The Allman Brothers Band入門ガイド|結成から名盤・ライブまで徹底解説
プロフィール — The Allman Brothers Bandとは
The Allman Brothers Band(オールマン・ブラザーズ・バンド)は、アメリカ南部出身のロック/ブルースバンドで、ツイン・リードギターとハモンドオルガン、二人編成のドラムによる厚みあるサウンドと、長尺の即興演奏を特徴とします。1969年に結成され、1970年代初頭にライブバンドとして頂点を迎え、以降も幾度かの解散と再結成を経ながら2014年の活動休止(同年に実質的なラスト公演)まで長く影響力を保ちました。
結成と主要な流れ
- 結成:1969年。南部ブルースやジャズ、カントリー、ロックを融合した独自の音世界を志向してスタート。
- 初期の成功:1969年のセルフタイトル・デビュー後、ライブの評判が高まり、1971年のライヴ盤『At Fillmore East』で評価が確立。
- 喪失と継続:中心人物のデュアン・オールマンは1971年に交通事故で急逝、ベーシストのベリー・オークリーも類似した事故で1972年に亡くなるなど悲劇が続くが、バンドは残されたメンバーと新戦力で活動を継続。
- 商業的な頂点:スタジオ作『Brothers and Sisters』(代表曲「Ramblin' Man」収録)などで大衆的成功を収める。
- 再編成と復活:1980年代後半から1989年の再結成を経て、ワーレン・ヘインズやデレク・トラックスら新メンバーを迎え、1990年代以降も精力的にツアーを行った。
- 活動終了:定期公演の場であったニューヨークのビーコン・シアターなどでの恒例公演を続け、2014年に実質的な最終公演を実施。
代表曲・名盤(入門ガイド)
- 代表曲
- Whipping Post(特に「At Fillmore East」収録のライヴヴァージョン)
- In Memory of Elizabeth Reed(インスト曲、ライブでの長尺演奏が名高い)
- Midnight Rider(Gregg Allmanの歌唱が光る曲)
- Melissa(バラードとしての魅力)
- Ramblin' Man(Dickey Betts作のカントリー寄りのヒット)
- Statesboro Blues / One Way Out(ライヴ定番のブルース・ナンバー)
- 重要アルバム
- The Allman Brothers Band(1969年、デビュー作)
- At Fillmore East(1971年、ライヴ。オールマンの代名詞的作品)
- Eat a Peach(1972年、スタジオ曲とライヴ音源の混合。デュアン追悼の要素も)
- Brothers and Sisters(1973年、商業的成功を得た作品。「Ramblin' Man」等収録)
- Seven Turns(1990年、1989年再結成後の意欲作。復活の象徴)
音楽的特徴と演奏の魅力(深掘り)
The Allman Brothers Bandの魅力は「曲の良さ」だけでなく、その演奏方法とバンドの有機的な相互作用にあります。以下のポイントが特に重要です。
- ツイン・リードギターによるハーモニーとコール&レスポンス
Dickey BettsとDuane Allmanによる二本のリードギターが、コード進行の上でメロディを重ねたり互いに掛け合うことで、厚みと緊張感を生み出します。ソロでは互いにフレーズを受け渡し、長尺の即興に発展することが多い。
- スライド・ギターの表情
デュアン・オールマンのスライド・ギターは情感豊かで、「人間の声」のように歌う表現力があり、バンドのサウンドの大きな個性となりました。
- 二人編成のドラムとリズムの多層化
Butch TrucksとJaimoeのドラム二人編成がリズムに厚みとポリリズム的な深みを与え、グルーヴを長時間維持することを可能にしました。
- ハモンドオルガンとソウルフルなボーカル
Gregg Allmanのハモンド/声はジャズやゴスペルの影響を帯び、ブルースの切なさとソウルの温度を同時に表現します。これがバンドの「南部性」を象徴する要素です。
- ジャズ的即興とロックのエネルギーの融合
長尺のインプロヴィゼーションでテーマを繰り返しつつ展開させる手法は、ジャズの影響を強く感じさせる一方、ロックのストレートなエネルギーで観客を引き込む点がユニークです。
ライブの重要性 — At Fillmore Eastに見る彼らの真髄
The Allman Brothers Bandはスタジオ録音よりもライヴでの評価が特に高いバンドです。中でも『At Fillmore East』はバンドの即興力、ダイナミクスの幅、録音エンジニアリングの巧みさが一体となった名盤で、20分近くに及ぶ「Whipping Post」などは、彼らがなぜ“ジャム/ライヴ・バンド”として語られるのかを端的に示します。
ライヴでは曲の枠組みを素材に、テンポや強弱、ソロの長さを自在に変えて観客と共鳴する点が大きな魅力です。音楽が「即興的に生きる」瞬間を何度も体験させてくれます。
主要メンバーとその役割
- Duane Allman(ギター/スライド) — 初期のサウンドを決定づけた天才的ギタリスト。セッションワークでも高く評価された。
- Gregg Allman(ボーカル/オルガン) — バンドの顔とも言えるソウルフルな歌声とハモンドの音色。
- Dickey Betts(ギター) — カントリーテイストとメロディアスな作曲でバンドの方向性に多大な影響を与えた。
- Butch Trucks / Jaimoe(ドラム) — 二人編成でリズムの立体感を作る主要プレイヤー。
- Berry Oakley(ベース) — 初期のグルーヴ形成に貢献。若くして事故で他界。
- 後期メンバー(Warren Haynes、Derek Trucks、Oteil Burbridge、Marc Quiñonesなど) — 再編成後に新たなエネルギーを注入し、90年代以降のツアー/録音に重要な役割を果たした。
影響とレガシー
The Allman Brothers Bandは南部ロック(Southern Rock)の旗手とされますが、影響範囲はそれより広く、ジャムバンド文化、ブルース・ロック、カントリー・ロック、さらには後のインディーズ/ルーツ・リヴァイヴァルムーヴメントまで多岐に及びます。ライブでの長尺インプロヴィゼーションはGrateful Dead以降のジャム・シーンに大きな影響を与え、ワーレン・ヘインズやデレク・トラックスの後進世代は彼らの伝統を受け継いでいます。
なぜ今なお聴かれ続けるのか(現代的な価値)
- 「ライブでの身体性」を重視する音楽体験の希少性:録音以上にライヴでこそ本領を発揮する音楽性は、ストリーミング時代でも熱心なリスナーの興味を惹きつける。
- ジャンルの横断性:ブルース、ジャズ、カントリー、ロックの要素を融合しているため、異なる音楽嗜好のリスナーが入りやすい。
- 楽曲の普遍性:バラードからスリリングなブルースまで楽曲の幅が広く、時代を超えて共感を得るメロディや歌詞がある。
- 歴史性と物語性:若くして失われた才能や、仲間との緊密な演奏関係といったドラマが、楽曲に深みを与えている。
聴きどころガイド(初めて/深掘りリスナー向け)
- 初めて聴くなら:『At Fillmore East』で彼らのライヴ力と即興性を体験する。
- ソングライティング重視なら:『Brothers and Sisters』や『Eat a Peach』でスタジオ作品とポップな側面を確認する。
- ギター好きなら:Duaneのスライド、Dickeyのメロディアスなソロ、そして後期のWarren/Derekによるツインリードの対比を聴き比べる。
- ライヴの異なる表情を知りたいなら:同曲のスタジオ版とライヴ版を比較して、アレンジや即興の変化を楽しむ。
まとめ
The Allman Brothers Bandは、個々の卓越したミュージシャンシップと集団としての即興能力が結びついた稀有なバンドです。楽曲の深さ、ライヴでの高揚感、そしてアメリカ南部に根ざした感情表現──これらが重なり合い、何世代にも渡って愛され続ける理由となっています。ロックやブルースのルーツを理解したい人、ライヴ音楽の「生の力」を求める人にとって、彼らの音楽は今も強い説得力を持っています。
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参考文献
- The Allman Brothers Band - Wikipedia
- AllMusic — The Allman Brothers Band Biography
- Britannica — The Allman Brothers Band
- Rolling Stone — Allman Brothers Band Overview


