クラウス・オガーマンとは何者か?ジャズとボサノヴァを横断するモダン編曲家の全貌

プロフィール:クラウス・オガーマンとは

クラウス・オガーマン(Claus Ogerman、1930–2016)は、ドイツ出身の作曲家・編曲家・指揮者で、ジャズ、ポップス、ブラジル音楽、クラシックを自在に横断した「モダンなオーケストレーター」として国際的に高い評価を得ました。卓越した和声感覚と色彩豊かなオーケストレーションで、多くのジャズ奏者やポップ歌手の作品に深みを与え、映画音楽やオーケストラ作品も残しています。

キャリアの概略

  • 1950〜60年代以降、米国を中心にスタジオワークやレコーディングで活動。プロデューサーやミュージシャンと密に連携し、多ジャンルの録音に参加しました。
  • ボサノヴァ/ブラジル音楽の黄金期には Antônio Carlos Jobim をはじめとするアーティストと重要な協業を行い、柔らかな弦楽表現でブラジル音楽の都市的な風合いを強調しました。
  • ビル・エヴァンス(Bill Evans)らジャズ界の名手との共演で、ジャズとオーケストラの接点(いわゆるサード・ストリーム的アプローチ)を具現化しました。
  • 晩年まで編曲・指揮の第一線で活躍し、後進の編曲家や映画音楽家にも大きな影響を与えました。

音楽的な魅力・特徴(深掘り)

  • 和声の繊細さとモダンなボイシング

    オガーマンのハーモニーは、ジャズのテンションコードやモーダルな考え方を基盤にしつつも、クラシック的な対位法や分散和声音色で“豊かさ”を作ります。単に厚い和音を重ねるのではなく、楽器ごとの配置で色合いを細かく設計します。

  • 色彩(オーケストレーション)の妙

    弦楽器の持続音(パッド的な使い方)、ハープやフルート、ピッコロ、柔らかなミュート管楽器などを織り交ぜ、透明かつ深みのあるサウンドスケープを作ります。楽器の“間”を生かすことで演奏者の即興性を引き立てるのも特徴です。

  • リズムとテンポのセンス

    特にボサノヴァや軽いラテン曲でのリズム処理は「歌手やソロの呼吸」を最優先にしたもの。オーケストラが主張し過ぎず、グルーヴをやわらかく支える書法を巧みに用います。

  • サード・ストリーム的融合

    ジャズの即興性とクラシックの構築性を自然に融合させる手腕。大編成でありながらソロの表情を潰さない「伴奏力」が、彼のアレンジの大きな魅力です。

代表作・名盤(聴きどころと解説)

  • Antônio Carlos Jobim — "Wave"(1967)

    ボサノヴァ/ラテンの洗練されたアレンジとオーケストラルな色彩が際立つ作品。オガーマンの手法でブラジルのリズムに都会的で透明感のある光を当てています。

  • Frank Sinatra & Antônio Carlos Jobim — "Francis Albert Sinatra & Antônio Carlos Jobim"(1967)

    シナトラの歌を支えるオーケストレーションで、余韻や間の取り方、弦の使い方にオガーマンらしい美意識が表れます。歌と伴奏の「呼吸」を最優先にした職人技が光る一枚です。

  • Claus Ogerman — "Symbiosis"(1974)

    オガーマン自身の作曲・編曲による大規模なオーケストラ作品。ジャズ・ピアニストをフィーチャーした版やオーケストラ・バージョンなどがあり、彼のサード・ストリーム的志向をよく示します。

  • Bill Evans(関連作)

    ビル・エヴァンスとの共演作やオガーマンによるオーケストレーションは、ピアノの即興に寄り添いつつ豊かな色彩を与える例として注目に値します。作品ごとに異なるフォーカスで「即興と書法の共存」を提示しています。

聴きどころの具体的ポイント

  • イントロ直後の弦の和声進行をよく聴く:和声の進行そのものが情景を作っています。
  • ソロ楽器(ボーカルやピアノ、サックス)とオーケストラの“呼吸”を観察する:オガーマンは伴奏を立てる際にソロのフレーズを先読みして余白を作ることが多いです。
  • アーティキュレーションの違いに注目:同じ旋律でも木管のアタックと弦のサステインで印象が変わるのを楽しんでください。
  • エンディングの処理:余韻を残す終わり方(フェードとも異なる“間”)は、オガーマンらしさの象徴です。

影響と遺産

オガーマンの仕事は、現代の編曲家やプロデューサー(ジャズ、映画音楽、都市的なポップス系)に大きな影響を与えています。日本のシティポップやアレンジ文化にも間接的な影響を与えたと考えられ、映画音楽や現代ジャズにおける“オーケストラと即興の共存”という流れに貢献しました。

おすすめの聴き方(初めての人向け)

  • まずは代表的なジョビンやシナトラの録音で「編曲が歌にどう寄り添うか」を確認。
  • 次に「Symbiosis」などでオガーマン自身の作曲・オーケストレーションを体験し、彼の構築的な側面を味わう。
  • ヘッドフォンで弦や木管の細かな色彩を追うと、新たな発見が多いです。

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