G-SYNCとは何かを徹底解説:VRRの仕組み・種類・設定とFreeSyncとの違い
G-SYNC とは
G-SYNC(ジーシンク)は、NVIDIA が展開する可変リフレッシュレート(Variable Refresh Rate:VRR)技術の総称です。主にPCゲーム向けに開発され、GPU(グラフィックスカード)とディスプレイの描画タイミングを同期させることで、画面のティアリング(切れ目)やスタッタ(カクつき)を抑え、滑らかで応答性の高い表示を実現します。
なぜ必要か:リフレッシュレートとフレームレートのミスマッチ
一般的な固定リフレッシュレートのモニター(例:60Hz、144Hz)は、一定のタイミングで画面を更新します。一方でゲームのフレームレート(FPS)はGPUの処理負荷に応じて変動します。GPUがモニターの更新タイミングと一致しない場合、画面上に複数のフレームが混在して表示され、これが「ティアリング」と呼ばれる不自然な切れ目を生みます。
従来は垂直同期(V-Sync)を使ってフレームとリフレッシュを強制的に同期させることでティアリングを防いでいましたが、V-Sync は遅延(入力ラグ)を増やしたり、フレームレートがリフレッシュの倍数に達しないとスタッタが発生するなどの欠点があります。G-SYNC はこれらの問題を解決するための仕組みです。
技術的な仕組み(簡潔な原理)
- 可変リフレッシュ:モニターのリフレッシュタイミングを固定せず、GPUが次のフレームを準備したタイミングで画面を更新する仕組みです。これによりGPUの出力フレームレートとディスプレイの更新がほぼ1対1で対応します。
- 低遅延:フレームができたらすぐに表示するため、V-Sync のようにフレームを待たせることが少なく、入力遅延が抑えられます。
- LFC(Low Framerate Compensation):フレームレートがモニターの最小可変リフレッシュレートを下回る場合、同じフレームを複数回表示することで実質的にVRRの範囲を維持し、ちらつきやスタッタを軽減します。
G-SYNC の種類
- G-SYNC(ハードウェアモジュール搭載):初期のG-SYNCはモニター内部にNVIDIA製の専用モジュールを搭載していました。このモジュールはVRR制御に加え、可変オーバードライブやその他の画像調整、モジュール独自の品質保証などを行います。画質や動作範囲の一貫性が高いのが特徴ですが、モジュール搭載によりコストが上がることがありました。
- G-SYNC Compatible:VESA の Adaptive-Sync(DisplayPort の可変リフレッシュ規格、一般消費者向けにはAMDの FreeSync としても普及)を利用するモニターを NVIDIA が動作確認・認証したものを指します。専用モジュールは不要で、比較的低価格なモニターでもG-SYNC 相当のVRRを利用できます。ただし、認証を受けていないFreeSyncモニターでもドライバ設定で動作する場合がありますが、品質は機種に依存します。
- G-SYNC HDR / G-SYNC Ultimate:高輝度・広色域・ローカルディミングなどのHDR機能を組み合わせた上位仕様。NVIDIAがHDRの性能(ピーク輝度、ローカルディミングの性能、色域など)を満たすモニターに対して認定を行っています。
利点と注意点
- 利点
- ティアリングの解消:可変リフレッシュにより画面の切れ目が発生しにくくなる。
- スタッタやカクつきの軽減:フレーム表示タイミングの不一致が減るため滑らか。
- 入力遅延の抑制:V-Sync オン時の待機を減らし、操作感が良くなる。
- 注意点
- 互換性:G-SYNC は NVIDIA のエコシステム(GeForce GPU とドライバ)に依存します。AMD GPU では動作しません。
- モニターごとの差:G-SYNC モジュール搭載機と G-SYNC Compatible 機では品質や可変リフレッシュ範囲、オーバードライブの最適化が異なる。
- 接続方式:伝統的にDisplayPortが主流ですが、機種やドライバ更新によりHDMIでもVRRが使えるケースがあります(モニターとGPUの両方が対応している必要があります)。
実際の利用と設定のポイント
- ドライバとOS:最新のNVIDIAドライバを導入し、NVIDIA コントロールパネルで G-SYNC を有効化します。ウィンドウモードでも動作するオプションがドライバで提供されている場合があります。
- リフレッシュ範囲の確認:モニターごとに「可変リフレッシュの最小〜最大Hz」が定義されています。快適さはこの範囲内で最も高くなります。低フレーム時はLFCの有無も確認してください。
- HDR と併用する際の注意:HDR を有効にした場合、色空間や輝度の扱いが変わり、OSやドライバ、ゲーム側の実装によっては期待した動作にならないことがあります。G-SYNC Ultimate 認定の機種はHDR 表示の面でも一定の品質が保証されています。
- ケーブルとポート:高リフレッシュやHDRを活かすには帯域幅の高いケーブル(DisplayPort 1.4、HDMI 2.0/2.1 等)を使用してください。
G-SYNC と FreeSync(Adaptive-Sync)の違い
技術的なコアは同様に「可変リフレッシュ」であり、VESA の Adaptive-Sync はオープン規格、FreeSync はAMDの実装、G-SYNC はNVIDIA のエコシステムおよび認定プロセスという違いがあります。近年は互換性が進み、NVIDIA が Adaptive-Sync(FreeSync)対応モニターの一部を「G-SYNC Compatible」として認定するなど、選択肢は広がっています。ただし、各モニターの品質やドライバ実装により実体験は異なるため、レビューや認定情報を確認することが重要です。
まとめ(導入を検討する際のチェックリスト)
- 使用するGPUがNVIDIAであるか?(G-SYNC は基本的に NVIDIA 専用)
- モニターが G-SYNC(モジュール搭載)か、G-SYNC Compatible(認定)か、あるいは単なる Adaptive-Sync/FreeSync かを確認する。
- モニターの可変リフレッシュレンジ(最小〜最大Hz)、LFCの有無、HDR対応の詳細をチェックする。
- 接続ポートとケーブル(DisplayPort/HDMI)の帯域が必要要件を満たしているか確認する。
- 最新ドライバを入れ、必要に応じてゲームやOS側の設定も確認する。
参考文献
- NVIDIA:G-SYNC 公式ページ
- NVIDIA:G-SYNC Compatible に関する記事
- Wikipedia:G-Sync
- VESA:Understanding Adaptive-Sync(Adaptive-Sync の解説)
- RTINGS:G-SYNC vs FreeSync(比較記事)
- HDMI.org:HDMI 2.1(VRR を含む仕様情報)


