マイク・ブルームフィールド徹底解説:East-WestとSuper Sessionを軸に長尺インプロとブルース・ロックの革新を辿る名盤ガイド

マイク・ブルームフィールドとは

マイク・ブルームフィールド(Mike Bloomfield、1943–1981)は、アメリカのブルース/ロック・ギタリスト。1960年代のシカゴ・ブルース直系の語法をベースにしつつ、ジャズやモーダルな即興を取り入れた長尺のインスト演奏で先駆的な存在となりました。ポール・バターフィールド・ブルース・バンドでの活躍を足がかりに、エレクトリック・フラッグやソロ作、アル・クーパーとの共演盤などで幅広い活動を行い、当時のブルース・ロック/サイケデリック期に多大な影響を与えました。

聴く前に押さえておきたいブルームフィールドの特徴

  • メロディ志向のリード:単なる速弾きではなく、フレーズの語りかけ・歌うような表現を重視する。
  • モーダル/長尺インプロの導入:インド音楽やジャズからの影響を受けた、テーマ→展開→再帰という構成を取り入れる。
  • ブルース直系の語彙:シカゴ・ブルースの句法(コール&レスポンス、ベンディング、ブルーノート)を基盤にしている。
  • 音色は比較的素直で「歌う」トーンを重視。装飾よりもフレーズの持続感とダイナミクスで聴かせる。

おすすめレコード(名盤解説)

The Paul Butterfield Blues Band (1965)

ブルームフィールドが名を上げたデビュー作。シカゴ・ブルースの流れを都会的に再構築した力作で、ブルームフィールドの鋭いプレイが随所で光ります。

  • なぜ聴くか:ブルームフィールド初期の勢いや鳴りを知るには最適。バンド全体のアンサンブル感とギターの切り込むような存在感が同居する。
  • 注目ポイント:ボーカル曲の伴奏からソロへの流れ、ブルース語彙の使い方が学べる。
  • 代表曲(アルバム内でチェックしてほしい曲): 「Born in Chicago」など(アルバム全体でブルームフィールドの役割を感じてください)。

East-West — The Paul Butterfield Blues Band (1966)

ブルームフィールドの名を不朽にした傑作。特にタイトル曲「East-West」は、ブルースを出発点にモーダルな長尺インプロヴィゼーションへと展開し、ロック界における新たな瞬間を生み出しました。

  • なぜ聴くか:ブルームフィールドが即興で何を考えているか、どのようにモチーフを発展させるかが明確に聴ける作品。1960年代の“ジャム/実験”精神の代表例。
  • 注目ポイント:テーマ提示→変奏→ソロの構成、モードを使ったフレージング、バンドとのインタープレイ。
  • 代表曲: 「East-West」(必聴)

Super Session — Al Kooper & Mike Bloomfield (1968)

アル・クーパーとのセッション盤。即興色が強く、一発録りの雰囲気を保ったままブルームフィールドの多面的なアプローチが凝縮されています。ギター・トーンやフレーズの生々しさが魅力です。

  • なぜ聴くか:ブルームフィールドの「その場での会話力」を聴ける。ポップ/ブルース/ジャズ的要素が混ざり合う。
  • 注目ポイント:短いフレーズでの効率的な語り、休符の使い方、ダイナミクスのコントロール。
  • 代表的な聴きどころ:アル・クーパーとの対話的インプロ、ブルース基調のインストが中心。

A Long Time Comin' — The Electric Flag (1968)

ブルームフィールドが立ち上げたプロジェクト、エレクトリック・フラッグのリーダー作。ブルース、R&B、ソウル、ジャズを融合させた大編成サウンドで、ブルームフィールドはギターのみならず音楽全体の舵取り役を務めています。

  • なぜ聴くか:ギター以外の編曲的スケール感や、ブルームフィールドの多面性(アンサンブル志向)を知るための重要作。
  • 注目ポイント:ホーン・アレンジとの絡み、ソウルフルなフレーズとドライヴ感。
  • 代表曲:バンド色が強いが、ブルームフィールドの存在感は全編で確認できる。

It's Not Killing Me — Mike Bloomfield (1969)

ソロ名義のアルバムで、より歌もの寄り/プロダクション重視の試みが見られる作品。評価は割れるものの、ブルームフィールドの音楽的幅を示す重要な一枚です。

  • なぜ聴くか:ブルームフィールドが単なる“ギタリスト”を超えて、アーティストとしてどのように楽曲を構築したかを理解できる。
  • 注目ポイント:スタジオワーク、楽曲ごとのギター・アプローチの違い。

その他:参加作やライヴ録音も重要

ブルームフィールドはボブ・ディラン等のセッションにも参加しており、そうしたゲスト参加作や当時のライヴ録音を聴くと、彼がいかに“場”を変えるかがよく分かります。単作だけでなく参加作を含めてその足跡を辿ることをおすすめします。

名盤の聴きどころ(深堀ポイント)

  • フレーズの「呼吸」を聞く:ブルームフィールドのソロは、長く音を出し続けることよりも「間(ま)」や呼吸で物語を作ることが多い。
  • テーマと変奏の追跡:タイトル曲や長尺曲では、オリジナルのテーマがどのように変化・解体・再生していくかを追ってみると、即興の構造が見えてくる。
  • バンドとの会話を聴く:特にEast-Westなどでは、ベースやドラム、管楽器との相互作用が即興の方向性を決める。

ブルームフィールドが残した影響

60年代後半のブルース・リバイバルやブルース・ロック領域において、ブルームフィールドは「ギターで長尺即興をやっても成立する」という事例を示しました。ジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトンらと並ぶ“当時の世代”に影響を与え、以後のロック・ギタリストにとって即興の可能性を広げた点が大きな遺産です。

入手・聴き方のアドバイス(アルバム選びの基準)

  • まずは「East-West」と「Super Session」を聴く:ブルームフィールドの演奏哲学が最も分かりやすく出ている。
  • バンド・サウンドとソロ作を対比する:エレクトリック・フラッグの大編成志向と、ソロ名義の内省的な側面を比較することで人物像が立体的に見える。
  • 参加作も追う:ディランや他アーティストのセッション参加曲を聴くと、サポート時の“空気の作り方”が分かる。

まとめ

マイク・ブルームフィールドは「ブルースを深く理解しながらも、それを固定概念から解放して新たな即興表現へと向かわせた」ギタリストです。短いリフよりも物語るソロを好む人、モードや長尺インプロに興味がある人、60年代のアメリカン・ブルースの文脈を追いたい人にとって、彼の録音群は何度でも聴き返したくなる宝庫です。まずは『East‑West』『Super Session』『A Long Time Comin'』を軸に、周辺の参加作やライヴ録音へと広げてみてください。

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