Cartola|ブラジル・サンバの詩人と作曲家が紡ぐ名曲と生涯

プロフィール

Cartola(カルチョーラ、本名:Angenor de Oliveira、1908年10月11日 - 1980年11月30日)は、ブラジルを代表するサンバの作曲家・歌手・演奏家です。リオデジャネイロの貧困地区で生まれ、マンゲイラ(Estação Primeira de Mangueira)などのサンバ・コミュニティと深く結びつきながら活動しました。黒いシルクハット(イタリア語で“帽子”の意がある“cartola”)を愛用したことから“Cartola”という芸名で親しまれました。

若い頃から作曲やサンバに関わりを持ちながらも、長く広い世間的な評価を得るまでには時間がかかりました。晩年に入ってから有名アーティストによるカバーや再評価が進み、1970年代以降にソロ・アルバムを発表して国内外で高く評価されるようになりました。彼の作品は今なおブラジル音楽の基盤を成すレパートリーとされています。

音楽的魅力を深掘り

作曲・歌詞の世界観

  • 繊細で詩的な言葉遣い:愛や後悔、喪失、郷愁(saudade)といった普遍的な感情を、自然イメージ(薔薇や夜、朝焼けなど)や日常の細部を通して描きます。直接的でありながら深く心に残る比喩が多いのが特徴です。
  • 叙情性と哲学性の融合:単なる恋愛歌にとどまらず、人生観や宿命めいた諦観が漂う歌詞が多く、聴き手を内省へ誘います。

メロディとハーモニーの美しさ

  • 一見シンプルなメロディに見えて、和声進行は巧妙で独特。マイナー調や半音移動、予期せぬコード・チェンジを用いて、感情の揺れや深みを表現します。
  • 歌のフレージングは自然体で無理がなく、語りかけるような説得力があります。声の温度感と間(ま)の取り方が、歌詞の情感を際立たせます。

リズムとアレンジの巧みさ

  • 基本はサンバの伝統に根ざしつつも、静かなテンポやジャズ的なコード感、室内楽的な繊細なアレンジを取り入れることで、都会的で抒情的なサンバを作り上げました。
  • ギター(特にヴィオロン=ブラジルの弾き語り)や小編成の伴奏で、歌にフォーカスを当てるアレンジが多く、余白を生かした表現が印象的です。

代表曲・名盤の紹介

代表曲や名曲は数多く、どれも「ブラジル・サンバの古典」として語り継がれています。以下は入門・必聴の例です。

  • 「As Rosas Não Falam」— Cartola を代表する一曲。愛と別離を薔薇のイメージで綴る名作です。
  • 「O Mundo é um Moinho」— 人生の苛酷さと若さへの警告を静かに歌い上げる、深い余韻が残る作品。
  • 「Acontece」や「Tive Sim」など— 悲しさと温かさが混ざった歌群。カルチョーラ独自の言語感覚が味わえます。
  • 1970年代に発表されたセルフタイトルのアルバム群(しばしば「Cartola」として知られる作品群)— 晩年の録音で、歌声・解釈・アレンジが研ぎ澄まされた名盤として評価されています。

コラボレーションと人間関係

Cartola はマンゲイラをはじめとするサンバ・コミュニティのなかで多くの音楽家と交流しました。晩年に彼の作品を掘り起こし、広めたのは同時代・後続の多くの歌手たちです。ベタ・カルデイラ(Beth Carvalho)やマリア・ベタニア、カエターノ・ヴェローゾなど、MPB(ブラジル音楽の流れ)の歌手たちも彼の曲を取り上げています。こうしたカバーがCartolaの評価を確固たるものにしました。

後世への影響と評価

  • ブラジル音楽の「詩人」としての地位:単に優れたメロディーメーカーというだけでなく、歌詞の詩性・文学性で高く評価されています。
  • カバーや再録により世代を超えた普遍性を獲得:多彩なアーティストが彼の曲を取り上げ、スタンダード化しました。
  • サンバ文化そのものの象徴:マンゲイラやリオのサンバの精神を表す人物として、文化的なシンボルになっています。

聴くときのポイント(楽しみ方ガイド)

  • 歌詞を追う:まずは原語(ポルトガル語)で歌詞を聞き、翻訳で意味を確認すると深みが増します。言葉のリズムや言い回しが曲の色を作っています。
  • 声と間に注目:大げさなテクニックよりも、抑えた声の表現や間(間合い)の使い方で感情が伝わります。静かなパートにも耳を澄ませてください。
  • アレンジの違いを楽しむ:同じ曲の別ヴァージョン(弾き語り、オーケストレーション、他アーティストのカバー)を比べると、曲の多面性が見えてきます。
  • 歴史的文脈を意識する:リオのサンバ文化、マンゲイラという地域共同体の歴史を知ると、歌詞の背景や登場人物の立場が理解しやすくなります。

Cartola の魅力をまとめると

Cartola の音楽は「簡潔でありながら奥行きのある表現」「言葉とメロディの絶妙な調和」「静謐さのなかに宿る激しい感情」という特徴を持ち、聴く人の心の深いところに触れます。彼が描く情景や感情は個人的かつ普遍的で、聴くたびに新たな発見を与えてくれるアーティストです。

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参考文献