The Memphis Hornsの歴史と特徴|スタックス・サウンドを彩る二重奏ホーンの技術と影響
イントロダクション — The Memphis Hornsとは
The Memphis Horns(メンフィス・ホーンズ)は、1960年代以降のソウル/R&Bサウンドを象徴するホーン・セクションです。中心メンバーのトランペット奏者ウェイン・ジャクソン(Wayne Jackson)とテナー・サックス奏者アンドリュー・ラヴ(Andrew Love)を核に、スタックス(Stax)を中心としたレコーディング現場で多数の名曲を彩り、後にフリーランスでポップ/ロック/ソウルの有名アーティストとも数多く共演しました。
経歴と役割の概略
- 起源はメンフィスのスタックス・レコード周辺のセッション活動。レーベルのハウス・ホーンとして数多くのシングル/アルバムに参加し、スタックス・サウンドの重要要素となった。
- 1960年代後半以降は「The Memphis Horns」として独立して活動。レコーディング/ツアー両面で多ジャンルのアーティストをサポートした。
- 中心メンバーのアンドリュー・ラヴは2012年に、ウェイン・ジャクソンは2016年に他界したが、彼らの録音は今なお世界中で聴かれている。
- その功績は後年に各種殿堂や音楽関係の評価で顕彰され、現代のホーン・アレンジにも大きな影響を与えている。
メンバー(代表)
- Wayne Jackson(トランペット) — 鮮やかでパンチのあるトランペットを基軸に、メロディックかつリズムに密着したフレーズを提供。
- Andrew Love(テナー・サックス) — 中低域に厚みを与えるウォームなサックスが、トランペットとの対話で特徴的な二重奏(duo sound)を生んだ。
- その他セッション・プレイヤーやアレンジャーが参加することも多く、編成は曲ごとに柔軟に変化した。
サウンドの特徴と魅力(深堀)
The Memphis Horns の魅力は「シンプルさの美学」と「グルーヴへの確信」にあります。具体的には次の点で特徴づけられます。
- トランペット+テナー・サックスの二重奏:二本のホーンがメロディ的なリードとリズム的なスタブ(短い切り返し)を分担し、曲のフックを作る。余計な飾りをそぎ落としつつ表情豊かに歌わせるのが得意。
- リズムへの密着性:ドラム/ベースと密接にシンクロすることでホーンがリズム・グルーヴの一部となり、曲全体の推進力を生む。単なる「装飾」ではなく、楽曲のコアを支える役割を担う。
- 短いフレーズの連続と空間の使い方:長いソロを多用しない代わりに、短いフレーズを的確なタイミングで挿入して盛り上げる。その“間(ま)”の取り方がドラマを作る。
- トーンとダイナミクスのコントロール:トランペットは明るく切れ味のある音色、サックスは柔らかく太い音色でコントラストを生み出す。強弱の付け方も巧みで、サビでは一気に音量と厚みを増すなどメリハリが鮮やか。
- 汎用性の高さ:ソウル/R&Bはもちろん、ロックやポップス、ブルース、カントリーのアレンジにも溶け込み、ジャンルを越えた「どこにでも効く」ホーン・サウンドを提供した。
アレンジのテクニック(実践的視点)
- リフ主体のアプローチ:曲のフックに合わせた短いリフを繰り返すことで耳に残る構造を作る。
- コール&レスポンス:ボーカルとホーンの応答関係を積極的に使い、歌詞の表情を補強する。
- 和声の使い分け:単純な三和音のブロック和声からテンションを含む四和音まで、曲のムードに応じてホーンの和音を選択。
- スタッカートとレガートの対比:短く切るパーツと滑らかに歌わせるパーツを組み合わせ、アレンジに立体感を与える。
- スペースの残し方:ホーンを常に鳴らし続けず“効かせる瞬間”を作ることで他楽器とのバッティングを避け、密度の高いミックスを実現。
代表的な参加作・名盤(聴きどころ)
以下はThe Memphis Hornsが重要な役割を果たした、あるいは彼らのサウンドを体感しやすい代表的な楽曲/アルバムの例です(参加クレジットは作品ごとに確認してください)。
- スタックス期のシングル群(Sam & Dave、Otis Redding、Carla Thomasなどのヒット曲群) — スタックス・サウンドのホーン・アレンジを知るのに最適。
- Sam & Dave 関連楽曲(ヒット曲の多数) — ホーンのフックが楽曲のアイデンティティになっている例が多い。
- 60〜70年代のポップ/ロック作品への参加例 — メンフィス・ホーンズはスタジオ外でも幅広いアーティストをサポートし、ジャンル横断的な名演が残っている。
- 彼ら名義/双頭プロジェクトの音源 — ホーン主体のインストやアレンジを前面に出したレコーディングも存在し、そのプレイを直に楽しめる。
(注)上記の各曲・アルバムについての参加クレジットは、リマスター盤や再発時にクレジットが整理されていることがあるため、詳しくはライナーノーツや信頼できるディスコグラフィを参照してください。
音楽史的な位置付けと影響
The Memphis Hornsは「ソウル・ホーンの標準形」を作り上げ、多くの後続のホーン・アレンジャーやセクションに模倣されてきました。特徴的な“短い、かつ的確なフレーズで曲のアクセントを作る”アプローチは、70年代以降のポップやロックに自然に取り込まれ、今日のホーン・アレンジの基礎となっています。
聴き分けのコツ(リスニング・ガイド)
- トランペットの音色が明瞭で切れ味があり、テナー・サックスが厚みを出しているかを確認する。
- ホーンがリズム・セクションとシンクロしているか(スネアやベースとの一体感)を意識する。
- フレーズが短く反復され、ボーカルと“会話”をしている箇所を探すと、彼らの仕事が見えてくる。
- 過剰な装飾や長尺のソロが少なく、楽曲の骨格に沿った「効かせ方」をしているのが特徴。
現代への継承と利用法
現在の録音でも「メンフィス・ホーンズ的」なホーンは重宝され、オルタナティヴ、ネオソウル、ヴィンテージ志向のポップスでしばしば再現されます。プロデューサーやアレンジャーは、彼らの「間の取り方」「リズムとの同期」「メロディへの寄り添い方」を学ぶことで、楽曲に即効性のあるホーン・パートを付加できます。
まとめ — The Memphis Hornsの普遍性
The Memphis Hornsの魅力はテクニックの見せびらかしではなく、「楽曲への奉仕」に徹した演奏スタイルにあります。簡潔で耳に残るフレーズ、リズムとの強い結びつき、そしてトランペットとテナー・サックスのバランス。これらはどんな時代のリスナーにも響く普遍性を持ち、彼らが今も多くの作品で尊敬され続ける理由です。
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