみると面白いです。
収集のコツ(どのプレスを狙うか)
- 初回・オリジナルプレス:リリース当時の英国盤(4AD オリジナルプレス)はコレクター的価値が高く、マスタリングや音質の傾向も“当時の音”としての魅力があります。盤面の状態(VG+/NM など)は重視してください。
- 再発盤やリマスター盤:近年、4AD やリイシュー・レーベルで再発されることがあります。リマスターが施されている場合、現代的にバランスよく整えられていることが多く、プレイ用途なら狙い目です。
- 輸入盤の違い:日本の初回CD(帯付き)や国内盤はパッケージ面の魅力もあります。アナログはプレス国(UK / EU / US / Japan)で音の出方や重量、カッティング差が感じられることがあるので、好みに合わせて選ぶのが良いでしょう。
- 盤質確認:中古で買うなら針飛びやチリノイズの有無、ジャケットの状態、インナー等の付属物の有無を確認して購入することをおすすめします(メンテナンス方法自体はここでは触れません)。
まとめ — どこから始めるか
まずは「The Comforts of Madness」を軸に、次に「In Ribbons」で深い音像を味わい、最後に「Slow Buildings」でバンドの変遷を俯瞰する、という聴き方が自然です。Pale Saints は単発のヒット曲だけで語るよりも、アルバムを通しての音の作り込みやムードの変化を楽しむとより深く刺さるバンドです。レコードならではの音場感やテクスチャーが、その体験をいっそう豊かにしてくれます。
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参考文献
- Pale Saints — Wikipedia
- Pale Saints — 4AD(公式アーティストページ)
- Pale Saints — Discogs(ディスコグラフィ/リリース情報)
- Pale Saints — AllMusic(レビュー/バイオ)


